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Jリーグ上半期の”新加入選手”ベスト11(J1編)

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

J1リーグはすでに後半戦に突入し、現在はプレシーズンの時期にある欧州クラブとの国際親善試合を含む、サマーブレイクに入っています。

ここまで新加入ながら、前半戦で強烈なインパクトを放った選手を筆者の視点で、ベスト11にしてみました。なおルーキーは対象外としていますが、また別の形で取り上げたいと思います。

GKは川島永嗣(ジュビロ磐田)を選びました。4度のW杯を経験した大ベテランは2010年に川崎からベルギーに渡って以来のJリーグとなりますが「日本に帰ってきたというよりは磐田にやってきた」と語り、チャレンジャーとしての気持ちを大事にしながらも、要所では豊富な経験で”昇格組”の磐田を支えています。

度重なるビッグセーブはもちろん、立ち居振る舞いで頼もしさを発揮していますが、現在はふくらはぎを痛めて欠場中。2週間半のブレイクを経て、早期復帰できるかが磐田の命運にもかかってきそうですが、スタッド・ランス戦のピッチに立った大卒ルーキーの杉本光希も認めるように、GKチームでの影響力も大きいようです。

右サイドバックは石原広教(浦和レッズ)です。アカデミー時代を過ごした湘南から加入、開幕時はサブでしたが、酒井宏樹の怪我で出場チャンスを得ると、闘志あふれる守備と精力的な上下動で、一気に浦和サポーターのハートを掴みました。酒井がオークランドFCに移籍、押しも押されぬ主力として浦和を引っ張るとともに、日本代表を目指すことを公言しています。

センターバックは新加入選手の活躍が目立ちますが、中谷進之介(ガンバ大阪)を外すことはできないでしょう。中谷は圧倒的な統率力で攻撃時のリスクを管理し、ハイプレスとリトリートを使い分けるディフェンスリーダーに君臨し、ポゼッションをベースとしたチームに守備の安定感をもたらしました。横浜F・マリノスからレンタルバックしてきたGK一森純とともに、キャプテンの宇佐美貴史を支える存在でもあります。筆者の評価としては新加入選手のMVPです。

中谷の”相棒”にチョイスしたドレシェヴィッチ(FC町田ゼルビア)は首位を走る町田にあって、空中戦と地上戦の両方で獅子奮迅の働きを見せています。また新外国人ながら周囲との連携意識も高く、90分の中で目立つミスがほとんどないというのも、守護神の谷晃生、経験豊富な昌子源とともに、接戦に強い町田の後支えになっています。

林幸多郎(FC町田ゼルビア)は粘り強いサイドラインの守備、そして黒田剛監督が率いる町田の代名詞ともなっているロングスローで、チームの躍進を支えています。横浜FCからの加入ですが、元々は鳥栖ユース時代から師事する金明輝コーチの”秘蔵っ子”で、セカンドキャリアで弁護士を目指す、文武両道の選手でもありますが、オンの激しさとオフの穏やかさのギャップが魅力でもあります。

ボランチは田中駿汰(セレッソ大阪)鈴木徳真(ガンバ大阪)というコンビに。札幌で3バックの一角だった田中ですが、新天地で4ー3ー3のアンカーを担い、ボール奪取や展開力など、攻守両面で抜群の存在感を放っています。鈴木は4ー2ー3ー1のボランチとして、ダニエル・ポヤトス監督の戦術を早期に理解し、宇佐美を筆頭とした攻撃を中盤から支えながら守備のフィルターとしても高機能ぶりを発揮。派手さがあるタイプではなく、あまりハイライトにも映りませんが90分を観れば、ガンバのサポーターでなくとも、その貢献ぶりがわかるはずです。

サイドアタッカーは右にルーカス・フェルナンデス(セレッソ大阪)、左にウェルトン(ガンバ大阪)を選びましたが、この両翼に関しては無条件に、J1のベスト11でもおかしくない活躍を見せています。ルーカスは田中と同じく、札幌からセレッソに加入しましたが、瞬く間にフィット。ここまで7アシストで、得点ランキングのトップを走るレオ・セアラに多くのゴールチャンスを提供しています。

ウェルトンは沖縄キャンプ後、開幕が迫った時期に加入。圧巻の突破力が序盤戦から目立っていましたが、徐々に、得点に直結するプレーも増えてきました。また攻撃面で大きな役割を担いながら、守備でのひた向きなハードワークも素晴らしく、Jリーグで長く活躍する外国人アタッカーを象徴するような優良選手ぶりを見せています。今シーズンの残り試合はもちろん、もしACL出場の権利を獲得できれば、アジアの舞台でも楽しみなタレントです。

2トップはここまでリーグ戦で11得点を記録しているマルセロ・ヒアン(サガン鳥栖)大橋祐紀(サンフレッチェ広島)です。マルセロは横浜FCから加入した、来日3年目となる22歳の長身FW。鳥栖が前半戦から下位に苦しむ中でも、コンスタントに得点を重ねてきました。また競り合いに強く、後ろからパスを繋ぐスタイルの鳥栖にあって、ロングボールを収めて前を向けるマルセロの存在は頼みの綱となっています。快速アタッカーの横山歩夢からの高速クロスにマルセロが飛び込んで合わせる形は迫力満点で、分かっていても止められない相手ディフェンスの脅威です。

湘南から鳴物入りで加入した大橋ですが、ミヒャエル・スキッベ監督が求める高強度のタスクを当たり前のようにこなしながら、11得点3アシストという目に見える結果はもちろん、多くの得点に絡む活躍を見せてきました。しかし、半年間で海外移籍のためにチームを離れることに。スポーツ紙の報道などではイングランドのブラックバーンと伝えられます。アンダーカテゴリーから代表に縁のなかった大卒選手で、本日28歳の誕生日を迎えたストライカーは欧州で成功し、日の丸を付けた姿を古巣の湘南や広島のサポーターに見せることができるか。注目していきたいところです。

そのほか、パリ五輪代表に選ばれた荒木遼太郎(FC東京)やインサイドハーフで新境地を開拓している宮代大聖(ヴィッセル神戸)、力強いポストプレーで攻撃を引っ張るマテウス・ペイショット(ジュビロ磐田)、躍動的なフィニッシュでゴールを量産するルキアン(湘南ベルマーレ)、試合を重ねるごとに、新天地の最終ラインで存在感を増している三國ケネディエブス(名古屋グランパス)、上記で名前を出しましたが、日本代表に復帰したGK谷晃生(FC町田ゼルビア)など。

新加入選手の活躍が目立っていますが、夏場の戦いから秋の終盤戦に入る残りシーズンで、どんな選手が活躍を見せるのか。夏の移籍選手を含めて注目していきたいと思います。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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