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ウーデゴールのアーセナル移籍は正しかったのか?「神童」の参考になるデ・ブライネのケースとエジルの再来

森田泰史スポーツライター
アーセナルに移籍したウーデゴール(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

彼は、再び新天地を求めることになった。

今冬の移籍市場で、マルティン・ウーデゴールがレアル・マドリーからアーセナルに移籍した。半年間のレンタル、つまり今季終了時に保有権を有するマドリーに復帰する前提での契約だ。

マドリーでプレーしていたウーデゴール
マドリーでプレーしていたウーデゴール写真:ムツ・カワモリ/アフロ

ウーデゴールは16歳でマドリーに加入した。「神童」と呼ばれ、将来を嘱望されていた。フィテッセ、ヘーレーンフェーン、レアル・ソシエダへのレンタルを経て、この夏に待望のマドリー復帰を果たした。

だがジネディーヌ・ジダン監督はウーデゴールを重宝しなかった。今季のウーデゴールのマドリーでの出場時間は367分だった。カゼミーロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチへの指揮官の信頼は揺るがなかった。

若くしてビッグクラブに辿り着きながら、そこで成功できないケースはある。その筆頭はケヴィン・デ・ブライネだろう。いまや世界最高のMFだと称されるデ・ブライネだが、初めて移籍したビッグクラブでは輝きを放てなかった。

シティのデ・ブライネ
シティのデ・ブライネ写真:ロイター/アフロ

ゲンクの下部組織で育ったデ・ブライネは、2008-09シーズンに18歳でトップデビューを飾った。2009-10シーズン(公式戦35試合出場)、2010-11シーズン(32試合出場)とレギュラーポジションを確保したデ・ブライネに2012年1月の移籍市場でチェルシーが触手を伸ばす。

移籍金700万ポンド(800万ユーロ/約10億円)でデ・ブライネを獲得したチェルシーだが、彼を育成する余裕はなかった。ゲンク、ブレーメンへのレンタルを経て2013年夏にチェルシーに復帰するも、ジョゼ・モウリーニョ当時監督は2013-14シーズンにチャンピオンズリーグのブカレスト戦前にデ・ブライネについて聞かれ、「質問はいつも試合に出ない選手に関してだ。彼は私を納得させられなかった。ここはブレーメンではない」と言い放っている。

しかし才能が錆び付いたわけではなかった。2014年1月にヴォルフスブルクが移籍金2200万ユーロ(約28億円)でデ・ブライネを獲得すると、そこでブレイクした。そして、2015年夏に移籍金7500万ユーロ(約96億円)でマンチェスター・シティが彼を確保した。

なお、チェルシーでのデ・ブライネの出場時間は425分だった。

アーセナルで伝説的なプレーを見せたエジル
アーセナルで伝説的なプレーを見せたエジル写真:ロイター/アフロ

アーセナル移籍後、ウーデゴールはプレミアリーグで9試合に出場している。

「エジルが最後の5年間で見せた以上のプレーを、ウーデゴールは見せてくれた。真面目なタレントで、労働倫理と素晴らしいメンタリティーを備えている。アーセナルは彼を完全移籍で獲得するべきだ」

イギリスのジャーナリスト、ピアーズ・モーガンはそう語った。

ウーデゴールが比較されたメスト・エジルは2013年夏にマドリーからアーセナルに移籍した。奇しくも、プレーメーカーの2人はマドリーで居場所を見つけられなかった。エジルはアーセナルに在籍した7シーズン半で252試合に出場。8個のタイトルを獲得している。

ウーデゴールとアルテタ監督
ウーデゴールとアルテタ監督写真:代表撮影/ロイター/アフロ

一方、アルテタ監督はウーデゴールについて「プレーに継続性を与えてくれる。それはチームの助けになる。非常に賢い選手で、巧みにスペースを見つけてくれる。相手選手を引き付けて味方を生かしてくれる。それに加えて、我々は彼にゴール前に顔を出して得点することを要求している」と語っている。

「多くの人がウーデゴールのプレーに驚いているだろう。彼は初日から我々のチームにフィットした。彼にはまだ改善の余地がある。私はもっとゴールを決められる選手だと睨んでいる。だからそれを求めていく」

「非常に早く適応してくれた。コミットメント、振る舞い、労働...。すべてが素晴らしい。良い時期と悪い時期があったかもしれない。だが総合的に見て、私はウーデゴールに満足している」

ウーデゴールは今季終了時までのレンタルでアーセナルに加入した。買い取りオプションは付けられていない。マドリーとの契約は2023年夏まで残されている。デ・ブライネのように、あるいはエジルのようになるのかーー。「神童」は自らの道を行く。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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