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1番打者は「19打数0安打」。それでも、チームは無傷のポストシーズン4連勝

宇根夏樹ベースボール・ライター
ホゼ・アルトゥーベ(中央)とジェレミー・ペーニャ(右)Oct 19, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ホゼ・アルトゥーベ(ヒューストン・アストロズ)は、パワーレスではないが、アベレージも残せる選手だ。シーズン打率が.275を下回ったのは、2020年(.219)だけ。シーズン打率3割台は、四捨五入すると.300となる今シーズンの.2998…を含め、6度を数える。12シーズンの通算打率は.307だ。

 だが、今年のポストシーズンで、アルトゥーベは、まだヒットを打っていない。4試合とも「1番・二塁」として出場しながら、19打数0安打に終わっている。出塁も、四球による2打席しかない。

 もちろん、4試合連続の無安打は、スランプというほどの長さではない。ただ、レギュラーシーズンと違い、ポストシーズンの各シリーズは長くない。1番打者の不振は、チームのアキレス腱になりかねない。

 けれども、実際はそうなっていない。ポストシーズンに入ってから、アストロズは黒星なしで4勝を挙げている。

 その理由としては、まず、投手陣の好投が挙げられる。ディビジョン・シリーズの第1戦に打ち込まれたジャスティン・バーランダーも、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズの第1戦は、6イニングを投げて1失点に抑えた。アストロズの失点は、バーランダーが6点を取られた最初の4イニングを除くと、計41イニングで5点しかない。このスパンの防御率は1.10となる。

 一方、1試合目は8得点ながら、2試合目以降の得点は、4点、1点、4点なので、そう多くはない。それでも、打順を変更する必要は感じられない。アルトゥーベと併殺デュオを組む、ルーキーのジェレミー・ペーニャは、2番打者として打率.350(20打数7安打)と出塁率.381を記録している。2人のテーブルセッターの一方が機能し、もう一方の不振をカバーしている格好だ。しかも、ペーニャは、ホームランが2本、二塁打は3本。最初のホームランは、ディビジョン・シリーズ第3戦の18回裏に打ち、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズを決めた。アストロズの17得点のうち、約30%の5得点は、ペーニャがホームを踏んでいる。

 メジャーリーグ1年目のペーニャは、レギュラーシーズンに22本のホームランを記録したものの、打率と出塁率は.253と.289に過ぎなかった。打率はともかく、出塁率は、ア・リーグで規定打席に達した65人のなかで5番目に低かった。ポストシーズンの4試合だけで開花と看做すことはできないが、ペーニャはプロスペクトと目されてきた。守備に関しては、昨オフに退団したカルロス・コレイア(現ミネソタ・ツインズ)の穴を十分に埋めている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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