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小学生が描いた牛乳のポスターが世界の「食料危機支援」に貢献する

佐藤達夫食生活ジャーナリスト
賞状授与後、児童代表と握手をするボリコ所長(写真提供/Jミルク)

■ポスターを描いてFAOに寄付をする

牛乳を通して「日本人の食生活の向上や酪農産業の発展」に寄与することを目的として活動しているJミルクという組織が「牛乳ヒーロー&ヒロインコンクール」を開催している。小学生を対象にして行なっているコンクールで、牛乳を題材にしたヒーローとヒロインをイメージし、それをポスターにして表現する。7年目となる2019年は、日本全国の小学校から28,736点の応募があった。

コンクールなので、最優秀賞・優秀賞などが個人に授与される。こちらはサイトを見ていただくとして、ここではユニークな取り組みである「団体賞」についてご報告する。

Jミルクでは、このコンクールに応募すると(ポスターの中身とは関係なく)応募ポスター1枚につき50円を国連食糧農業機関(FAO)に寄付をするという活動を行なっている。2019年度は合計1,436,800円がFAOに寄付された。応募数が最も多い(つまり寄付金に最も貢献した)小学校に対しては「FAO団体特別賞」が与えられる。

2019年の団体特別賞は481点を応募した八王子市立みなみ野君田小学校に与えられた。2020年1月14日、FAO駐日連絡事務所のンブリ・チャールズ・ボリコ所長が、同小学校を訪れ、感謝の意を伝えて賞状を授与した。

■世界の9人に1人が食べ物がなくて苦しんでいる

ボリコ所長は冒頭に受賞の祝辞を述べたあと、子供たちに次のようなメッセージを送った。

--現在、世界では8億2千万人以上の人たちが食べ物がなくて苦しんでいます。9人に1人の割合です。皆さんも経験があると思いますが、お腹がへってるとき、ちゃんと勉強ができますか? 「食べ物が充分に食べられない」ということは、勉強もしっかりとはできなくて、自分たちの地域や国の発展に力を出せないということにもなるのです。

食品ロス・廃棄の問題も大事です。「食べられない人」が8億人以上もいるのに、日本では「一日1人当たりお茶碗1杯分」の食べ物を無駄にしています。世界中では、生産された食べ物の1/3が、このように無駄にされているのです。食べ物を捨てるということは、作るために使った水や土地、農家の人たちの仕事も捨てるということなのです。そして、捨てられた食べ物の1/4もあれば、世界中の「食べられない人たち」が充分に食べられるようになるのです。

もう1つ大事なことがあります。それは、捨てられた食料が、いま世界中で大きな問題になっている「地球の温暖化につながる温室効果ガス」を排出してしまうことです。日本はこの温室効果ガスを、中国・アメリカに次いで多く出しています。ですから、チョットだけ捨てるんだという軽い気持ちで捨てないでください。その「チョット」がみなさんの住んでるこの八王子をそして日本を壊すことにつながるのです。

私たちは2030年に達成させようとする持続可能な開発目標を決めています。それを達成するためには、みなさん1人ひとりの考え方や行動そして協力がなければできません。

Jミルクさんのヒーロー&ヒロインコンクールはそのような1つの協力の例だと思います。このコンクールに、みなさんがこんなにたくさんの応募をしてくださったことはみなさんの理解の証だと感じています。

このように、ミルクについて大切に考えていただくことが、食べ物すべてについて考えていくことのきっかけになると思います。まず考えてください。考えたら次には自分には何ができるのか、家族やお友だちと話し合ったり行動に移したりしてみてください。みなさんご自身が生きていく町・国・世界をよくしていくためにいっしょに考え、行動していきましょう。--

■子供たちの自主的な社会貢献

同小学校栄養士の柴山理彩さんは「子供たちは夏には牛乳をたくさん飲むのですが、冬になるとやや残しがちです。でも、このようなことがあると、それをきっかけに牛乳のよさを理解する子供たちも増えるので、残さずに飲んでくれるようになると思います」と、ポスターコンクールに参加する意義を話す。

同小学校の伊藤祐子校長は「私はつねづね、子供たちに『自ら考えて行動する』ことの大切さを伝えています。きょうのボリコさんのお話は5、6年生にとって、食品ロスや世界の飢餓について考えるよいきっかけになりました。これからは、世界の食料問題に貢献するという目的をもって、取り組んでいきたいと思います」と評価。

じつは、最近の子供たちは忙しい。このようなコンクールも多くの組織が主催しているので、先生たちはどれに応募するのかの選択を迫られる。そんな中で、この「ヒーロー&ヒロインコンクール」は応募点数が年々増えているようだ。その1つ要因として、子供たちが「世界の食料問題の解決に貢献する」ということがあると、先生たちから聞いた。頼もしい限りである。

食生活ジャーナリスト

1947年千葉市生まれ、1971年北海道大学卒業。1980年から女子栄養大学出版部へ勤務。月刊『栄養と料理』の編集に携わり、1995年より同誌編集長を務める。1999年に独立し、食生活ジャーナリストとして、さまざまなメディアを通じて、あるいは各地の講演で「健康のためにはどのような食生活を送ればいいか」という情報を発信している。食生活ジャーナリストの会元代表幹事、日本ペンクラブ会員、元女子栄養大学非常勤講師(食文化情報論)。著書・共著書に『食べモノの道理』、『栄養と健康のウソホント』、『これが糖血病だ!』、『野菜の学校』など多数。

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