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4 年目を迎えたグアテマラウィンターリーグ、拡大したシーズンを終了

阿佐智ベースボールジャーナリスト
奇抜なユニフォームで話題を呼んだチャンピオンチーム、ブロンクス

 現地時間1月29 日、中米の小国・グアテマラのウィンターリーグが幕を閉じた。この国にプロリーグが誕生してすでに 4 シーズン目。初年度の 2018 年に発足した初代リーグは、財政破綻によりシーズンを大幅に短縮してたった 1 年で廃絶。翌年からは別資本の「ベイスボル・インベルナル・グアテマラ(グアテマラウィンターリーグ, BIG)」が発足し現在に至っている。11 月 2 日に例年通り 4 チームで開幕を迎えた。昨シーズンは、コロナ禍もあり開催が危ぶまれる中、なんとか各チーム 6 試合という短いレギュラーシーズンを行い、上位 3 チームによるポストシーズンを行ったが、今シーズンは、現地スーパーマーケットチェーンをスポンサーに迎え、プロリーグ発足以来、初めてシーズンを全うし(それまではシーズンを途中で打ち切っていた)、各チームとも 30 試合のレギュラーシーズンを 1月まで戦った。シーズン終盤にはホームランダービーとオールスターゲームも実施され。年またぎのシーズンも史上初めてのことだった。

レギュラーシーズンを制したホーネッツだったが、ファイナルシリーズでは勝ち上がってきたブロンクスの勢いに呑まれた。
レギュラーシーズンを制したホーネッツだったが、ファイナルシリーズでは勝ち上がってきたブロンクスの勢いに呑まれた。

 レギュラーシーズンを制したのは、昨シーズンリーグ戦 1 位だったディアブロスに代わって新規参入したホーネッツだった。26 歳のドミニカ系グアテマラ人でオリオールズ傘下のマイナー経験をもつキャッチャー、エステバン・ビスカイノを選手兼任監督に据え、ドミニカ、ベネズエラから戦力補強を行った新球団は、チームの主砲も務めるビスカイノの活躍もあり、25 勝 5 敗の勝率 8 割 3 分という驚異的な強さでファイナルシリーズにコマを進めた。

 このホーネッツと壮絶なレギュラーシーズンのトップ争いを演じたのが、一昨年のチャンピオン、ブロンクスだった。こちらも 23 勝 7 敗で高い勝率を残したが、1 ゲーム差で涙を呑んだ。逆に言えば、下位 2 チームの成績は悲惨なもので、昨年参入しながら勝率.333 に終わったマリネロスは今シーズンも 4 勝 26 敗の勝率 .130 という成績で 2 シーズン連続の最下位に終わった。

今シーズンも低迷したマリネロス
今シーズンも低迷したマリネロス

 2 段階制のポストシーズンは 5 戦 3 勝制で実施された。プレーオフは 1 月 19 日に、ブロンクスとこの国にプロリーグが発足した時からの加盟チームで昨シーズンチャンピオンのロボスとの間で行われたが、シーズン勝率.270 のロボスとブロンクスの力の差は歴然としており、初戦を 5 対 2 で制したブロンクスは、第 2 戦で 12 対 0 とロボスを圧倒した。接戦となった 3 戦目も 9 対 8 で制し、ホーネッツの待つ 25 日からの決勝シリーズへコマを進めた。

 両者のレギュラーシーズンの差はわずか。こうなると、勢いづいたブロンクスの方ががぜん有利となる。ホーネッツは初戦を 4 対 3 でなんとか取ったものの、短期決戦で重要とされる第 2 戦を 6 対 9 で落とすと、シリーズの流れは一挙にブロンクスへ。ブロンクスは第3 戦も 5 対 4 で勝利すると、第 4 戦も 10 対 7 で圧勝。3 連勝で一昨年に続く 2 度目の優勝を飾った。

表彰式でトロフィーを受け取るブロンクスナイン
表彰式でトロフィーを受け取るブロンクスナイン

 何とか 3 か月のシーズンを全うしたものの、まだまだ課題は多い。今シーズンは A クラスとBクラスのゲーム差が離れすぎたが、これではファンの興味もそがれるだろう。各チームの戦力の均衡に向けての努力が必要と思われる。

 また、現在のグアテマラプロ野球の運営はスポンサー頼みから脱却していない。今シーズンもシーズンの大半はコロナ対策として無観客で実施された。年明けからスタジアムに観客を入れたが、チケット価格は一律 20 ケッツアル(約 300 円)。ひとり当たりの GDP(国内総生産)が日本の 9 分の 1 という事情を考えると、それなりの価格となるが、貧富差が激しいこの国で、これだけの額を支払える人は決して多くはない。そういう事情もあってか、有観客試合解禁後も、スタンドには数えるほどしか観客はいなかった。この中米の貧国で、プロスポーツが根付いていくのはなかなか難しいだろう。

 それでも、パナマ、ニカラグアに続く中米第 3 のプロ野球リーグとして、グアテマラリーグにかかる期待は決して小さくはない。

中米の小国に蒔かれたプロ野球の種は花開くのだろうか。
中米の小国に蒔かれたプロ野球の種は花開くのだろうか。

(写真は全てBIG提供)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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