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都道府県別の野菜摂取量の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 野菜の摂取量は地域差があるのだろうか(写真:アフロ)

子供が苦手な食べ物としてよく挙げられるのが野菜。「野菜を食べないと大きくなれませんよ」と叱られた経験を持つ人も多いはず。その野菜を食べる量は地域によって違いはあるのだろうか。日本国内の各都道府県別に見た場合について、厚生労働省から2017年9月に発表された定期調査「国民健康・栄養調査」(※)の最新版となる2016年分における概要報告書の公開値をもとに確認する。

次に示すのは成人男女それぞれにおける、一日あたりの平均野菜摂取量。例えば北海道なら男性は276、女性は280とあるので、北海道の成人男性は平均で1日276グラム、女性は280グラムの野菜を食べていることになる。各地域別の年齢階層構成によるぶれを無くすため、年齢調整が施された上での値。ちなみに熊本県の値が空白なのは、2016年4月の熊本地震の影響により、熊本県では調査が行われずデータがないため。

↑ 野菜摂取量の平均値(男性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)
↑ 野菜摂取量の平均値(男性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)
↑ 野菜摂取量の平均値(女性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)
↑ 野菜摂取量の平均値(女性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)

全国平均では男性284グラム、女性270グラム。直上に挙げた事例の北海道はたまたま女性の方が多かったが、同じように女性が男性よりも野菜を多く摂る都道府県は他に千葉県、東京都、神奈川県、愛知県のみ。特に神奈川県では男性264グラム、女性304グラムとなり、女性の方が40グラムも摂取量が多い。それ以外の地域では男性の方が摂取量が多く、女性の方が少食の傾向が現れている。

またざっと見でも男性も女性も長野県や福島県の突出ぶりが目立つと共に、西日本、特に近畿地方がやや少なめなように見える。

上記グラフは各都道府県別の現状を記したものだが、これでは状況の把握が難しい。そこで上位・下位それぞれ10位を抽出し、それぞれをグラフにしたのが次の図。まずは男性だが、もっとも野菜を食べているのは長野県、野菜を食べる量が一番少ないのは愛知県との結果が出ている。なお比較がしやすいよう、上位・下位のグラフにおける縦軸の区切りは同一にしている。

↑ 野菜摂取量の平均値(男性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(上位10位)
↑ 野菜摂取量の平均値(男性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(上位10位)
↑ 野菜摂取量の平均値(男性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(下位10位)
↑ 野菜摂取量の平均値(男性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(下位10位)

やはり長野県と福島県が群を抜いて多い。長野県ではセロリやパセリ、レタスなどの生産量≒出荷量が多いことで知られているが、それが影響しているのだろう。それ以外にも上位県を見ると、東日本地域が上位陣では多い。

他方野菜の少量摂取ベスト10では、西日本地域の県が多く名前を連ねている。ぱっと見で確認した際の「東日本が多く、西日本が少なそうに見える」はあながち的外れのものでも無いようだ。他方、愛知県が他県と比べて一段階落ちる形で摂取量が少ないのは気になるところ。今調査項目は前回では2012年に実施されたが、その際には男女共に愛知県が最下位だったことから、【野菜摂取量、まさかの全国最下位 愛知県民に諸説あり(日経スタイル)】などにもあるように官民あげての対策が成されていたが、少なくとも男性では状況の改善には至らなかったようだ。

続いて女性陣。男性陣と比較できるよう、縦軸はすべて統一している。

↑ 野菜摂取量の平均値(女性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(上位10位)
↑ 野菜摂取量の平均値(女性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(上位10位)
↑ 野菜摂取量の平均値(女性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(下位10位)
↑ 野菜摂取量の平均値(女性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(下位10位)

多少順位の違いはあれど、大勢としては男性と変わらず、そして量がいくぶん少なくなっている。女性もまた上位では長野県と福島県が群を抜いているが、下位では愛知県よりもさらに和歌山県や大阪府が少ない値を計上している。大阪府は男性でも愛知県に次ぐ少ない値で、男女合計による平均値ではむしろ大阪府の方が少ない可能性もある(現時点では男女合算の平均値は公開されていないため、判断は不可能)。

今件各値はグラフ文中にある通り、年齢調整を施した上でのものなので、都道府県によって年齢階層構成比が異なることによる偏り、数字のぶれはない。大よそ東日本では多く、西日本では少ない、長野県や福島県などでは野菜が多く食べられ、愛知県や大阪府では少ないなど、興味深い動きも確認されている。ただし今件はあくまでも野菜類の食品の総重量のため、少ない地域では軽量で体積が大きい種類の野菜が多食されている可能性も否定できない。

野菜の摂取が直接健康にプラスマイナスの影響を及ぼす話はあまり聞かないが(プラスの要因の一要素になることは知られている)、都道府県別の健康状態を精査する際、今件データと照らし合わせると面白い可能性を見いだせるかもしれない。

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※国民健康・栄養調査

健康増進法に基づき、国民の身体の状況、栄養素など摂取量及び生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的とするもの。直近年分の調査時期は2016年10月から11月。調査実施世帯数は10745世帯で、調査方法は調査票方式。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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