【プレイバック「鎌倉殿の13人」】江口のりこさんが演じる源頼朝の愛人「亀」とは何者か
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、最終回を迎えた。今回は、江口のりこさんが演じる源頼朝の愛人「亀」について、詳しく掘り下げてみよう。
江口のりこさんが演じる亀(以下「亀の前」)は、なかなかユニークな役柄である。江口さん自身も個性あふれる役者として、高く評価されている。
亀の前は生没年不詳で、良橋太郎入道なる男の娘であるといわれている。とはいえ、亀の前の父については、何もわかっていない。ちなみに、亀の前は『吾妻鏡』にも登場するので、実在の人物と考えてよいだろう。
大河ドラマでの登場はやや遅かったが、実は源頼朝が伊豆に流された頃から関係していたという。関係といっても、最初から男女の仲だったのか不明である。亀の前は非常に穏やかな性格で、美人だったといわれている。頼朝が心を奪われるのは、当然のことだったかもしれない。
とはいえ、頼朝は流人なのに、なんで女性を侍らせることができたのかという疑問が残る。当時の流人は獄舎に繋がれることなく、ある程度の自由があった(伊豆の目代の監視下に置かれたが)。それゆえ頼朝は政子と駆け落ちしたり、亀の前と関係したりと、流人生活をエンジョイしていたのだ。
しかし、亀の前はあくまで頼朝の愛人だったので、政子と争うことがあった。寿永元年(1182)、政子は頼家を出産するため、比企谷に移った。すると、頼朝は鎌倉に亀の前を呼び出し、小中太光家の屋敷に住まわせたという。その後、亀の前はさらに飯島(神奈川県逗子市)の伏見広綱の屋敷に移り、頼朝との関係を続けた。
出産を終えた政子は、二人の関係を知り激怒した。政子は、牧宗親に広綱の屋敷を破却するよう命じた。亀の前は屋敷から這う這うの体で逃げ出し、鐙摺(神奈川県葉山町)の大多和義久の屋敷に身を寄せた。
一連の事態を知った頼朝は激怒し、宗親の髻を切り取るという恥辱を与えた。宗親は土下座して謝ったが、頼朝は決して許さなかったのである。時政は妻・牧の方が宗親の娘だったので、一連の仕打ちに怒りが収まらず、伊豆へと引き籠もった。
その後、亀の前は再び光家の屋敷に移り、頼朝の寵愛を受け続けた。しかし、伏見広綱は政子の怒りによって、不幸にも遠江国に流されたのである。何とも理不尽な話である。その後、亀の前はどうなったのかわからない。一切の記録から姿を消したのである。