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浦和の”赤い稲妻”清家貴子がバイシクルシュートで18得点目。WEリーグ最終節は見どころ満載に

松原渓スポーツジャーナリスト
すでに優勝を決めている浦和が勝ち点差を広げた(写真提供:WEリーグ)

 WEリーグは、残すところ1節となった。

 タイトルの行方は、すでに2試合を残した12日の時点で浦和が2連覇を決めている。だが、残り2節で浦和と2位神戸、3位東京NBとの上位対決が続き、2カ月後に迫ったパリ五輪のメンバー選考も最終局面に入っている。

 神戸は、5月12日に行われた第20節で8位の千葉に1-2で敗れ、逆転優勝の芽が潰えてしまった。18日のホーム最終戦の直接対決で、浦和の優勝を阻止して最終節に望みをつなぐシナリオを描いていたはずだ。

 そのために、千葉戦は引き分け以上の結果が必須だったが、厳しい結果となった。

 神戸のエース・田中美南は千葉戦後、「浦和は成熟しているチームで勝ち方をわかっていて、戦い方もしっかりあります。それをずっと落とさなかったところは、リスペクトせざるを得ないところです」(クラブ公式HP)と振り返っている。

 主力メンバーが大きく変わらず、年々成熟度を増してきた浦和は、楠瀬直木監督体制3季目の今季はリーグ13連勝と、記録を更新している。

【アジア制覇からのラスト2試合】

 浦和は、5月10日に駒場スタジアムで行われたアジア女子チャンピオンズリーグ「AFC Women’s Club Championship」のプレ大会(AWCC)で、韓国WKリーグ13連覇中の仁川現代製鉄レッドエンジェルズを破って優勝。その2日後にリーグ優勝が決まり、短期間で2つのタイトルを制覇した。だが、そこでモチベーションが下がることはなかった。「上位との(ラスト)2試合を勝ってこそ真の優勝だという話が(チーム内で)あった」と、ボランチの角田楓佳は明かしている。

 神戸とタイトルを争った1月の皇后杯決勝では、延長戦を含めた120分間の激闘の末に神戸がPK戦を制して優勝した。今季、同カードで勝利がなかった浦和にとっては、21節のアウェー戦はリベンジの一戦であり、2年ぶりのリーグ優勝を逃した神戸にとっては、ホームで一矢報いたい一戦だった。

 そして、迎えた21節の直接対決。歓喜を手にしたのは浦和だった。

 29分、最終ラインの高橋はなからのライナー性のパスを清家貴子が頭でつなぎ、エリア内で受けた島田芽依が角田のゴールをお膳立て。コンディションが万全ではなかった塩越柚歩に代わり、大一番でトップ下に抜擢された19歳の角田が、今季初ゴールで先陣を切った。

角田楓佳
角田楓佳写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 さらに、74分にはスーパーゴールが生まれた。神戸のゴール前で、高くバウンドしたボールを競い合った際に、ゴールに背を向けた清家貴子がバイシクルシュートを決めたのだ。得点ランキング首位を独走する清家のアクロバティックなゴールに、会場は騒然となった。

 結局、この2ゴールで勝利した浦和が、勝ち点を56に伸ばして神戸との差を「10」に広げた。また、神戸と東京NBとの勝ち点差は「1」に縮まり、2位争いは最終節までもつれこむこととなった。

【“赤い稲妻”の威力】

 浦和はこの勝利で、センターバックの高橋はなの完全復帰と、レギュラー最年少の角田の初ゴールという収穫も得ている。角田は、「みんなが自分のことのようにゴールを喜んでくれてすごく嬉しかったです。日本を代表する選手が多く集まるチームですが、年齢はサッカーでは関係ないと思いますし、どんな状況でも自分がチームのためにできることを全力でやるだけです」と、初々しい表情で振り返っている。

今季18得点目を決めた清家(左は角田)(写真提供:WEリーグ)
今季18得点目を決めた清家(左は角田)(写真提供:WEリーグ)

 清家は、今季WEリーグで第8節から16節まで(延期分の20節を含む)、10試合連続ゴールをマークし、国内プロリーグの記録を塗り替えた。その記録は17節の広島戦で一度は途絶えたが、18節から再び量産し、公式戦4試合連続ゴール。18得点で、得点ランキングは2位以下を大きく引き離している。リーグ初代得点王の菅澤優衣香(浦和)、2年目の植木理子(東京NB/当時、ともに14ゴール)に続き、最多得点で3代目の得点王になることがほぼ確実な状況だ。

 そのスピードと決定力にかけて、“赤い稲妻”という愛称も生まれた。今季のWEリーグでは広島と東京NB以外のすべてのチームから得点しており、代表でも4月に強豪・アメリカから開始30秒で電光石火のゴールを奪い、AWCCでも韓国のリーグ女王の堅守を破っている。

「人生初だった」と振り返る神戸戦のバイシクルシュートは、試合前のイメージトレーニングが功を奏した。筑波大学時代に動きを徹底的に研究したというルイス・スアレスの映像を、今でも試合前によく見ている。

「トラップしたら相手に囲まれると思ったので、どうにかして打ちたいなと思って足を振りました。スアレス選手の映像のイメージが残っていました」(清家)

 アシストでもリーグ2位の「8」を記録しているように、マークが集中する中でパスの出し手に回ることも少なくない。だが、点を取り続けることで変化したこともある。

「点を取ることが当たり前の感覚になってきてしまったので、取らないと物足りなく感じます。試合の中で(相手に応じて)どんな取り方をしようかと、毎試合、いろんなアイデアを試しています」(清家)

最終節も注目の上位対決が続く(写真提供:WEリーグ)
最終節も注目の上位対決が続く(写真提供:WEリーグ)

 最終節の相手は、東京NB。前節は千葉に逆転勝ちで今季最多の5連勝と勢いに乗る。

 浦和にとっては幾度となくタイトルを争ってきた相手。古巣対決を前に、楠瀬監督も「この試合を勝たないと真のチャンピオンとは言えない。(神戸、東京NBとの)3強と言われている中から抜け出すためには、しっかりと勝たないといけない」と力を込めた。

 今月末にはなでしこジャパンのスペイン遠征が予定されている。最終節は、代表入りを目指す選手たちにとってパリ五輪メンバー入りへの最後のアピールの場になる。

 5位以下の中位争いは広島が一歩リードしているが、こちらも最後まで熾烈な戦いが予想される。

 浦和の連勝記録更新、清家のゴール数更新、神戸と東京NBの2位争い、そして熾烈な順位争い。見どころ満載のWEリーグ最終節は、5月25日の14時に全6試合が同時刻にキックオフとなる。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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