ひとり旅に二の足を踏む人に読んでほしい。「ソロ温泉をする人は誰よりも旅が好き」という紛れもない事実
ひとり旅やソロ温泉の世界へと一歩を踏み出す際、多くの人がぶちあたる心配事がある。
「ひとりで温泉に行っても何をしたらいいのかわからない」という漠然とした不安だ。これに対する答えはシンプルだ。
何もしなくていい。温泉に入るだけでいい。
「何かをしなくてはいけない」という先入観があるから、面倒くさく感じ、あきらめてしまう。温泉旅なのだから、湯船につかって帰ってくればいいのだ。ゆっくり温泉に入って心身を休めることができれば、それでソロ温泉は成立しているのだから。
「せっかくの温泉旅だからいろいろ楽しみたい」という思いがどうしても消えないなら、今はあなたの心がソロ温泉を求めていないのかもしれない。
それなら、ソロ温泉ではなく、家族や友人を誘って温泉に出かければいい。旅のスタイルに優劣はない。ソロ温泉は、あくまでも旅のスタイルのひとつにすぎない。あまりむずかしく考えないほうがいいだろう。
「ひとり旅」冷遇の時代もあった
もうひとつのよくある不安は、「ひとりで泊まれる宿があるのか?」という問題である。
かつては「ひとり旅は宿に歓迎されない」という時代があった。特に団体旅行が盛んに行われていた昭和の時代は冷遇されたようだ。
簡単な話である。宿の立場からいえば、ひとり客を受け入れるよりも、団体客やグループ客を受け入れたほうが儲かるからだ。
同じ10畳の部屋であれば、1人客を入れるよりも、家族連れ4人客を入れたほうが利益は大きい。ある程度、稼働率が高い宿であれば、1人客を無視したほうが、都合がよかったのだ。
したがって、ひとり客を受け入れてくれるのは、自然と家族経営の小さな宿や稼働率の低い人気のない宿に絞られてしまったのである。
「ひとり泊」が身近な存在に
だが、今ではひとり旅を受け入れてくれる温泉宿は格段に増えた。人気の温泉旅館も時期さえ選べば予約できるところも多い。
今では宿の予約サイト(OTA:オンライン・トラベル・エージェント)で検索すれば、ひとりでも予約できる宿を気軽に見つけることができる。
「ひとり泊」で検索すると、けっこうな数のプランが表示される。2人泊で検索したときと比べれば2分の1~3分の2くらいに選択肢は狭まるが、お眼鏡にかなう宿が見つからないことはまずないだろう。
さらに、コロナ禍を経て、ひとり旅の選択肢は増えつつある。移動もままならない世の中となり、旅館をはじめとした観光業界が苦境に立たされたことで、ひとり客が注目されるようになった。
また、コロナ禍ではグループでの旅行はリスクを伴った。友人同士やグループで行動することは、それ自体が感染の確率を上げることにつながる。それに比べて、基本的に会話をすることなく、単独で過ごす旅人は感染のリスクは低い。
つまり、ここ数年はひとり旅が市民権を得るプロセスでもあった。こうした傾向は、日常を取り戻しつつあるこれからも続くと考えられる。ひとり旅は、特異なものではなく、「ニューノーマル」になりつつあるのだ。
ひとり旅をする人は「旅のインフルエンサー」
いずれにせよ、ひとり客を受け入れてくれる宿が増えるのはよろこばしいことだ。団体旅行が下火になり、個人旅行がポピュラーになったという時代背景もあるが、ひとり旅に一定のニーズがあることに宿も気づいているはずだ。
ひとり旅をする人は、誰よりも旅が好きな人である。
ひとりでわざわざ時間とお金をかけて温泉地に足を運ぶくらいだから、旅が嫌いなわけがない。
そういう旅好きは、全国を旅してまわる。気に入ればリピートし、人にも薦めるだろう。今風に言うと、旅のインフルエンサーとなる。
ソロ温泉を続ける人は、温泉と旅をこよなく愛する人である。
胸を張って、ひとり旅に出かけよう。