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【7月14日投開票が有力】菅発言で永田町は一気に解散モードへ

安積明子政治ジャーナリスト
菅長官の「大義」発言で、永田町は一気に解散ムードとなった(写真:つのだよしお/アフロ)

菅長官が解散を示唆か

 いよいよ衆参同日選に向けて動き出すようだ。菅義偉官房長官は5月17日午後の会見で、会期末の提出が慣例になっている内閣不信任決議案に対して政権が国民の信を問うために解散することは「当然大義になる」と答えた。

 ポスト安倍の筆頭にも目される菅長官の発言は軽くはない。しかもそれ以前から「衆参同日選」を睨んだ早期解散説は囁かれている。

 理由のひとつは消費税増税問題だ。今年10月に税率を現行の8%から10%に上げることになっているが、実際のところ経済の動向が思わしくない。

消費税増税はほぼ凍結へ

 5月16日にはロイターが、安倍晋三首相の経済指南役の本田悦朗前スイス大使が消費税凍結を強く主張するインタビュー記事を掲載。リーマン・ショック級の事態が起こらない限り消費税率を10%に引き上げるとする政府に対して本田氏は、「むしろ日本発でリーマン・ショック級の事態が起きる可能性を懸念すべき」と強調した。

 安倍首相も同日夜、ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次氏、モルガン・スタンレー・MUFG証券シニアアドバイザーのロバート・フェルドマン氏、クレディ・スイス証券チーフ・マーケット・ストラテジストの市川真一氏、そして岡三証券・チーフエコノミスト・愛宕伸康氏の4名と懇談。経済情勢について意見を聞いている。

 政府の判断の焦点となるのは、5月20日に公表される2019年1月から3月までのGDP速報値(第1次)だ。双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦氏が5月10日発行のニュースレターで「マイナス成長となる公算が大」と述べるなど悲観的で、多くの経済専門家は消費税増税に対して消極的な姿勢を崩していない。終わりの見えない米中貿易戦争や日本にTPPの水準以上の市場開放を迫る日米貿易交渉なども、景気悪化の要因に十分なりえる。

外交面でも選挙準備をちゃくちゃくと

 国際問題も解散の判断材料になるだろう。5月末にはアメリカのトランプ大統領が国賓として来日し、6月末にはロシアのプーチン大統領や中国の習近平主席も列席するG20が開催予定だ。

 また拉致問題については17日に安倍首相が中国共産党の楊潔チ(たけかんむりに褫のつくり)政治局員と面談して協力を求めるなど、これまでにないほど積極的に取り組んでいる。さらに習主席を国賓として招く予定も検討されており、実現すれば安倍首相が「完全に正常な軌道に戻った」と称賛する日中関係は格好のアピール材料になるに違いない。

 解散日は6月28日の会期末前になる公算が大きい。投開票日の最有力は大安の7月14日説。連休のまんなかに当たり、投票率が低ければ、与党に有利になる。

自民党が辞職勧告決議に参加しなかった理由

 北方領土を戦争によって取り戻すことを言及した丸山穂高衆議院議員に対する議員辞職勧告決議案提出に自民党が参加していないのも、解散総選挙を意識してのことだろう。4月7日の大阪府知事・市長のダブル選挙では、自民党大阪府連は大阪維新の会に大敗した。4月21日の衆議院大阪12区でも、自民党大阪府連は負けた。その中で丸山氏の問題は、自民党浮上のチャンスでもある。ここは自民党が強く議員辞職を迫るよりも、「議員の地位に恋々としてしがみつく丸山議員」を有権者に示す方が得策だ。

 丸山氏の地元の大阪19区は、大阪府下で自民党公認候補が小選挙区で一度も勝ったことのない唯一の選挙区だ。しかし過去2度の衆議院選を見てみると、丸山氏と自民党の谷川とむ氏との差は8879票(2017年)、4896票(2014年)と、さほど開いているわけではない。

「大阪19区は丸山氏と大阪維新の会の今井豊幹事長(大阪府議)が力をあわせてやってきた。それを打破するには、むりやり丸山氏から議員バッヂを引きちぎろうとするのでは不可能。むしろ有権者に呆れ果てさせることが必要だ」(自民党大阪府連関係者)

 19区を獲得できるなら、自民党にとって挽回のチャンスになる。そのためにも問題が風化する前に衆議院選が行われなくてはならない。

野党は出遅れ

 永田町ではほぼ早期解散説が定説となりつつある。野党はこれに抵抗するが、それは準備が整っていないからだ。そして野党が抵抗すればするほど、早期解散説が固まっていく。

「(内閣不信任決議案を出す)野党第一党の党首があたかも解散権を握るような事態は不可思議だ」

 立憲民主党の福山哲郎幹事長は17日、菅長官の発言を受けて記者団に対してこう述べた。だが内閣をけん制すべき手段ですら解散の口実を与えることになっているという現実を、野党は直視すべきではないだろうか。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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