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「ドライブイン鳥」社長に私のドラ鳥偏愛をぶつけてみた。実はちゃんぽんも旨いなど、私的鳥ビアと共に紹介

上村敏行ラーメンライター
「ドライブイン鳥」は鳥の焼肉、鳥めしだけではない。ちゃんぽんも旨いのだ

筆者は「ドラ鳥(とり)」の熱烈なファンである。「ドラ鳥」とは「ドライブイン鳥」の略称。同店は佐賀県伊万里市にて“酉年”の1969(昭和44)年に創業し、2大看板の「やき鳥」(卓上の網で焼く鶏焼肉)、鶏スープで炊き込む「鳥めし」は、半世紀以上の時を経て伊万里市民のソウルフードへと昇華された。

いにしえ感ビシバシの「鳥」の佇まい。写真は伊万里本店
いにしえ感ビシバシの「鳥」の佇まい。写真は伊万里本店

日常的な安うま食堂であり、帰省した仲間、家族が集まる際の団らんの場。伊万里市民は、ただ一文字「鳥」だけでもこの店を真っ先に連想する。それほど、記憶に刻まれまくっている存在なのである。昨今はアニメ「ゾンビランドサガ」の聖地巡礼の代表格として話題を集め、伊万里市出身である「Cygames」の代表取締役社長・渡邉耕一氏にとっても特別な店であったことから2023年、Cygames佐賀ビル1階に「ドライブイン鳥 佐賀店」もオープン。イニシエ店にいい塩梅で溶け込むような新たな魅力が加わり、全国的にも知名度が増している。

鳥の焼肉と鳥めしのテッパンコンビ。あー、お腹空いてきた・・
鳥の焼肉と鳥めしのテッパンコンビ。あー、お腹空いてきた・・

筆者自身は生活圏内にある支店「糸島店」をヘビロテ。特に糸島での海・山遊びの後は、甘く濃厚なタレにつける鳥焼肉を疲れた体が無性に欲し看板を見ると自動的にドライブイン!となる。またテイクアウトの鳥弁当も頻繁に買いに行くし、会員カードにポイントも貯めまくっている。さらには、オリジナルの“コッコ君”のTシャツは、趣味で集めているご当地Tシャツの中でもお気に入りの一枚だ。このように、前のめりで語りたくなる“鳥愛”は尽きることがないのだが、ラーメンはじめ九州の食文化を長く研究してきた筆者的にこの記事でお伝えしたいことは、大きく下記の3つ。

ドラ鳥は九州北西エリアの最強パワ飯

実は、ちゃんぽんもむちゃくちゃ旨い

私的“ドラ鳥10のあるある”(最新版)

「ドライブイン鳥」の代表取締役・有浦定幸さんに筆者の鳥偏愛をお話ししたいと伝えると、快諾してくださった(感謝)。

この方が「ドライブイン鳥」社長の有浦定幸さん。昭和42年伊万里市出身。「主にファミリーがターゲット。3世代で愛される店作りをやっていきたい」
この方が「ドライブイン鳥」社長の有浦定幸さん。昭和42年伊万里市出身。「主にファミリーがターゲット。3世代で愛される店作りをやっていきたい」

1969(昭和44)年の“酉年”の元旦に開業。養鶏場を営みながら、卵を売り歩いていた創業者が、知り合いの食堂を引き継ぎ鳥料理店を作った。これは広く知られている話であるが、筆者が一番気になっているのは「ドライブイン鳥」という屋号にした訳だ。そりゃ、鳥料理推しだから。なのは間違いないだろうが、ズバリ「鳥」なのが興味深い。ファミレスの走り的であるドライブインは昭和創業の屋号でよく見かけるものだが、潔い「鳥」は、長い時を経ての郷愁がスパイスであるとはいえ今考えると、とても秀逸だ。例えば「鳥焼肉&鳥飯 何々」とか、酉年だから「酉」の字もあったかもしれない。

好きすぎるゆえ普段着にしているドラ鳥Tシャツを着て取材に挑む筆者
好きすぎるゆえ普段着にしているドラ鳥Tシャツを着て取材に挑む筆者

「それは何より親しみやすさ、分かりやすさからでしょうね」。との返答の後に、有浦社長はこう続ける。

創業当時の「ドライブイン鳥」。増築を繰り返し、より席数の増えた現在の店舗となった
創業当時の「ドライブイン鳥」。増築を繰り返し、より席数の増えた現在の店舗となった

「私は昭和42年生まれで、物心ついた時から『鳥』に囲まれて育ちました。22歳の時、本格的に家業に入ってから母が主体で作ってきた“世代を超えて愛される店”の価値を再確認し、自身の当たり前の店が実は特別な店だったのだと改めて感じるようになりました。“地域に寄り添う。老若男女への親しみやさ”。その思いが屋号の根底にあるのは間違いありません。ちなみに親しみやすさでいうと、ありがたいことに広く愛されている“コッコ君”は、実は2代目なんです。初代はどちらかというと少しおどろおどろしいリアルな鳥だったのですが、より親しんでもらえるよう90年代頭に現在のコッコ君へとなりました」。

なるほど! コッコ君は2代目であるのか。筆者の鳥トリビアがまた一つ増えた(メモメモ)。その他“あるある”は最後にまとめておく。

また、「ドライブイン鳥」の歩みは、同じく昭和、平成、令和と駆け抜けてきた「ありたどり」を生産する「ありた株式会社」の歴史でもある。素材、網焼きへのこだわり、秘伝のタレ、ニンニク胡椒の妙は、「ドライブイン鳥」の公式HPにもあるのでここでは割愛させていただく。筆者的にはタレの中にニンニク胡椒をたっぷりと入れて“どろどろ”にカスタマイズするのが好きだ。焼く前の肉にニンニク胡椒をかけて、しばらく漬け込みするのもドラ鳥を楽しむ技の一つである。

「ちゃんぽん」にも素材にこだわる「鳥」の美学を見る
「ちゃんぽん」にも素材にこだわる「鳥」の美学を見る

さて、ここからは「ちゃんぽん」の話をする。「ドラ鳥」での「ちゃんぽん」オーダーというのは、なかなかニッチではあるが、これはマジで美味しいので試してもらいたい。第一に、有浦社長は大の麺好きでもある。「伊万里本店」に隣り合い「二代目えぞっ子」という味噌ラーメン店があるが、ここは有浦さんが伊万里市にあった老舗の灯を消したくないと引き継ぎ“二代目”を掲げて始めたもの。ゆえに「鳥」で出す麺メニューも専門店に負けない完成度へと仕上げている。

ちゃんぽんのベースは、「鳥スープ」や「鳥めし」に使うダシとはまた異なり、鶏&豚を使ったほんのり白濁系。動物素材のパンチの効いたスープに、たっぷりの炒め野菜の甘みもジュワリと染み出す。また、麺も佐賀の製麺所に特注している力強さのあるちゃんぽん麺。良コスパで一食としてしっかりとしたボリュームもある。やき鳥を楽しんだ後の締め麺としてシェアしながら楽しむのもおすすめだ。

「ドライブイン鳥」は今年2024年で55周年を迎えた。有浦社長に60年に向けての思いを聞いてみると。

「まずはお客様に感謝、従業員に感謝です。でも実は、周年っていうのは日々の積み重ねの先にあるものであまり気にしてはいないんですよね。『3世代にわたり愛される店作り』。ただ、それを極めていこうと思っています」。

最後に「私的“ドラ鳥あるある”10のこと」をまとめておく。

味わい、雰囲気、トリビア。すべて引っくるめて“ドラ鳥”の魅力だ。

(其の1) 「伊万里本店」の鳥のオブジェにはカラータイマーがある(但し光らない)

(2) 冬はやたら「こたつ席」が多い

(3)  「ゾンビランドサガ」第5話に有浦社長は本人役で登場。また「M-1グランプリ2023」の優勝者、令和ロマンに副賞として「鳥」の商品が多数贈呈された

(4) オリジナルTシャツが今夏リバイバル販売(筆者も即購入、愛用している)

(5) 「ちゃんぽん」も激うま!

ちなみに伊万里本店にはラーメンもある(糸島店には不定期で登場)。また、「鳥めし」「焼きめし」両方出しているのも興味深い

(6) 「伊万里本店」と隣り合う「二代目 えぞっ子」も実は系列店

(7) 有浦定幸社長は2代目。そして“コッコ君”も2代目

(8)秘伝のタレはかつてコーラ瓶に詰めて販売していた(レシピは数人しか知らない)

(9) 「糸島店」は、サーフィンや山登り帰りのパワー充填スポットとしても有名

(10)「糸島店」の目の前にある宝くじ売り場で2024年1月なんと10億円!が当選。以降長蛇の列になっている

このオブジェは通称「不死鳥」と呼ばれている。胸にランプが付いているが光らない。光と音楽が出る仕掛けにする予定だったが長くそのままになっているという。いつか光るかも!?
このオブジェは通称「不死鳥」と呼ばれている。胸にランプが付いているが光らない。光と音楽が出る仕掛けにする予定だったが長くそのままになっているという。いつか光るかも!?

「ゾンビランドサガ」ファン垂涎の場所。写真は店前のマンホール
「ゾンビランドサガ」ファン垂涎の場所。写真は店前のマンホール

ドラ鳥のTシャツを着てドラ鳥のちゃんぽんをズズリ。最高である。「あっ、Tシャツに汁が飛んだw」
ドラ鳥のTシャツを着てドラ鳥のちゃんぽんをズズリ。最高である。「あっ、Tシャツに汁が飛んだw」

ラーメンライター

1976年鹿児島市生まれ。株式会社J.9代表取締役。2002年、福岡でライター業を開始。同年九州ウォーカーでの連載「バリうまっ!九州ラーメン最強列伝」を機にラーメンライターとして活躍。各媒体で数々のラーメンページを担当し、これまで1万杯以上完食。取材したラーメン店は3000軒を超える。ラーメン界の店主たちとも親交が深く、ラーメンウォーカー九州百麺人、久留米とんこつラーメン発祥80周年祭広報、福岡ラーメンショー広報、ソフトバンクホークスラーメン祭はじめ食イベント監修、NEXCO西日本グルメコンテストなど審査員も務めてきた。その活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビZDFでも紹介

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