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つみたてNISAなら何を買っても100%儲かる! まさに入れ食い状況になった3つの理由

山崎俊輔フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP
つみたてNISAなら「何を買っても儲かる」状態となっている。(写真:つのだよしお/アフロ)

つみたてNISAは100%儲かる?

日本経済新聞のとある記事が投資関係者やブロガーのあいだで話題となっています。それは「つみたてNISAの対象商品がすべて、利益が出ている」というものです。

日本経済新聞(有料記事)

9/2 つみたてNISA対象投信、すべてが含み益に

QUICK資産運用研究所 西田玲子氏の記事。2018年1月の制度スタート時点から積立投資を継続していたとした場合、対象ファンドのすべてがプラスの運用状況にあるとのこと。

日本経済新聞(有料記事)

8/25 つみたてNISA投信、投資家の含み益が平均20%超え

QUICK資産運用研究所 高瀬浩氏の記事。つみたてNISAの保有者平均リターンを試算したところ、20%以上の収益を確保しているとのこと。

どちらも一定の条件の下の試算ですが、あえて乱暴な言葉でまとめてみればつみたてNISAで投資をすれば「何を買っても儲かる」「入れ食い状態」ということです。あなたが投資のリスクを取ったとき、これほど報われる時期はないでしょう。

しかし、なぜ今、つみたてNISAが儲かりやすくなっているのか、その理由を知っておきたいところです。

つみたてNISAの購入対象は一定条件を満たした投資信託

つみたてNISAは、年間40万円の範囲で投資が行える特別な証券投資口座です。最大で投資をした年から数えて20年目の年末まで投資を続けることができ、その間で売却した利益はどれくらい儲かっても非課税です。

先ほどの記事では約140万円の積立が約210万円まで増えた商品もありますが、この差額の70万円を売却して利益確定したとき、本来なら20.315%の税金が引かれます。約14万円も税金を払うことになるわけですが、NISA口座なら、全額を自分のものとすることができるわけです。これは魅力的です。

また、つみたてNISAは投資対象商品について金融庁がフィルタリングルールを設けています。投資信託やETFが対象ですが、さらに「低コスト」で「継続性」のある運用を求めており、個人が運用商品を選ぶときに重要な条件が満たされたものだけが購入対象です。

例えばYahoo!ファイナンスで投資信託の検索をすると無条件だと5335本(9/10現在)あるところ、金融庁のWEBではつみたてNISA対象商品を199本としており、商品選びもぐっとラクになります(それでも多いですが)。

なお、「つみたて」の名の通り、つみたてNISAは積立購入を原則としています。多くの場合、一定額を購入する指定をしているのが一般的です(この場合、毎月の上限は3.3万円)。ボーナス月などに余枠分を増額投資することもできます。

100%儲かる理由は3つ 市場の好調と低コストと積立投資にあり

さて、今回の記事でつみたてNISAの「100%儲かる」状況が現出した理由は大きく3つあります。

1つは、低コストです。同じ運用をより低いコストで実現できることは、私たちの手取りのリターンを増やします。それこそ「年0.5%の運用益」であったとき「年0.7%の手数料」か「年0.2%の手数料」であったかは、黒字か赤字かの分岐点になります。そしてこの手数料の差は長期投資になればなるほど大きく影響してきます。すでに述べたとおり、つみたてNISAは低コスト運用ができるしくみです。

2つはやはり市場の好調です。実はニュースの段階では日経平均株価30000円より前のデータが使われていますが、それでも株価の大きな回復が「みんな儲かる」につながっています。今はさらに株価が上昇基調にありますので、「100%儲かる」状況が補強されていることになります

3つは、あまり実感しにくいのですが積立投資を続けていくことです。記事のひとつでは実際に毎月の積立購入をしたものとしてシミュレーションをしていますが、これは株価が下がったときにも中断せず、むしろ定期購入を継続することで、市場回復時の収益を高めることに寄与しています(簡単にいえば、「安いときにも買っておいた」ということ)。本来つみたてNISAが意図している稼ぎ方ですが、まさにその効果が出ているわけです。

積立投資を続けることは、ひんぱんな中途解約をしないことでもあります。「うわ、値下がりしたから損失確定して投資をあきらめよう(でもそのあと株価は回復して、売ったのはムダに終わる)」のような失敗を避けることにもなっています。

つみたてNISAは、継続することで、儲かりやすい仕組みでもあるわけです。

これからも勝ちたいなら注意をひとつ 値下がりがあっても、「長期積立分散」で続けていくこと

さて、どんな方法でも儲けが出るというつみたてNISAといっても「今、この瞬間」の話です。また、つみたてNISA制度創設以降に積立をスタートした場合には紹介した試算は当てはまりません。もちろん未来も同じ数字が保証されているわけではありません。

あなたがもし、今から始めようと鼻息荒く、つみたてNISAの口座開設申し込みをした人のであれば、ひとつアドバイスをしておこうと思います。

それは

「この先、一時的に値下がりしても気にせず、長期積立分散投資を続けること」

です。

つみたてNISAは、そもそも売買を繰り返すタイプの口座ではありません。そして、今年の40万円枠が最大20年投資継続できるといっても、どこかで売ればそこで非課税のチャンスは終了です。

となると、「長期投資」でできるだけ儲かったあとに利益確定をする必要があります。できれば20年の満期まで持つくらいを考えたいところです。ましてや値下がりしたときに売って非課税投資のチャンスをリセットする必要はありません(マイナスで売った場合、他の利益と相殺して納税額を調整する損益通算や繰越控除の対象とならない)。

だとすれば、毎月の「積立投資」については一時的に株価が下がろうとも、むしろ「長い目で見れば安く買えるチャンスかも」と考えて定期購入を継続します。20年後には今よりも株価が上がっているだろう、と思えるなら短期的な値下がりは気にしないことです。

つみたてNISAの対象商品は基本的に「分散投資」されていますが、できる限りグローバルに分散投資をしておくといいでしょう。日本の株価だけに期待せず、諸外国の経済成長の果実もあなたの資産形成に組み入れておけばいいのです(たとえ日本が伸びなくても、海外の経済が成長すれば、あなたの資産は増えることになります)。

この先、「何度も」値下がりは起きます。起きないほうがむしろ珍しいと思うくらいがいいでしょう。そのとき、相場から逃げてしまうと「みんな儲かる」つみたてNISAのチャンスからも逃げてしまうことになるのです。

チャンスが眠っている「つみたてNISA」、あなただけが乗り損なうことのないようにしてください。

フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP

フィナンシャル・ウィズダム代表。お金と幸せについてまじめに考えるファイナンシャル・プランナー。「お金の知恵」を持つことが個人を守る力になると考え、投資教育家/年金教育家として執筆・講演を行っている。日経新聞電子版にて「人生を変えるマネーハック」を好評連載中のほかPRESIDENTオンライン、東洋経済オンラインなどWEB連載は14本。近著に「『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」「共働き夫婦お金の教科書」がある。Youtube「シャープなこんにゃくチャンネル」 https://www.youtube.com/@FPyam

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