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ダルマゾ氏「パーキンソン病には負けない」

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)
2014年の日本代表の国際親善試合で(写真:伊藤真吾/アフロスポーツ)

ラグビー日本代表のスクラムを世界レベルに引き上げたマルク・ダルマゾさんが、難病のパーキンソン病に罹患していることを告白した。15日、「心配しないでほしい。いまは元気です。すごく人生は楽しい。新しい敵の病気に打ち勝ちたい」と語った。

ダルマゾさんは1967年生まれの48歳。フランス代表のフッカーとしてのキャップ(国代表戦出場試合)が「33」。引退後はスクラムコーチとして実績を残し、2012年冬から、日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC=当時)に請われ、スクラムコーチを務めていた。ワールドカップ(W杯)での日本代表の活躍とは無縁ではなかろう。

ダルマゾさんは現在、フランスに滞在している。パーキンソン病告白というニュースを受け、国際電話をかけた。「4年前から(病気は)わかっていた」と打ち明け、ジョーンズHCにも明かしていなかったそうだ。「(病気のことが)分かると、コーチを辞めさせられると思った」からだった。

「日本では、素晴らしい時間を過ごさせてもらいました。日本の人々のサポートに感謝しています。1人では何も頑張ることはできませんでした。(病気のショックから)リカバリーできたのは、日本に行ったからです。病気になって、自分のコーチングのレベルが上がった気がします。一瞬一瞬により集中できるようになりました。日本のお陰で、気持ちが平和になりました」

こちらがホッとしたのは、ダルマゾさんの声が沈んでないことだった。病気になって、改めて「人生は素晴らしくて、オモシロいことがわかった」と笑った。

日本のメディアでは、日本代表の次期HCとして、スーパーラグビーでハイランダーズ(ニュージーランド)を優勝に導いたジェイミー・ジョセフ監督が有力候補に挙がっている。ダルマゾさんは代表チームへの愛着を示しながら、「ジャパンはもっと強くなる可能性を秘めています。私はこれからも、ジャパンを応援しています」とエールを送った。

ダルマゾさんは詳しく教えてくれなかったが、「私も新しいクラブで、新しいチャレンジが始まります」と漏らした。ワールドカップ総括のダルマゾさんのインタビューを収めた新刊本(『新・スクラム』東邦出版)の謝意を伝えると、ダルマゾさんも日本語で「とてもうれしい。ありがとうございます」と返してきた。

電話を切ろうとすると、「私からのメッセージは、“日本のみなさん、心配しないで”ということです」と言ってきた。

「人生は長い長い川みたいなものです。汚れた部分もあれば、きれいな部分もあります。ラクな時も苦しい時もある。でも、どんな時でも、一生懸命に泳ぎます。みんなで。人生は一回っきりです。チャレンジです」

組もうぜ、スクラム。ダルマゾさんがジャパンに伝えたかったもの、それは何より、タフなメンタルの大事さだったのかもしれない。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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