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『君と世界が終わる日に』新作で桜井日奈子が猟奇的な役。怖がりを封印し「やりすぎくらい」のアクションも

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/S.K.

テレビドラマから配信と展開しているゾンビサバイバル・ストーリー『君と世界が終わる日に』のSeason3に、桜井日奈子が出演する。青春ラブコメのヒロインが続いた時期を経て、昨年はミュージカルやグルメドラマで役幅を広げ、今回も終末世界の生存者で猟奇的な顔を持つ役。主演舞台も控える中、25歳を前にして挑戦を続ける想いを聞いた。

ホラーは苦手でビビって叫びました(笑)

――髪が伸びましたね。

桜井 過去イチくらいの長さになってきてます。実は切りたい気分になって、どうしようか迷い中です。私的にはバッサリいきたいんですけど、「ここまで伸ばしたのに、もったいない」とか「ショートよりロングのほうがいい」と言われることも多くて「うーん……」という感じです(笑)。

――配信が始まる『君と世界が終わる日に』のSeason3に出演しています。

桜井 ゾンビ系は観るのはちょっと苦手です(笑)。今は韓国でも流行っているので、友だちと一緒に観たりはしますけど。

――YouTubeチャンネルのホラーゲームの実況企画では、絶叫してました(笑)。

桜井 うるさかったですね(笑)。あれだけビビって面白がられましたけど、ホラーはワーッと来るのが本当に苦手で。自分が出る側なら大丈夫ですけど、今回は人がいないような山や廃墟で撮ったので、場所自体がちょっと怖いと思いました。そういう場所で(主演の)竹内涼真さんが怖い話をするんです。私が苦手だと知っているのに(笑)。

観たら本当に怖そうなこともしました

――それだけ怖がりなら、怖がる演技はリアルにできそうですね。

桜井 でも、私が演じた宮木伊織は強い女性なんです。アクションもやらせていただきました。後半になると、その強さがだんだん出てきて、二面性を持っているんです。

――公式HPの人物紹介では「体力がなく、か弱そうに見え」とある一方で、日奈子さんは「猟奇的な一面がある」とコメントしていたから、どんなキャラクターなのかと思っていました。

桜井 観てもらわないと、わからないかもしれません。和田正人さんが演じる恋人と2人で登場して、最初は本当にか弱い印象だと思います。でも、予告編で一瞬映ってますけど、テーブルから相手の首に飛び乗るシーンもあって。そういうアクションにも注目してもらいたいです。

――体力がなくてか弱いだけだと、日奈子さんと正反対でしたね(笑)。

桜井 そうですね(笑)。恋人に守られている、というのを意識しました。最初は放浪してボロボロですけど、宗教団体の「光の紋章」に保護されて。その施設内で物語が進んで、みんなが真っ白な衣装を着て、異様なシーンがたくさんありました。

――その中で、伊織の猟奇的な顔がのぞくんですね。

桜井 主にアクションシーンで、そういう面が垣間見えます。冷蔵庫に相手の頭を突っ込んで、扉をガンガン開けたり閉めたりしてぶつけて、気を失わせるシーンがあるんですけど、聞いただけで怖いですよね(笑)。自分で「やりすぎたかな?」と思いましたから、観ると本当に怖くなりそうです。

アクションで勢い余ってアザができていて

――日奈子さんはもともとバスケ仕込みの運動神経もあって、アクションには意欲的でした。

桜井 自分でアクションのレッスンに通っていた時期もあって、今回の事前の練習ではそんなに回数を重ねず、「あとは現場でいけるね」とGOサインが出て嬉しかったです。でも、実際にやったら、「もっとできたな」と思いました。アクションって自分だけでやるのでなく、相手の方と息を合わせないといけなくて。もっと練習しておけば良かったです。

――予告編にある首に飛び乗るシーンは、うまくいったんですか?

桜井 机から飛んで勢い余って、ぶら下がっている照明に頭をガンとぶつけて、危うく血が出るところでした(笑)。気づかないうちに体をぶつけて、アザができていたりはしましたね。

――そうしたアクションがあるうえに、二面性も持つとなると、ハードルが高い役だったのでは?

桜井 男性を利用して生きてきたような役は、初めての挑戦でした。Season3から出てきた謎なキャラクターで、監督からも「ここはどうしようか?」と聞かれたり(笑)、みんなで悩んでいました。ずっと「難しい役だね」と言われながら。

――最終的には、伊織の人物像は定まったんですか?

桜井 「こういう子なのでは」というのは見えてきましたけど、結局もう少しのところで、わかり切らないまま撮り終わった気がします。個人的には、このあとも続く予感がちょっとしています。

自分でサブスクおばけかと思って(笑)

――『君と世界が終わる日に』の最初のテレビドラマは観ていたんですか?

桜井 知ってました。ゾンビ系は苦手ですけど、自分が出るお話もいただいていたので、チェックしていて。ウイルスに感染してゴーレムというゾンビになるのは、今のコロナ禍の世の中にちょっと通じるものがあると思いました。

――この作品に限らず、普段からドラマは観ているんですか?

桜井 そんなにたくさんは観ていません。でも、自分でサブスクおばけだと思うくらい(笑)、たくさん配信サービスに入っていて。映画とかは毎晩観ています。

――最近面白かった作品はありますか?

桜井 好きで観返したのは『天使がくれた時間』という洋画です。お金も地位もある金融会社の社長がタイムリープして、別れた過去の恋人と子どもと暮らす世界に飛んでしまって。そこでお金で買えない大事なものに気づくという。私はそういう温かいお話が好きです。ゾンビが出てきて殺されるような作品よりも(笑)。

業界の友だちはなかなかできません

――『君と世界が終わる日に』のヒロインの中条あやみさんのような、同世代の女優さんは気になったりしますか?

桜井 中条さんとは今回共演シーンはなくて、飯豊まりえちゃんとは結構ありました。バラエティでは一度ご一緒して、作品では初めてでした。Season3まで続いている作品だけあって、チームワークが良かったですね。キャストとスタッフさん全員仲が良い、温かい現場でした。竹内さんが盛り上げてくれて、本当に毎日笑っていました。

――劇中とは違って(笑)。

桜井 そうですね。ドラマの中では生きるか死ぬかの世界で戦っていると思えないくらいで、みんな撮影に入るとパッと切り替えていました。

――それで、日奈子さんは仲の良い女優さんはいるんですか?

桜井 葵わかなちゃんくらいです。まりえちゃんとも「業界でそこまで仲が良い人って、なかなかできないよね」という話になりました。私はそれで悩んでいたので、「そういうものなんだ」と気が楽になりました。

やってる最中は大変でも終わったら身になって

――日奈子さんは青春恋愛もののヒロインが続いた時期もありましたが、この1年はコメディ、ミュージカル、グルメドラマなどいろいろなジャンルに挑戦していますね。

桜井 終わってみれば「楽しかったな」という感じになりますけど、やってる最中は大変なことが圧倒的に多いです。入る前はちょっと尻込みしてしまっても、走り切ったら、ちゃんと自分の身になると、今までやってきて思えました。『君と世界が終わる日に』の配信が始まって、初めてW主演をやらせていただく舞台もあって、挑戦が続いています。

――ここ数年で壁の高さを感じた作品というと?

桜井 ミュージカルの『17 AGAIN』かな。歌が苦手で、毎日「声が出なくなったらどうしよう?」とか「音を外しちゃうかもしれない」と不安があったので、誰よりも早く稽古場に入って、アップしてました。50公演、ちゃんと全うできたのは大きかったです。

――やっぱり終わったら身になっていたと。

桜井 はい。この前、『17 AGAIN』を上演した東京建物Brillia HALLに別の舞台を観に行って、「私はここに立っていたんだ!」と思いました。舞台からの景色は見ていても、客席からの景色は見てなくて。こんなに良い会場でお芝居をして、幸せな時間を過ごしていたことに気づいて、改めて頑張って良かったと思いました。

――歌にも自信が付いて?

桜井 最初の想像すらできてない段階からは、ちょっとは付いたかもしれませんけど、周りにソニンさんとかすごい人たちがいたので、ずっと怯えていました(笑)。

――YouTubeチャンネルの歌ってみた動画では、日奈子さんも堂々としたものですけど。

桜井 舞台は全然違います。目の前にお客さんがいて、ストップが掛けられない極限の集中状態でやるので。それに比べたら、YouTubeはすごく気が楽です(笑)。

お客さんのために良いものを作りたいです

――5月には舞台『富美男と夕莉子』にW主演します。『ロミオとジュリエット』を昭和の大阪に置き換えた物語だとか。

桜井 これまで映像で主演をやらせていただいたことはありますけど、舞台では初めてで、「実力がないのに」と思われたくないから、がむしゃらにやるしかないですね。

――日奈子さんは目標設定が高い分、不安になるのでしょうか?

桜井 どうですかね? 私が女優デビューした『それいゆ』という舞台から、毎日泣いていましたけど、女優を目指してストリッパーに転落する役で、これを乗り越えたら怖いものはないと思っていたんです。でも、今も全然怖くて(笑)。コロナもある中で、せっかく足を運んでいただいたお客さんに、浮ついたものを観たとは思ってもらいたくない気持ちがあります。みんな良いものを作りたい想いは同じですけど、私はそこまで舞台のキャリアがない中で、大役をいただいて。気負っても仕方ないので、期待してもらったなら応えられるように頑張りたいと、今から思っています。

ちょっとずつ自分の芯を作れたら

――そんな中で、4月には25歳になります。

桜井 衝撃的です(笑)。デビューしてから7年……。あっという間でした。

――20代後半はどんな時期にしたいですか?

桜井 20歳の頃は「これから年齢を重ねていくのが楽しみ」と言ってましたけど、あれからもう25歳になったのに全然未熟で……。もっとちゃんとしないとダメだなと思います。

――今でも十分ちゃんとしているのでは?

桜井 自分が思い描いていた25歳にはほど遠いです。全然追い付いていません。

――どんな25歳を思い描いていたんですか?

桜井 もっと自分で考えて「これをしたい」というビジョンがはっきりあって、もう少しドシッと構えていて。でも、今の私は不安定な感じがします。

――今年の目標に「有言実行」を掲げていました。

桜井 目標を決めたからにはやり通す、強い想いを持っていないと、フワフワして流されてしまうので。自分に厳しくやっていかないと。

――ロールモデルにしている人はいるんですか?

桜井 素敵な女優さんだと思うのは、高畑充希さんです。最近、作品を追い掛けていて。お会いしたことはありませんけど、すごく自分を持ってらっしゃる感じがします。私とそこまで年が離れてないですよね?

――高畑さんは30歳ですね。

桜井 だから、私は全然ダメだと思って(笑)。自分というものがわかってなくて、周りが気になってしまうんです。でも、目の前のことをちょっとずつ乗り越えていくしかないので、その中で自分の芯を見つけたいです。

衣装協力/SEMICOUTURE(ワンピース)、jewel jg(ネックレス)
衣装協力/SEMICOUTURE(ワンピース)、jewel jg(ネックレス)

撮影/S.K.

Profile

桜井日奈子(さくらい・ひなこ)

1997年4月2日生まれ、岡山県出身。

2014年に「岡山美少女・美人コンテスト」にて美少女グランプリを受賞。2016年に舞台『それいゆ』で女優デビュー。主な出演作は、ドラマ『僕の初恋をキミに捧ぐ』、『ヤヌスの鏡』、『マイルノビッチ』、『ごほうびごはん』、映画『ママレード・ボーイ』、『ういらぶ。』、『殺さない彼と死なない彼女』など。2月25日より配信開始のドラマ『君と世界が終わる日に Season3』(Hulu)に出演。舞台『富美男と夕莉子』にW主演。5月4日~17日/紀伊國屋ホール、5月29日・30日/梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ。『沼にハマってきいてみた』(NHK Eテレ)で月曜MC。

『君と世界が終わる日に Season3』

2月25日よりHulu独占配信

公式HP

(C)HJホールディングス
(C)HJホールディングス

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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