【アイスホッケー】この10年で「今日はメディアがいっぱい来てるな」と感じたのは「あの時」くらい・・・
先月19日に、チームの活動拠点である釧路市(北海道)で、今季限りの廃部を発表した日本製紙クレインズが、今夜から2019年に入って最初の試合となるデミョン キラーホエールズ(韓国)との2連戦に臨みます。
▼氷都のファンに白星を!
レギュラーシーズンの残りは、あと7試合。
現在3位のクレインズは、上位5チームが勝ち進むプレーオフ進出圏内にいますが、最終順位が上位であれば、プレーオフの対戦相手が下位のチームとなるのに加え、ホームアリーナでの試合数も多くなるアドバンテージを得られるだけに、白星を積み重ねていきたいところ。
廃部発表後、最初の試合となったHigh1(ハイワン=韓国)2連戦(先月25、26日)で、ホームゲームながら連敗を喫してしまっただけに、今夜と明日のホームゲームは、首位を走るキラーホエールズを下して、”氷都”釧路のファンへ勝利をプレゼントできるでしょうか?
▼韓国からもリーグ脱退の知らせ・・・
そんなクレインズに続いて、アジアのアイスホッケー界では、韓国からも残念な知らせが届きました。
リーグ創設3季目(2005-06シーズン)から加盟しているHigh1(ハイワン=創設当初のチーム名はカンウォンランド)が、今季限りでアジアリーグから脱退する方針であると、韓国と日本のメディアが報道。
リーグが定めた「脱退申請は12月31日まで」という期限に従って、既に正式な申請を行った模様です。
▼High1はどんなチーム?
アジアリーグから脱退する意向が報じられたHigh1の歩みを振り返ると、昨年開催された「ピョンチャン(平昌)オリンピック」に、触れないわけにはいきません。
韓国は1988年の「ソウルオリンピック」に続き、冬季大会の招致活動をスタート。
しかし、有力選手が揃うショートトラックなど、一部の競技は知られていたものの、その他のウインタースポーツへの注目度は、お世辞にも高いとは言えませんでした。
それは、冬季オリンピックで必ず最後の金メダルを争う競技として、世界各国のスポーツファンから注目を集める「男子アイスホッケー」にも当てはまり、1997年の通貨危機なども相まって、アジアリーグ創設時(2003年11月)には、トップレベルのチームが、ハルラウィニア(現アニャンハルラ)だけしかありませんでした。
▼新チーム誕生の理由は?
このような状況の中、High1がアイスホッケーチームを創設したのは、ズバリ ”特権”を得るため。
国が掲げる「冬季オリンピック招致」への気運を高めようと、アイスホッケーチームを設立するなど、ウインタースポーツへの投資を行う見返りに、それまで韓国国内では認められていなかった「韓国人が入場できるカジノ」の運営権など、リゾート業に有利な特権を手にしたのです。
そのため、選手たちはソウル市内や近郊の韓国中心部に住んでいながら、ホームゲームは冬季オリンピック開催地のカンウォンド(江原道=韓国は道州制)の道庁があるチュンチョン(春川)で開催。
オリンピック招致が成功してからは改善されましたが、チーム創設から数年間は、バスで3時間近くかけて「冬ソナ」の舞台となった町まで赴き、冬季オリンピック招致のパネルや広告ボードが掲げられている小さなアリーナで、ホームゲームを戦っていました。
▼悲願の冬季オリンピック開催! でも、チームは…
2010年(カナダ・バンクーバー)、2014年(ロシア・ソチ)と、オリンピック招致に二度敗れたあと、「三度目の立候補」がかなって、2011年7月に「ピョンチャン オリンピック」開催が決定した際、韓国のアイスホッケー界は歓喜に沸きました。
しかし、皮肉なことに「初めての冬季オリンピック開催決定」という知らせが届いた瞬間が、High1チームの創設当初からの役割が失われた瞬間になってしまった模様です。
▼日本のアイスホッケー界でも…
もっとも、こう言った現象は、韓国に限ったことではありません。
日本のアイスホッケー界の歩みを振り返っても、古くは関西の実業団リーグから昇格し、第1回日本リーグで3位の成績を残した福徳相互が、「札幌オリンピック」の翌シーズン(1972-73)に。
その後も「長野オリンピック」の翌シーズン(1998-99)に古河電工(現栃木日光アイスバックス)。
「ソルトレイクシティ オリンピック」の翌シーズン(2002-03)は西武鉄道(事実上コクドに吸収合併)と、オリンピックを区切りに役目を終えたとばかりに、チームの歩みにピリオドが打たれてしまいました。
▼「今日はメディアがいっぱい来てるな」と感じたのは・・・
筆者が中継の実況アナウンサーやライターの仕事などで、リンクへ足を運んできた記憶をたどると、この10年間で「今日はメディアがいっぱい来てるな」と感じたのは、チームの「廃部発表の時」くらい・・・。
あまりにも悲しい現実を、どのようにすれば変えることが、できるのでしょう。