日本の子ども用車いすを寄贈したキーウの国立子ども病院がロシアに爆撃された
[ロンドン発]7日から8日にかけウクライナ全土の都市を狙ったロシアの大規模ミサイル攻撃で少なくとも20人が死亡したと英BBC放送が伝えた。
首都キーウでは珍しい昼間の攻撃で少なくとも7人が死亡した。国立子ども病院のスタッフは攻撃を受けて避難するとともに、バケツリレーの要領で瓦礫を移動させた。
ウクライナ中部の都市クリヴィー・リフでも少なくとも10人が死亡。31人が負傷し、そのうち10人が重傷だという。
クリヴィー・リフはウォロディミル・ゼレンスキー大統領の生まれ故郷で、たびたびロシアのミサイル攻撃を受けている。
クリヴィー・リフを拠点に戦闘外傷救護を兵士や市民に指導する元米兵マーク・ロペス氏(ウクライナ軍将校兼軍事教官)は「多くのイラン製自爆ドローン・シャヘドと弾道ミサイルで攻撃を受けた。ロシア軍のインフラ攻撃を受け、1日に電気が使える時間は6~8時間だ」と話した。
■「殺すことがプーチンのすべて」
ポーランドを訪問中のウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はX(旧ツイッター)でウクライナ全土の標的にロシアのミサイル約40発が撃ち込まれたことを明らかにした。
「ロシアのテロリストが再びミサイルでウクライナを攻撃した。キーウ、ドニプロ、クリヴィー・リフ、東部ドネツク州のスラヴャンスク、クラマトルスク」
「さまざまな都市にさまざまなタイプのミサイルが40発以上飛んできた。住宅、インフラ、子ども病院が被害を受けた。すべてのサービスが可能な限り多くの人々を救うために動いている」
「世界はあらゆる決意をもってロシアの攻撃に終止符を打たなければならない。殺すことがプーチンのすべてだ。真の平和と安全をもたらすことができるのは世界が団結している時だけなのだ」
■攻撃されたのは欧州でも最も重要な子ども病院の一つ
キーウの国立子ども病院について、ゼレンスキー大統領は「ウクライナだけでなく欧州でも最も重要な子ども病院の一つ。何千人もの子どもたちを救い、健康を回復させてきた」という。
国立子ども病院はロシアの攻撃によってがん病棟と集中治療室が被害を受け、人々は瓦礫の中に閉じ込められている。負傷者や死者の正確な数は不明だ。医師や市民のみんなが瓦礫の撤去を手伝っている。
ゼレンスキー大統領は「ロシアは人々や子どもたち、人類に対するすべての犯罪の責任を負わなければならない。今、世界が黙っていないこと、ロシアが何をしているのかを知ることが非常に重要だ」と非難した。
キーウのビタリ・クリチコ市長は国立子ども病院でロイター通信に対し「戦争が始まって以来、首都に対する最悪の攻撃の一つだ」と語った。
■ロシア軍が侵攻してきた時、700人以上いる子どもたちを2カ月ほど地下の防空壕に移動させた
筆者と妻の史子は一昨年秋からウクライナの慈善団体フューチャー・フォー・ウクライナ(FFU)、日本の車いす支援団体、日本郵船、商船三井、株式会社三協と協力して整備済みの中古車いす1095台をウクライナに送ってきた。
先日もロンドンから中国浙江省に出向いて買い付けた電動車いす30台を深セン港からポーランドのグダンスク港に向けて出荷したばかり。無事届くことを祈っている。
昨年5月、日本の子ども用車いす13台を国立子ども病院に寄贈した際、筆者と妻は同病院を訪れたことがある。
その時、温厚なヴォロディミル・ゾフニル院長は「先日、ロシア軍が再びキーウを攻撃しました。私たちの病院からそう遠くない場所、1~2キロメートル離れたところで無人航空機(ドローン)が撃墜されました」と表情を曇らせた。
■生命維持装置を付けている子どもは動かせなかった
2022年2月に始まったロシア侵攻について「最後の瞬間までロシアが私たちを攻撃してくるとは信じていませんでした」と振り返った。
ロシア軍がキーウを目指して侵攻してきた時、700人以上いる子どもたちを2カ月ほど地下の防空壕に移動させ、恐怖を忘れるため、みんなで踊りやサッカーに興じ、絵を描いて過ごした。
小児がんの子どもたちは欧州の国々の専門医に連絡を取り、受け入れてもらったという。しかし生命維持装置を付けている子どもは動かせなかった。
地下シェルターは空気、水、環境が劣悪だった。このため透析患者、小児がん患者、難しい手術が必要な患者は他の安全な場所に避難させた。それ以外は病院に残り、緊急手術も行った。出産した女性もいた。
国立子ども病院は今年、創立130周年を迎えた。子どもたちは無償で医療サービスを受けることができる。