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世帯年収と食品の摂取量の相関関係をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 豪華な食事をするのにはお金が必要不可欠だが。(写真:アフロ)

食事を確保するには対価となるお金が必要不可欠。当然収入が潤沢なほど選択肢は増え、より贅沢な食生活を楽しめる。それでは世帯年収によって食事の内容にはどこまで違いが生じるのだろうか。その相関関係を厚生労働省が2020年1月に発表した定期調査「国民健康・栄養調査」(※)の最新版となる2018年分における概要報告書などの公開値から確認する。

次に示すのは男女に区分した上で、世帯年収を200万円未満・200万円以上400万円未満・400万円以上600万円未満・600万円以上にさらに区分し、主要な食品群別や栄養素別に1日あたりの摂取量(重量)を尋ねた上で、200万円未満の人の値を基準値(1.00)とした場合に、他の世帯年収に該当する人の相対的分量を示したもの。単純な相対量に加え、基準値と比べてどれだけ多いのかに関する増減度合いを%表記したグラフも併記した。

なお今件の世帯年収別区分では年齢階層と世帯員数による多変量解析を行い、各種調整をしてある。つまりそれぞれの世帯年収で、年齢階層や世帯構成人数は同率ずつ存在している状況になっている。世帯年収200万円未満の区分内では高齢者の比率が大きいため摂取量が少なくなるといったアンバランスな状態の統計値ではない。

まずは男性。

↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、男性、世帯年収200万円未満を1.00とした時の値、世帯年収別)(2018年)
↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、男性、世帯年収200万円未満を1.00とした時の値、世帯年収別)(2018年)
↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、男性、世帯年収200万円未満を基準とした時の増減率、世帯年収別)(2018年)
↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、男性、世帯年収200万円未満を基準とした時の増減率、世帯年収別)(2018年)

おおよそ世帯年収が高い方が摂取量は多く、潤沢な食生活を過ごしていることが分かる。特に種実類(ナッツなど)やきのこ類、乳類で量が増えている。他方、穀物やいも類など一部の食品では摂取量が減っている層があり、高世帯年収層では主食の量が減り、その分惣菜などの量が増えていることもうかがえる。要は低世帯年収ではご飯などの主食に重点が置かれているが、世帯年収が高い世帯ではおかずにまで余裕が出てくる次第。

興味深いのは砂糖・甘味料類の分野。200万円~400万円未満と600万円以上の世帯では減っている。今件の値はあくまでも重量であることから、後者に関しては高級品に手を伸ばしているのかもしれない。

女性も男性と基本的には変わらない。種実類で極端な差が出ていない分、見やすい形となっている。

↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、女性、世帯年収200万円未満を1.00とした時の値、世帯年収別)(2018年)
↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、女性、世帯年収200万円未満を1.00とした時の値、世帯年収別)(2018年)
↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、女性、世帯年収200万円未満を基準とした時の増減率、世帯年収別)(2018年)
↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、女性、世帯年収200万円未満を基準とした時の増減率、世帯年収別)(2018年)

男性では種実類の世帯年収間での差が大きかったが、女性ではそのような大きな差異は見られない。種実類ではむしろ基準値よりも低い層がある。また基準値との差異が上下0.3以内に収まっているのも印象的。

世帯年収が上になると大きめの値が出る食品で目立つのは砂糖・甘味料類、豆類、果実類、乳類。砂糖・甘味料類はお菓子など、豆類、果実類、乳類は健康的なイメージの強い食品。女性らしさがうかがえる動きではある。逆に穀類が減るのも興味深い。

今件は相関関係の結果を記したものであり、因果関係まで証明できる値ではない。現状における傾向を示したまでの話。とはいえ世帯年収が上の人ほど主食摂取量が減り、副菜やし好品を多く採る傾向は確認できる。かねてから「収入が厳しいと、どうしても主食系のもので満腹感を充足させがちになる」との話を見聞きするが、それがある程度正しいことが裏付けられたとも評価できる。

この傾向が各属性の健康状態や行動性向といかなる関係があるのかはまた別の話だが、検証の際には大いに役立つ値には違いない。

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※国民健康・栄養調査

健康増進法に基づき、国民の身体の状況、栄養素など摂取量および生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的とした調査。2018年調査分における調査時期は2018年11月中、調査実施世帯数は3268世帯で、調査方法は調査票方式。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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