阪神タイガース・陽川選手と島本投手 姫路の宝恵駕籠行列で誓った今季の活躍
きのう14日から3日間、兵庫県姫路市の姫路播磨国総社 射楯兵主(いたてひょうず)神社で『初ゑびす祭』が行われ、商売繁盛や家内安全を願う多くの参拝客が訪れています。その中でも阪神タイガースから毎年2選手が参加する宝恵駕籠(ほえかご)行列は、阪神淡路大震災の翌年から始まって23回目を迎えた、大変にぎやかな行事です。ことしは14日の開催で、阪神からは入団5年目の陽川尚将選手(26)と8年目の島本浩也投手(24)が初参加。太鼓を叩きながら笑顔いっぱいの一日となりました。
午前10時から神殿でご祈祷、10時半から境内の特設ステージにおいて鏡開きをし、11時前に行列が神社を出発。昨年は雪が降る中で行われたそうですが、ことしは前日までの強烈な寒波が少し緩み、過ごしやすくてホッとしました。出発前に、まず陽川選手と島本投手は太鼓を積んだ屋台でバチを手に写真撮影。続いて宝船の屋台へ移って“宝”の帆を背にポーズ。宝船は高さがあるので遠くの方々からも声がかかり、手を振って応えます。そして再び最初の屋台に戻って行列がスタート。
私は久々の取材で、まだ姫路城の改修工事中に行ったのが最後だったので4年ぶりでしょうか。その頃より隊列が長くなったような気もします。駕籠に乗る福娘や、姫路のご当地アイドルグループのメンバー、姫路市を中心に活動する女子サッカー・ASハリマアルビオンの試合でパフォーマンスを披露している可愛い子どもたちなどを撮影しながら、一緒に歩く方も多かったですね。鐘や太鼓に合わせた「ほえかご、ホイ!」という掛け声もにぎやかに姫路市の商店街を練り歩きました。
商店街では多くの方々が行列を待っていて、陽川選手と島本選手に向けた「今年は1軍や!」「頑張れ!」という声援や、お昼の休憩場所で「この駕籠に乗った選手は出世するんやで」との激励。2人はしっかり受け止めたことでしょう。
それでは昼食後、午後の行列開始前に行われた囲み取材のコメントをご紹介します。
キャンプ初日からアピールするために
最初に陽川選手です。こういうイベントの経験があるかどうか尋ねたところ「初めてです。経験したことないので全部が初めて。あんな乗り物で、太鼓を叩きながら町を進んで行くってのは…(笑)。なかなかないんで、まあちょっと違和感ありましたけど」と言いながら、終始ニコニコと非常に楽しげでしたよ。
長時間、太鼓を叩き続けるのも人生初?「いや、太鼓(自体)もそんなに叩いたことないですから」。でもリズムよく叩いていたのでは?「一定のリズムなんで(笑)。変則?変則はないですね」。バッティングに生かせるかも。「それはわからないですねえ」。そうですよねえ。
さて、まもなく春季キャンプです。ことしは沖縄か?安芸か?「まだどっちかわからないですけど、立場上アピールしていくってのは変わらないんで。そういう部分では、しっかり初日からアピールできるよう準備をしたいです」。沖縄になったら、紅白戦でロサリオ選手も出るとか。同じ長距離打者としては気になるところですね。「意識せず、自分のやるべきことをやって、自分の力をしっかり出しきってアピールしていきたい」
とはいえ、やはり競争になるかと。「意識せずにいくってのは、なかなか難しいと思うので…。そこは平常心でプレーに集中していきたいと思います」。アピールするのは長打?「それも一つですし、全部。最低限のことはしっかり、まずは自分の持ち味を出すってことを一番に考えてやりたい」。秋季キャンプでもすごくアピールできたと思いますが、オフの自主トレで何かこだわって強化した?「キャンプはああいう形で結果も出たので、キャンプでやってきたことを和歌山でも意識してやりました」
これだ、と感じた部分は?「これや!っていう感覚はまだまだですけど、キャンプでやってきたことが間違いではないと思っているので、今後も継続してやっていきたいです」。自分の中で得たものがある?「今までだと、バッティング練習から遠くに飛ばすことを考えながらやっていたんですけど、キャンプではバッティング練習で遠くに飛ばすよりも、今やっている形を意識して、打球うんぬんではなく形をしっかり打つっていうのが大事だと感じましたね」
自主トレでもそこを?「そうですね。それを第一に考えて」。形というのはフォームとか?「バットの出し方とか。そういった部分です」。もし沖縄キャンプメンバーだと2年ぶり。去年が安芸スタートだったから、ことしこそはの思いも強い?「もちろん、その気持ちはありますけど、まずはしっかり準備して、出遅れないようにやっていきたいです」
思い出に残る“河川敷トレ”の2日間
変わって島本浩也投手。午後の出発時刻が迫っていたため、行列についての感想などは省略となってしまいました。早速トレーニングの話です。年末は?「鳴尾浜に最後までいました。閉まってからはグラウンドを借りて。桑原さんと」。桑原謙太朗投手と?西宮市内のグラウンド?「はい」。誰かに紹介してもらって?「いえ、普通に電話して(笑)。2時間いくらと」。電話で予約を取ったんですか。そこでやったのは2人?「小宮山さんと横山と、4人です」
そのあとは?「これが12月27日で、28日と29日は…河川敷でやりました」。か、河川敷?武庫川の?「はい。28日からはグラウンドが全部閉まっていて借りられなかった。年末の掃除をするとかで。でもクワさんが“キャッチボールしたいな~”って。僕もやりたかったので、クワさんが場所を探してくれました」
鳴尾浜並みの練習はできた?「はい。できました!河川敷の、少年野球の中学生が練習していた隣に、小さい内野だけみたいなグラウンドがあったので。そこでアップして、キャッチボールして、ランニングも川沿いを走りました。終わってからウエートは近くのとこへ」。なるほど、河川敷だけにランニングも川沿いですね。ちなみに少年たちの反応は?「バレなかったです(笑)。隣といっても、けっこう離れていたので」
いつもの年末は鳴尾浜が閉まったら地元に帰っていましたよね?「おととしもクワさんと一緒にやったんですよ。ウエートだけ。今回はキャッチボールをしたいということで、じゃあ探しましょうと。でも記事に出ていたように“公園”ではないですよ(笑)」。昨年末の新聞に『桑原、公園で自主トレ?』とか『桑原、公園デビュー!』と書かれたんですよね。鳴尾浜の寮が閉まったあと練習場所を探すと桑原投手が語ったために。でもさすがに公園ではなかったみたいです。
とはいっても、近隣のグラウンドを電話で探すとか河川敷とか、なかなかない経験ですよねえ。「クワさんが『こういうのもええやろ?』って(笑)。こんなん滅多にないなあと言いながらやりました」。忘れられないオフになったかもしれません。
大活躍でも変わらない桑原先輩
ところで、昨シーズン大活躍した桑原投手ですが、一緒に年末のトレーニングをしてみて、おととしの桑原さんと去年の桑原さんはどこか違っていた?と質問したら「まったく一緒でした!」と即答。続けて「そういうところが、好きっていうか」と島本投手。あ~いいですねえ、思った通りの返事です。
いろいろ聞いた?「聞いたりはしなかったですけど、こうした方がいいよっていうのは、結構クワさんのほうから言ってくれました」。それは心構えみたいなこと?「そうですね、この時期の。クワさんもどっちかというと若手のトレーニングみたいな感じで、ガンガン追い込んだりランニング量も結構すごかったので、『こういう時期はしっかりトレーニングして、キャンプ前にちょっと抜いて』というトレーニングの配分をいろいろ教わりました」
去年あれだけ活躍した投手だから、この時期は休んでもいいくらいなのにね。「でも、おととしより練習量は多かったです!全然違いました。もともと練習する人だと思うんですけど、去年の年末とか今まで以上に練習量が多かったので。そうやって変わらず、活躍してもそれ以上にするっていうところは、やっぱりすごいなと思いますし、自分もそういう選手になりたいです」。活躍しても桑原さんみたいに練習する?「もっと、もっと、っていう気持ちで。はい」
さて、ことしも沖縄キャンプなら3年連続になります。やはり沖縄から始めたい?「そうですね。アピールできる一番の場所だと思うので。まあでも、どっちかわからないですけど、やることは一緒です」。昨季はファームで好調を維持しながら大事なところでケガをしてしましました。「シーズン中にケガをしたことが一番悔しかった。このオフ、今はとりあえず練習量を多くしてケガをしないような体を作っていきたい。ランニングの量とかも前のオフに比べて、全然違います」
昨年の心情を振り返って「去年は気持ち的にちょっと前向きじゃなかったから…。そういう“気持ち”も大事だったなと。(前向きな)気持ちを持つことによって、ケガとかも変わってくると思います」と締めくくりました。年明けは3日に地元から戻ってきて、6日から甲子園でトレーニング中の島本投手です。
縁起のいい行事となりますように
午後の出発前、2人がそれぞれ駕籠に乗って写真撮影を行いました。福娘より重いとはいえ担ぎ手の方々は力持ちです。陽川選手は少し控えめながら駕籠を揺られてニコニコ。そして隣の駕籠に乗った島本投手に目をやり、左右に大きく揺られて驚いている様子を見て今度は爆笑でした!島本投手もすぐ笑顔になって揺られ、撮影終了です。
島本投手に、怖かった?と聞いたら「面白かったです!」という答え。陽川選手の感想は、写真の表情で十分おわかりいただけると思います。この駕籠には福娘やゲストの方々など女性が何人か乗っていますが、数年前までは阪神の選手たちも実際に乗って行列していました。計5度の最多出場を記録した清水選手は、揺られてお尻をさすっていたのを覚えています。安定させるために腹筋が鍛えられたかもしれません。今は撮影時だけなのでトレーニングには物足りない?
宝恵駕籠行列は再び商店街を通り、陽川選手と島本投手は“福銭”の入った赤いポチ袋を屋台から手渡していました。行列は最終的に神社へ戻って完了となります。2人とも詰めかけた皆さまの声援に応え、出世行事としてこれが次の選手へ受け継がれるような活躍を期待したいですね。まずは揃って沖縄キャンプからスタート!といきましょう。
<掲載写真は筆者撮影>