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「悲しすぎる…」森友で自死職員の妻 麻生財務相「再調査せず」発言に

命を絶った近畿財務局職員 赤木俊夫さん(享年54歳)…妻提供

 冒頭の写真は、財務省近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木俊夫さん。4年前、2016年の文化の日に、上野の東京国立博物館で開かれていた篆刻家の小林斗アンの展覧会に夫婦で訪れた時の写真だ。屈託のない笑顔を見せている。

 篆刻や書道、音楽、建築と幅広い分野に精通すると同時に、職場では真面目で明るい公務員として務めてきた赤木さんの人生は、この翌年2月、森友事件で暗転。公文書の改ざんを上司に強要され、心を病んで18年3月7日、自ら命を絶った。享年54歳。55歳の誕生日の3週間前だった。

赤木俊夫さんの書斎は本棚に本や書の道具がびっしり(妻提供)
赤木俊夫さんの書斎は本棚に本や書の道具がびっしり(妻提供)

自死職員の“魂の叫び”にも財務相「再調査しない」

 この俊夫さんがのこした「手記」が、18日発売の週刊文春で初めて明らかになった。“遺書”であり“魂の叫び”であり不正を告発する文書である。これまで知られていなかった改ざんの経緯が生々しく綴られていた。

赤木俊夫さんが遺した手書きのメモ。赤線も本人が書いた(撮影・相澤冬樹)
赤木俊夫さんが遺した手書きのメモ。赤線も本人が書いた(撮影・相澤冬樹)

 その反響は大きく、マスコミ各社が大きく取り上げている。「手記」を掲載した週刊文春は近年にない売れ行きを見せ、完売に近い状態だ。

 翌19日の麻生財務大臣の閣議後記者会見でも、この件について質問が出た。すると麻生大臣、「新たな事実が判明したことはない。再調査を行うという考えはない」と突き放した。

「もう一度調査してほしいです」

 これを知った赤木俊夫さんの妻、昌子さん(仮名)。ポツリと「悲しすぎます…

 そして「麻生大臣は夫の上司やったのに、こんな扱いされるんですね。新事実がなくても、もう一度調査してほしいです。どうして調査してくれないんですか?」

 私は答えた。「調べたら自分たちに都合の悪いことがいろいろ出てくると思っているからじゃないですか?それ以外考えられないでしょう。『すべて、佐川理財局長の指示です』なんて、これまで出ていない新事実です。なのに『新事実がない』と言うのは、それこそ事実に反しています」

 すると…「(手記には)新事実あるじゃないですか。私はこんな説明、財務省の人から受けていません。なんで調査してくれないんですか?」

麻生さん、これ新事実ですよ。美並近畿財務局長が全責任を負うと言ったなんて(撮影・相澤冬樹)
麻生さん、これ新事実ですよ。美並近畿財務局長が全責任を負うと言ったなんて(撮影・相澤冬樹)

組織の風土は「麻生さんの責任」

 さらに麻生大臣は、赤木さんが死に追い込まれた原因について「役所内の風土と結論付けている」と述べた。

 これについて昌子さん、「組織の風土が原因なら麻生さんの責任だと思います」とズバリ指摘した。

 その上で、「今でも本当のことを話せない状態なんですね。風土はまったく良くなっていません。このままだと、また死人が出ると思います」と気をもんだ。

遺書の「ありがとう」は「り」が涙でにじんでいる(撮影・相澤冬樹)
遺書の「ありがとう」は「り」が涙でにじんでいる(撮影・相澤冬樹)

麻生大臣に来てほしい「再調査を直接お願いしたい」

 昌子さんは夫・俊夫さんの死後、麻生大臣に弔問に来てほしいと財務省の職員に伝えた。ところがその後、麻生大臣が「遺族が来てほしくないということだったので伺っていない」と国会で答弁しているのを見て唖然とした。「私、そんなこと言ってないのに…」

 今回の麻生大臣の「再調査しない」発言を知って昌子さんは改めて思ったという。

やっぱり麻生さんに来てほしいです。トシくんの前でお参りしてほしい。そしたら私、直接麻生さんにお願いします。『再調査をしてください。なぜトシくんが亡くなったのか、私にわかるように説明してください』って」

 昌子さんの決意は固い。

「自分で決めてやったことなので大丈夫です。夫のことを思うと負けていられませんから。乗りきりますよ」

麻生財務大臣と安倍首相は遺族の願いにどう応えるのか?

 さて、財務省の最高責任者であり指揮監督権者である麻生太郎財務大臣は、亡くなった赤木俊夫さんの妻、昌子さんのこの発言にどう応えるのだろう?遺族に「もう一度調査してください」と面と向かって言われても、「再調査しません」と答えるのだろうか?

 そして安倍晋三総理大臣は、どう応えるのだろう?「財務省のことは財務大臣に任せる」のだろうか?でも安倍首相は麻生大臣の任命権者であり、政府全体に責任を負うのだが。遺族が再調査を望み、大臣が「しない」と突き放したら、それを放置するのだろうか?

【執筆・相澤冬樹】

週刊文春の記事は以下のサイトで読めます。

文春オンライン:https://bunshun.jp/articles/-/36667

夫のことを思うと負けていられない(赤木俊夫さんの妻提供)
夫のことを思うと負けていられない(赤木俊夫さんの妻提供)

宮崎生まれ。NHKで記者修業30年余(山口・神戸・東京・徳島・大阪)。森友事件取材中に記者を外され退職。経緯は文春文庫『メディアの闇「安倍官邸vs.NHK」森友取材全真相』。還暦間近なるも修業継続中。「取材は恋愛に似ている」を信条に、Yahoo!ニュースや週刊文春、週刊ポスト、日刊SPA!、日刊ゲンダイなど様々な媒体で執筆。ニュースレター「相澤冬樹のリアル徒然草」配信中→http://fuyu3710.theletter.jp/about

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