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子どもの言葉づかい改善、NG対応とOK対応とは?専門家が解説!

保育士ごんちゃん保育士/チャイルドカウンセラー

こんにちは!保育士ごんちゃんです。

「無理しない育児」をモットーに、保育士として地域の子育て支援事業に従事しながら、オンラインでも育児に関する情報発信をしています。また教員養成大学の研究センターで研究員として子どもの自立について研究中です。

そして私も現役の子育て世代で、3人姉弟の育児に日々奮闘しています。

先日、子育て中のお母さんより、子どもの言動に関するこんなお悩みをいただきました。

【お悩み相談内容】ペンネーム:ほしうめさんより

子どもの言葉遣いについてご相談です。 4歳の息子が、保育園でいろんな言葉を覚えてくるようになりました。 一時期、何を言っても『めんどくさーい』というようになり、どうしたのか聞くと、保育園で○○くんがよく言ってるんだ〜とのこと。 他にも下品な言葉や語尾が乱暴(くさい→くせぇなど)な言葉を覚えてきます。 そういう年頃なのかな、とは思いますが、 私としてはそういう言葉が苦手であまり使って欲しくないと思っています。 『そんな言葉使わないよ〜』と伝えていたところ、正義感のある息子はお友達に"そんな言葉つかっちゃいけないよ!"と言っていることが分かりました。 ご家庭それぞれの方針があると思うので、私は他人のお子さんの言葉遣いを否定することはするつもりはないです。 そこで最近は、『お母さんはその言葉ちょっと嫌いだなー』と伝え、『他のお友達が使っていてもそのおうちの言葉だから、注意はしなくていいんだよ』と伝えています。 そうしたら、注意することはやめたようですが、家で、『○○ちゃんがお母さんの嫌いな言葉つかってたよー』と報告みたいに言ってくるようになりました。 本当は自分も言ってみたいけど、我慢しているということなのかなと思ったりすることもあります。 子育てしていると、私の伝え方や言っていることは良いのか迷うことがたくさんあります。 私自身が考えすぎる性格で、子供に口を出し過ぎなのかなとも思ったりもします。 子どもの性格によって対応は変わると思いますが、ごんちゃんならどう対応されますか?

「お母さんは」を主語にして伝えてみよう

今回は、お子さんの言葉づかいについて悩んでいるというご相談ですね。

ご相談の中で、「子育てしていると、私の伝え方や言っていることがこれでいいのか迷うことがたくさんあります。」とおっしゃっていますが、ご相談者さんはお子さんにとても素敵な関わりをされているなと感じました。

私はこういったご相談をいただいた際には、「子どもにしてほしくないことや望ましくないことを注意する時はI(アイ)メッセージでお母さんの気持ちを伝えてみてください」とお伝えしています。

今回のご相談者さんは「お母さんはその言葉、ちょっと嫌いだな」というように、まさにIメッセージで伝えていらっしゃるんですよね。

Iメッセージというのは、「私は」を主語にして、相手にお願いしたいことや、やめてほしいことを伝える方法です。アンガーマネージメントなどでもよく言われている、相手を尊重するコミュニケーション方法のひとつです。

そのため、親が子どもに対して、何かやめてほしいことを伝えるときは、「お母さんは悲しいからやめてほしいな」「お母さんはしてほしくないんだよね」「お母さんは乱暴な言葉は聞きたくないな」というように、「お母さんは〜」と自分を主語に置いた言い方をすることで、子どもを否定することなく、やめてほしいことを伝えることができます

また、「お母さんは〜」は省略して「悲しいからやめてほしいな」と言っても、お母さんの気持ちだということが伝わるので大丈夫です。

さらに、ご相談者さんはお子さんに「めんどくさい」という言葉がでた時に、どうしたのか聞くとおっしゃっていて、これも素晴らしい関わりだと思います。

頭ごなしに注意するより、「どうしてそんな言葉が出たのか」といった背景や、子どもの気持ちを知ることはとても大切だからです。

そのため、まずは受け止めるという関わりをされていること、先ほどので伝えるIメッセージで伝えるという関わりをされていることがとても素敵だなと感じました。ぜひこのまま続けていただけたらと思います。

「してほしくないこと」より「してほしいこと」「してもよいこと」

すでに素晴らしい関わりをされていて、このままで十分なのですが、「ごんちゃんならどんな風に対応されますか」と聞いてくださっているので、さらにできることがあるとすれば…という観点で2つ提案させていただきます。

1つ目は「してほしい言動を具体的に見本で見せて伝えること」、2つ目は「子どもに望ましい行動がみられた時に褒めること」です。

1つ目の「してほしい言動を具体的に見本で見せて伝えること」に関して、例えば「走らないで」と注意した時。「走らないで=歩くこと」というように、否定後の注意からするべき行動を反対の意味で即座に判断するのは、子どもの発達段階を考えても非常に難しいことです。そのため、実際にしてほしい言動を大人が見せながら、具体的に伝えていくことが大切です

今回のご相談のケースでは、使わないでほしい言葉の代わりに、使ってほしい言葉が何なのかを、お母さんが具体的に伝えてみるのが良いですね。

乱暴な言葉を使ったら、「乱暴な言葉を使ってほしくないよ」とお母さんの気持ちを伝えた上で、「こんな風に言おうね」と代わりの言葉を教えるというイメージです。

例えば、子どもがお友達とおもちゃの取り合いになって、「返せ」と乱暴に聞こえるような言葉を使った時は、「『返せ』じゃなくて『返して』と言えばいいんだよ」と教えてあげましょう。

しかし、言ってほしくないけれど、それに代わる言葉がないという場合もありますよね。今回のご相談のケースでいう「めんどくさい」という言葉を使わないでほしいというような場合です。

「めんどくさい」に代わる言葉があればいいのですが、私にはなかなか最適な言葉が思い浮かびません。この場合はただ「めんどくさい」と言ってほしくないだけだったりしますよね。

このように最適な言葉が見つからない時は、代わりに「してもいい行動」を教えるのが1つの方法です。例えば、「めんどくさい」と言いたくなったら、「左の手のひらに、右の指で◯をぐるぐる書く」。周囲の人に影響がなく、子ども本人が解決できる行動を提案すると良いでしょう。

「緊張したら手のひらに人という字を3回書いて飲み込むといい」というおまじないを聞いたことはありませんか?こうしたイメージで「言ってほしくない言葉を言いそうになったら、こうする」というのを一緒に考えてみると良いかもしれません

「触らないで」は「見るだけね」で解決!

私自身が子どもたちに「やめてほしいこと」を伝える場面で多いのが、「触らないで」。

子どもたちは悪気なく興味を持っているけれど、大人としては触ってほしくない物が身のまわりには意外とたくさんあります。そのため「触らないで」と注意する場面も多いのではないでしょうか。

私も実際、自身の子育てでも、保育の現場でも「危ないから触らないでね」ということがあります。そして、その後に「見るだけね」と、してもいい行動を伝えます。すると、子どもの行動が変わるんですよね。

「触らない」と「見るだけ」というのは同じ行動です。しかし、子どもからしてみれば「触らないで」という否定だけでなく、「見るだけ」「見るのはよい」という「してもよい行動」があるという状態は実際に行動に移しやすいのです

こうしたことを続けていくと、子どもの方から触らない方がよいものを認識した時に、「これは見るだけ」と言ってくることもあります。

このように、してほしくない行動の後に、してもよい行動を提案するという方法はとても効果的です

困っていない時こそ褒めるチャンス

そして、2つ目の「子どもに望ましい行動がみられた時に褒めること」に関して。

子どもが望ましい行動をしている時は、大人にとって特に困ることがない状況なので、何気なく見てそのまま終わりということがよくあります。私自身も意識していないとそうなりがちです。

ですが、日頃から望ましい行動を子どもが実際にすることができた時は、褒めるチャンスなんですよね。この時に「できたね」「そういう風にしてくれてありがとう」「お母さん嬉しいよ」といった子どもを認める声かけができると、その行動が継続する可能性が高まるのではないでしょうか。

今回のご相談のケースでは、乱暴な言葉を使ったときに注意する頻度よりも、望ましい言葉を使えた時に褒める頻度を高めていくことがポイントです

子どもはそもそも自分に注目してもらうことを望んでいるので、注意だとしても、自分に注目が集まるならその行動をとってしまうということが多々あります。

そのため、望ましい行動をスルーせずに褒めるということを意識していきたいですね。

自分の中の正解を大切に

最後に、育児をしていると「これで良いんだろうか」と思うことはありませんか?私自身も日々感じていますし、おそらく多くの方が経験していらっしゃるのではないでしょうか。

今回のご相談者さんも、「私自身が考えすぎる性格で」とおっしゃっていて、お気持ちがよくわかります。また、日頃は気楽にやっていけるというタイプの方でも、ご自身に関してはそうでも、育児では悩んでしまうという方にもたくさん出会ってきました。

育児は本当に悩みがつきもので、一つ解決したら次の成長段階でまた一つ悩みが出る…次から次へ悩みが出てくると感じます。そのため、「育児はそんなもんなんだ」と思うのが、自分の気が楽になる考え方かもしれないなと感じています。「なんで私はこんな風にしかできないんだろう」と思っている人もこんな風に考えてみるとよいかもしれません。

そして、「育児の正解は自分が決めるしかない」とも思います。

ご相談者さんが「ご家庭のそれぞれの方針があると思うので」とおっしゃっているところがすごく素晴らしいと感じました。みんながこういった感覚で子育てできたら、子育て仲間同士も尊重し合えて楽しいだろうなといつも考えています。

ですので、ご相談者さんが「自分はこういう風にしたい」と思って行動されていることには自信を持ってほしいです。

子どもにとって良いことをしてあげるのが正解とも限りません。親が自分の人生や日々の生活を楽しむことも、育児をしていく上で大切なことです。世間的に「育児ではこうするべき」という考えは無数にありますよね。例えば、「テレビを見せない方がいい」「栄養バランスのよいものを食べさせた方がいい」「こんな声かけをしない方がいい」などたくさんあります。

今回私がお話してきたこともその1つです。私もこうしてお話していますが、これが絶対の正解だとは思っていないんですね。今のところ私はこう思う、ということに過ぎません。共感するところがあって、自分の育児に取り入れたいと感じてくださった方には1つの正解になります。一方で、「違う」と感じた方はそれを大切にしてほしいと思います。結局、「自分の中にある正解」を信じていくことが重要です

子どもが子どもである今に目を向けて

また、「子どものために」と思うのが親心で、「子どもが将来困らないように」という考えも素敵ではあります。一方で、その将来を思いすぎるがあまりに、「今しかないこの時間を蔑ろにしてよいのだろうか?」とも思います。

「子どもが子どもである今しかない時間を、親子でいかに幸せな時間にしていけるか」が大切なのではないかと私は考えています。

子どもはそもそも育つ力を持っています。親子で「幸せだな」という実感を積み重ねていければ、それでよいのです。

今回のご相談者さんは、お子さんのことを思うからこそ、悩んでいらっしゃって、こうしてご相談のお便りを送るという行動をとってくださいました。自分の気持ちや悩みを書き出すことも大変な作業ですが、忙しい合間を縫ってこうして行動していらっしゃる。この行動だけでも素晴らしいことです。

すでにできていらっしゃることもたくさんありますし、そのままのお母さんでいいんですよ。お子さんにとっては本当に大切なお母さんで、そこにいてくれるだけでよいのだと思います。自信を持ってお子さんとの時間を楽しんでいってくださいね。

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今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう!

保育士/チャイルドカウンセラー

国立大学で子どもの自立支援について研究中の子育て支援保育士。九州大学教育学部卒。2019年2月に女の子、2021年11月、2023年10月に男の子を出産した3児の母。HSP(Highly Sensitive Person)の気質を持ち、人生で2度のうつ病を経験。現在はがんばりすぎるのをやめて「無理せず自分らしく」がモットー。育児のお役立ち情報やライフハック、子どもと楽しく過ごすための遊び心などを発信。

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