3度目の猛暑がやってくる 「鬼の霍乱(かくらん)」は夜に起こる
今年は猛暑と豪雨が繰り返しやってくる
今年の夏の特徴は、太平洋高気圧の強まりに顕著なリズム(周期性)があることです。
まず、最初に強まったのは6月25日頃で、その勢いをかりて6月27日は関東甲信でも記録的に早い梅雨明け(暫定値)となりました。その後、東京では35度以上の猛暑日が9日間連続し、関東内陸部などでは40度以上の高温も観測しました。
ところがその後、7月4日頃から最高気温は30度を下回る日も多くなり、梅雨が戻ったような天気になりました。特に7月12日から16日にかけては東京でも約180ミリの大雨を観測。この雨をみて、「実はまだ梅雨が明けていないのでは」と考える予報士もいました。
そしてその後、再び高気圧が強まるのですが、8月3日頃からは高気圧が急にしぼみ始め、北陸から東北地方に向かって、日本海から大量の湿った風が流れ込みました。この湿った風が線状降水帯となり、山形県や新潟県の一部には特別警報も発表されたのです。
湿った風の元をたどると、朝鮮半島にあった熱帯低気圧(元台風6号)の影響があったのですが、いずれにしろ、日本付近の高気圧の強弱にリズム性があったのが、一連の猛暑・大雨の遠因と言っていいでしょう。
その高気圧のリズムが実は8月10日頃から、三度(みたび)強まる方向に動いています。つまり、また猛暑がやって来るということです。
猛暑日記録更新と再び40度超か?
これまでの暑さで東京の年間猛暑日日数は、現時点で13日となっています。これは1875年から続いている観測のなかで、最多(タイ)記録です。(1995年、2010年に並ぶ)
週間予報をみても、この記録が更新されることはほぼ間違いないでしょう。また、内陸部を中心に最高気温が40度近くまで上がることも予想されており、全国で今年9回目の40度を観測する地点が出てくるかもしれません。
そうなると、再び心配なのが熱中症です。
鬼の霍乱(かくらん)と熱中症
昔の人は理由の分からない現象を妖怪や鬼のせいと考えていました。
熱中症もまた、暑さにあたったという認識はあったのでしょうが、鬼の仕業と考え、江戸時代には「鬼の霍乱」という言葉もありました。もっとも辞書などによると、吐き気や下痢なども含まれていたと言いますから、夏になると元気な人でも病気になりやすい、というような意味合いで使われていたようです。
最近でも、SNSなどでは猛烈な暑さを「鬼アツ」というような言い方をしますから、昔も今も、人々の感覚に大きな差はないのでしょう。
暑くなくても、エアコンを
熱中症で運ばれる人の半分以上が65歳以上の高齢者で、しかも亡くなった人の8割以上が65歳以上です。さらに、倒れた場所は寝室が一番多く、夜間でも熱中症になることが知られています。(東京都監察医務院調べ)
年配の方は特に暑さの感覚が薄れ、エアコンがあっても使わない方が多いようです。実際に「気温30度はちょうどいいし、暑くない」と話す方もいます。そうして気づかないうちに熱中症になってしまうのです。
それを防ぐために、例えば最高気温が30度予想になったら暑くなくてもエアコンをつける、水分を1時間おきに取るなど、感覚に頼らずに行動を起こすことも大切です。
今回の豪雨では近所で声をかけあい、多くの方の命が助かったと報道されています。暑さもすでに災害の一部です。身近な人へはもちろんのこと、遠く離れた祖父母や親戚にも電話をするなど、大雨のときと同様、お互いに声をかけあっていただきたいと思います。
また、北日本では来週にかけて再び大雨になるかもしれません。猛暑とともにこちらも大雨に警戒が必要です。
参考
環境省リーフレット heatillness_manual_1-3.pdf (env.go.jp)
熱中症の語源と定義 第1巻2017_A4.indd (core.ac.uk)
熱中症予防対策の歴史 著中井誠一