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【第88回都市対抗野球大会第11日】1点を争う熱戦をNTT東日本と日本通運がものにする

横尾弘一野球ジャーナリスト
日本通運のルーキー・生田目 翼は、150キロに迫る速球を連発して最終回を締めた。

 すべて関東勢による準決勝は、2試合とも1点を争う展開。惜しくも決勝進出はならなかった東芝と三菱日立PSには、黄獅子旗が授与された。

準決勝/東京都・NTT東日本 1×0 川崎市・東芝

 NTT東日本が新人の堀 誠、東芝は2年目の加嶋宏毅と、若い先発投手が持ち味を存分に発揮し、投手戦を繰り広げた。

 先攻の東芝は4、5回に一死二塁のチャンスを作ると、6回表には堀米潤平と山崎 錬(JX-ENEOSから補強)が連打し、四番の金子聖史が送って一死二、三塁とする。ここでNTT東日本は、投手を左腕の野口亮太(鷺宮製作所)に代えて無失点で凌ぐ。

 NTT東日本は4回に二死から2四球をもらったが、ベテランの北道 貢が中飛に討ち取られ、6回裏に安打と犠打で一死二塁に。すると、東芝は二番手に岡本拓也を注ぎ込んで切り抜ける。

 そうして互いにチャンスを作り、磐石のディフェンスで凌ぎ、を繰り返し、9回を迎える。東芝は先頭の松本幸一郎が右前安打を放ち、大河原正人が送る。だが、後続が倒れて無得点に終わる。その裏、NTT東日本は先頭の喜納淳弥が内野安打で出塁し、越前一樹が送って一死二塁。この場面で二塁走者の喜納が三盗を決めると、途中出場の目黒 聡が放った打球が一、二塁間を破り、この試合の初得点で勝負が決まった。

 ともにチャンスにあと一本が出ない展開だったが、丁寧な投球で相手打者に自分の打撃をさせなかった両チームの投手陣を褒めるべきだろう。

準決勝/さいたま市・日本通運 5×3 横浜市・三菱日立パワーシステムズ

 1回裏の日本通運は、2四球で一死一、三塁のチャンスを得ると、四番の北川利生は三振に討ち取られたものの、関本憲太郎が打った瞬間に本塁打とわかる豪快な当たりをレフトスタンドに突き刺し、3点を先制する。心強い援護を受けた先発の阿部良亮は、3回までほぼ完璧な投球で三菱日立パワーシステムズの打線を抑え込む。

 しかし、4回表の三菱日立PSは、二死二塁から竹内啓人の中前安打で1点を返すと、若林晃弘(JX-ENEOSから補強)も左前安打でつなぎ、河野凌太の右前安打で2点目を挙げる。立ち上がりに一発を浴びた大野亨輔も立ち直り、前半は3対2と日本通運のリードで折り返す。

「阿部の投球がとらえられ始めたので思い切って」と藪 宏明監督が振り返るように、日本通運は6回から継投に打って出る。6回は新人の庄司拓哉が3者凡退に斬って取ったが、7回に登板した渡辺 圭は安打と四球で一死一、二塁され、幸松 司(JFE東日本から補強)に交代。幸松は二死まで漕ぎ着けるが、八戸勝登に中前安打を許して同点にされる。

 終盤に振り出しに戻り、三菱日立PSの後藤隆之監督が7回から二番手に齋藤俊介(JX-ENEOSから補強)を投入すると、日本通運は一死から代打に送った飛ヶ谷和貴がライトに勝ち越しソロ本塁打。藪監督の采配がズバリ的中してリードを奪い、8回裏にも二死三塁から北川の右前安打で1点を追加する。そして、9回表は生田目 翼がキレのあるストレートを軸に3人で片づけ、日本通運は20年ぶりの決勝進出を決めた。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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