プロ野球開幕。セ・パともに混戦必至の今シーズンは「力の引き出させ方」で順位が決する可能性
セ・リーグは広島の支配が終わり戦国時代へ
プロ野球はいよいよ2019年のペナントレースが29日に開幕するが、それに先立ち今季を展望してみよう。
表は昨年の順位と成績、それに加えオフの主な獲得・退団選手をまとめている。
セ・リーグに関しては三連覇を果たした広島から、攻撃の中心である丸佳浩が移籍したことが最も大きな変化になるだろう。連覇中の広島は、得点力で他球団に大きな差をつけてきたが、その中心にいたのが丸になる。2018年の丸はリーグの平均的な打者に比べ62.7もの得点を上乗せしている。これを他の打者が肩代わりするのは難しく、さすがの広島も得点力を落とし、他球団が対抗できるようになる可能性は高まっている。
広島をとらえる一番手は巨人になるだろう。丸をFAで獲得し、ここ数年課題だった得点力の改善に道筋をつけた。巨人は出塁面で貢献できる選手がラインナップに少なかっただけに、出塁力も備えたスラッガーである丸の加入は理想的だった。
丸の移籍で広島・巨人の両チームの得点力はかなり近いレベルになる見込みだ。投手力と守備力からなる失点を抑える力はやや巨人が有利で、今季はこの2チームが優勝を争う本命となりそうだ。
3位争いも混戦が予想される。ヤクルトとDeNAは強打のチームと思われがちだが、打撃成績が高めに出やすい本拠地球場の影響を考えると、実は投手陣がチームを支えている。その若い投手陣をうまく運用できればさらに上を目指せそうだ。阪神はFAで西勇輝、外国人補強でガルシアを補強し、投手陣をより厚くしてシーズンを戦う選択をしている。ただ、さらに上を目指すには長らく試行錯誤を続けてきた打線のレベルアップを実現し、投手陣をサポートすることが不可欠だろう。中日はオフの動きは少なく明確な上積みはそれほど見受けられないが、新首脳陣が眠っていた戦力の掘り起こしを行いチームの立て直しを図っているようだ。
セ・リーグは広島の戦力が低下したことで、リーグ全体の差が小さくなっている。ここ3年では最も力が拮抗したシーズンとなっており、新戦力の台頭や主力選手の故障などで大きく順位が変動しかねない。そういった意味では、首脳陣がチーム力を正しく引き出せるかもポイントで、シーズンを通した「戦力の運用力」なども試されそうだ。
パ・リーグも昨年優勝チームが大幅戦力ダウン
パ・リーグも昨年優勝した西武から投打の主力が移籍し、リーグの力関係に大きな影響を与えそうだ。昨年の西武は792得点と2位以下に圧倒的な差をつけ攻撃力でペナントを制した。その差をつける上で中心にいた浅村栄斗がFAで楽天に移籍している。また、エースの菊池雄星がポスティングでマリナーズに移籍。西武が喫していた653失点はリーグワーストだったが、菊池の移籍でさらなる失点増が見込まれる。
西武の主力離脱で相対的に順位を高めそうなのがソフトバンクになる。ただ、主力野手のベテラン化や相次ぐ投手の故障などでチーム力は下降局面に入っている。セ・リーグと同様にパ・リーグも昨年の上位球団の強みには陰りがある。
昨年3位の日本ハムはオフに積極的に動き、金子弌大(千尋)・秋吉亮など実績のある投手の補強を進め、打者では台湾から王柏融(ワン・ボーロン)を獲得した。主力が若い構成であるためシーズンが深まった頃にチーム力を上がっていく可能性もありそうだ。
オリックスは長年チームを支えた金子と西とが移籍。新エース候補は昨年セットアップを務め貢献した山本由伸に期待がかかる。野手でもベテランがチームを去り一気に若返りを進めている。こちらはすでに球界を代表する打者になりつつある吉田正尚を中心に、若い選手の戦力化を目指しているのが伺える。
昨年下位に沈んだチームも補強が進んでいる。ロッテは長打力不足を補うため日本ハムから自由契約になったレアードを獲得。昨年は主力として力を示した中村奨吾や井上晴哉など内野陣は充実しており他球団に対する競争力を高めている。外野でもドラフト1位の藤原恭大の開幕一軍を決断するなど、弱点を克服しようと手を入れている様子が伺える。
楽天は西武から浅村を獲得し、課題の二遊間の補強を実施。そのほかにもドラフト1位の辰己涼介とオコエ瑠偉の外野の定位置争いなどからは、徐々にではあるが野手の底上げが進んでいることを感じる。遊撃・茂木栄五郎を健康な状態で維持できれば上位を十分に狙えそうだ。
パ・リーグはセ・リーグよりさらに上位と下位の差が詰まるシーズンになりそうだ。ソフトバンクが選手層で優位に立つ見込みだが、首脳陣が運用を間違えればそれだけで順位を落とすこともありうる。2019年はセ・パどちらも圧倒的なチームが少なく接戦は必至だ。いかに上手くチームの力を引き出せるかが問われ、監督コーチにとって手腕をより問われるシーズンになりそうだ。