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ミラン、ドンナルンマ騒動の責任は誰に? ライオラを選んだファンは3割強

中村大晃カルチョ・ライター
10月15日、ミラノダービーでのドンナルンマ(写真:ロイター/アフロ)

夏に続く去就騒動で、ミランのサポーターとジャンルイジ・ドンナルンマの関係は再びデリケートなものになりつつある。ファンが最も問題視するのは、ミーノ・ライオラ代理人だ。だが、選手本人にも冷たい視線が向けられている。

◆わずか半年弱で…

夏に一度はクラブからの契約延長オファーを断り、ドンナルンマが「Dollarumma」のハッシュタグや「偽ドル札事件」で激しく非難されたのは記憶に新しい。最終的に契約延長に至ったが、年俸は600万ユーロ(約8億円)にまで跳ね上がった。さらに兄アントニオも高額年俸契約を手にし、ミラニスタの心にしこりが残ったのは否めない。

そして今月12日、『コッリエレ・デッラ・セーラ』の報道で「心理的圧力」疑惑が浮上した。ドンナルンマが新契約を結んだのは、ミランに心理的圧力をかけられたからだとし、ライオラ側が契約の無効を求めたという報道だ。しかも、ドンナルンマ自身も文書で圧力を受けた旨を記していたという。

わずか半年も経たずして、夏の再現とも言える去就騒ぎが浮上し、ミラニスタはキレた。13日に行われたコッパ・イタリア5回戦のエラス・ヴェローナ戦では、試合前からドンナルンマに激しくブーイング。さらに「もう出ていけ、堪忍袋の緒は切れた」との横断幕で決別を宣言したのだ。

◆圧力騒動は否定も、OBから苦言

試合翌日、ドンナルンマはSNSで圧力は受けていないと報道を否定。ライオラも、対立するマッシミリアーノ・ミラベッリSDが元凶だと非難し、クラブは選手を守るべきと訴えた。

しかし、15日付の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、かつてミランのゴールマウスを守ったOBの中に、ドンナルンマ本人に苦言を呈す者も少なくないと伝えている。

ジョヴァンニ・ガッリは「すべてを18歳に背負わせるのは正しくない」としたうえで、「若ければ一度は間違えてもいい。だが、2度目はない。それも同じことで間違えてはいけない」と続けた。

「半年ごとにこうなるなら、残念だがあきらめよう。ミランはドンナルンマがいなくても欧州を7度制したクラブだ。金が問題ならば、彼が600万ユーロの年俸をもらうならブッフォンの年俸が2000万ユーロであるべきだし、チームの力が問題というなら、ドンナルンマもその一員だ」

マルコ・アメーリアは「一緒に続けるなら、クラブ、チーム、本人がさらに損害を受けるのを避けるべく、あらゆる食い違いを完全に解決することが必要だ。袂を分かつなら、サポーターのためにもそうなった状況を明確にするのが欠かせない」とコメント。さらに「ポジションや年齢の問題じゃない」と指摘している。

「イブラヒモビッチは20歳のときにヴェンゲル率いるアーセナルのトライアルを拒否した。ドンナルンマは注意深く、自分と自分の将来にとってベストだと考えることを選ぶべきだ。ミランのユニフォームには敬意を払うべき歴史と価値があることを忘れずにね」

エンリコ・アルベルトージに至っては、「バカげた状況だ。あれだけ稼ぐ18歳がこのように操るなどあり得ない。残りたいと明言すべきだ」と突き放した。

◆アンケートではライオラが“元凶”だが…

それでも、多くのサポーターが最大の問題とみているのがライオラであることは変わらない。22日付『コッリエレ・デッロ・スポルト』のアンケートでは、33%のファンがライオラに最も現状の責任があると回答した。

2017年12月22日付コッリエレ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年12月22日付コッリエレ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

ただ、同じ調査で、23%のサポーターがドンナルンマに最も責任があると回答している。立場を明確にしないことに批判的なファンも少なくないということだ。ちなみに、「クラブ」という回答も23%だった。

また、ヴェローナ戦でのブーイングについても、『ガゼッタ』電子版のアンケートで、1万6000人以上のユーザーのうち、76%強が「正しかった」と回答している。

◆綱渡りを続けるべきか?

ドンナルンマ本人が「心理的圧力」を否定したことで、17日のセリエAのヴェローナ戦では、敵地まで駆けつけたサポーターの一部から選手に拍手が寄せられるなど、改善の兆しも見えつつある。だが、1月はともかく、夏も残留するかどうかは確実でないのが現状だ。

何より、ガッリが言うように、半年ごとに去就騒ぎが起きては、サポーターの気持ちも続かないだろう。14日付の『ガゼッタ』で、アンドレア・スキアンキ記者はこう記している。

人々の気持ちで遊ぶのは危険なことであり、概して非生産的だ。(コッパのヴェローナ戦で)ブーイングをし、罵倒していた者の中には、彼と同年代の人間がたくさんいた。おそらくは卒業試験を終えたばかりで、きっと仕事探しに苦しまなければいけない人たちだ。結局、本当のカンピオーネは彼らであって、ドンナルンマではない

出典:12月14日ガゼッタ・デッロ・スポルト紙

ドンナルンマがミラニスタに愛されたのは、下部組織出身の稀有な才能の持ち主で、弱冠16歳にしてデビューを飾り、以降も活躍を続けているからだけではない。ドンナルンマ自身がミランを愛し、それを公にしていたからだ。現代サッカー界で重要性が失われつつある感情が、両者を深く結びつけていた。

しかし、デビューから2年が過ぎ、彼らは純粋に愛し合う関係ではなくなりつつある。かつてユニフォームのエンブレムにキスをしていたドンナルンマが、ミランのバンディエーラ(旗頭)になることはないのだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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