6歳少女を拉致・レイプ殺害した16歳少年の実名を公開 英裁判所 日本の少年法改正にも一石
裸で捨てられていた少女
[ロンドン発]英スコットランドの避暑地ビュート島では6500人弱が暮らしています。昨年7月の未明、6歳のアリーシャ・マクフェイルちゃんが自宅から拉致され、117カ所にけがを負わされて殺され、林の中に裸で捨てられるという猟奇的な事件が起きました。
同じ島で暮らすアーロン・キャンベル被告(16)の母親が自宅に設置された防犯カメラをチェックしたところ、事件があった時間帯に2度にわたって家を出入りする息子の姿が撮影されていたため、「事件を目撃しているかもしれない」と警察に届けました。
他の防犯カメラにキャンベル被告が何かを抱えて歩く様子がとらえられていたので、警察は2日後、同被告を逮捕。現場で検出されたDNAもキャンベル容疑者のものと一致し、今月21日、拉致とレイプ、殺人で有罪判決が言い渡されました。
英大衆紙デーリー・メールや英BBC放送によると、キャンベル被告は事件直前まで自宅に友人を集めてパーティーを開いており、友人が帰ったあと、過去に大麻を買ったことがあるアリーシャちゃんの父親の携帯電話にメッセージを送りましたが、父親は応答しませんでした。
父親はアリーシャちゃんがキャンベル被告に拉致された時、別の部屋でポルノを観ていたそうです。
18歳未満は非公開が原則だが
英国のスコットランドでは18歳未満の少年事件の場合、裁判官が認めない限り実名は公開されません。こうした制度を少年事件の非公開・匿名原則と言います。しかし、アリーシャちゃん殺害事件では裁判官がキャンベル容疑者の実名を公開しました。
キャンベル被告は刺激なしではいられない「アドレナリン中毒症」だとみられています。トランポリンで宙返りをしたり、子供を誘拐して殺害、林に捨てるコンピューターゲーム「スレンダーマン」をして遊んだりしている姿を自分で撮影してユーチューブにアップしていました。
ハンサムでカリスマ性のあるキャンベル被告はガールフレンドには困らなかったそうです。しかし、裏庭でネコを殺害しては皮を剥(は)いで埋めていたことでも知られています。
6~7歳の頃、プールで少女の頭を押さえて沈めて溺(おぼ)れさせようとしていた疑いも浮上。その後も建物に火をつけようとしたり、10代の少女に性的虐待を加えようとしたりしていたと報じられています。犯行後に警察がDNAを採取する方法をスマートフォンで調べていました。
過去20年で400人の子供が殺人罪で起訴
罪を犯した少年の実名は終生、非公開・匿名原則で守られた方が良いのでしょうか。
英国では少年事件の件数は減っているものの、少年の凶悪事件は何も珍しいケースではありません。過去20年間に約400人の子供が殺人罪で起訴されています(2016年4月、英紙デーリー・テレグラフ報道)。
1993年に英国で起きたジェームス・バルガー事件は世界中に衝撃を与えました。当時2歳だったジェームス・バルガーちゃんが当時10歳のジョン・ヴェナブレスとロバート・トンプソンに誘拐され殺害された事件で少年2人の実名や写真が公開されたからです。
2001年に新しいアイデンティティーを与えられた2人が釈放されたときも再び英国社会に大きな衝撃を広げました。事件は短編ドラマ『ディテインメント』として映画化され、今年のアカデミー短編映画賞にノミネートされました。
しかし「遺族感情に全く配慮していない」と激しい論争を巻き起こしています。
少年の刑事責任は英イングランド・ウェールズでは10歳以上、アリーシャちゃん事件があったスコットランドでは8歳から問われています。
スコットランドでは世界水準に合わせようと12歳に引き上げようとしていますが、今のところ、スコットランドでは8~11歳の事件は少年審理として取り扱われ、12~16歳の少年が起した重要事件は裁判所で裁かれているそうです。
刑事責任年齢は国によってまちまち
刑事責任を問える年齢は国によってまちまちです。
8歳~ スコットランド
10歳~ 英国(スコットランド以外)
12歳~ ベルギー、アイルランド、オランダ
13歳~ フランス
14歳~ 日本、ドイツ、イタリア、スペイン
15歳~ チェコ、デンマーク、フィンランド、スウェーデン
16歳~ ルクセンブルク
英国では非公開・匿名原則は少年の更生のため終生、守られるべきだという意見が根強い一方で、有罪判決を受けた少年が1年以内に再び罪を犯す割合は7割近くに達しているそうです。
日本では民法の成人年齢が18歳に引き下げられるのに伴って、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げる議論が行われています。
18歳に投票権を与え、大人として扱うのなら、刑事事件でも同じように扱うのが自然なような気がするのですが、皆さんはどう思われますか。
(おわり)