親子で楽しめる!アフリカ発のライブ配信とVRで触れる野生動物体験
新型コロナウイルスの影響で海外旅行ができない今、アフリカ大陸の南端、南アフリカ共和国からYouTubeでライブ配信されるサファリツアーに、毎回1万人近い視聴者が集まっています。
配信スケジュールは、月曜から日曜まで毎日。
日本時間の13:30~16:30と22:00~翌1:00の2回、南アフリカのWildEarthが無料で配信しています。
実際に参加してみたところ、臨場感を高めるために、様々な工夫が凝らされていました。
映像
動物を探している間は、レンジャー(動物管理官)が運転するサファリカーの後部座席からの視点です。
時々レンジャーが後ろを振り返り、カメラ目線で「どうやって動物がいる場所を見つけるのか」、「この水飲み場にはこんな動物が集まってくる」などと解説してくれるので、実際のサファリツアーに参加しているようでした。
そしていざ動物が見つかると、その動物にフォーカスした映像に切り替わり、レンジャーの解説もその生態や特徴など具体的になります。
ただライブ配信ということもあり、都合良くいつも動物が見つかるとは限りません。
そのため、3人のレンジャーがそれぞれ別のルートで探索し、誰かが動物を見つけると、そのレンジャーのサファリカーに映像が切り替わるという構成になっています。
私が参加した時は3人のドライバーがうまく連携し、ライオンの親子やゾウ、キリン、チータなどの有名どころ、初めて見る鮮やかな青い色をした鳥、渋い顔をしたフクロウなどなど、数え切れないほど見ることができました。
チャット機能
配信中はYouTubeのチャット機能を使って、直接レンジャーに質問することもできます。
もちろんそれも素晴らしい試みなのですが、私が感動したのは別の側面でした。
ライオンなどのメジャーな動物が登場し、思わず「おー!」っとモニターの前で声を上げると、同じタイミングで他の視聴者からも興奮したコメントが次々と投稿されるのです。
残念ながらチャットは英語限定なので、とても全部読むことはできなかったのですが、矢継ぎ早に書き込まれる様を見ているだけで、みんなで感動を共有しているような感覚になりました。
また、ライブで見られるのは動物だけではありません。
南アフリカは日本とマイナス7時間の時差があるため、配信は現地の朝6:30と15:00に始まります。
つまり配信中に、美しい朝日と夕日も見ることができるのです。
黒一色だった広大なサバンナが、夜明けの光で鮮やかに色づいていく様子や、地平線にゆっくりと沈みゆく夕日の赤さは、言葉で表現すると陳腐になってしまいますが、映像は本当に圧巻でした。
テレビ番組や編集された映像と違い、日本から1万4千キロ離れたアフリカの、今この瞬間の光景は、一見の価値ありです。
VR(バーチャルリアリティ)やライブカメラでも楽しめるアフリカ
マウンテンゴリラの国として有名な東部アフリカのルワンダでは、VR(バーチャル・リアリティ)を使ったトレッキングツアーの映像配信が始まりました。
「The Ellen DeGeneres Wildlife Fund」ウェブサイト (リンク先ページの中程にある「GORILLA VR」の再生ボタンをクリック)
地球上にわずか1000頭しかいないマウンテンゴリラは、絶滅危惧種に指定されている霊長類です。
マウンテンの名前通り生息地は「山」なので、こちらの映像はサバンナではなく、標高3000メートル近い山中で撮影されています。
ちなみに、実際のマウンテンゴリラのトレッキングツアーは、1日あたり「8人×7グループの計56人」しか参加することができません。
そのため、国立公園の入山料だけで1人あたり1500米ドル(約16万円)と高額なツアーにも関わらず、数ヶ月先まで予約を取れない、世界有数のプラチナ・サファリツアーとなっています。
実際のツアーには、人数制限だけでなく――
・マウンテンゴリラに会えるのは1時間だけ
・人間が持つウイルスなどをうつさないように、7メートル以内に近寄ってはならない
・風邪気味など体調が悪い人は参加できない
・14歳以下の子どもは参加できない
――など、マウンテンゴリラを守るために細かいルールがあります。
さらに会うまでも大変で、山の麓までは車で移動できますが、その後は延々と木深い山を自分の足で登らなければなりません。
もちろん同行するガイドが進路を防ぐ枝を落として道を作ってくれますが、運が悪ければ5時間近く歩き続けることもあり、結構な苦行です。
ところが、マウンテンゴリラが目の前に現れた瞬間、その全てが消えてしまうのです。
シルバーバックと呼ばれる成人したオスの迫力に圧倒され、赤ちゃんゴリラのかわいさにメロメロになります。(ゴリラは自分たちが危害を加えられない限り、襲ってくることはありません)
まだ入山料が250米ドルだった遠い昔、私も数回ツアーに参加したことがあるのですが、VRの映像を見て当時の興奮を思い出しました。
他にも固定カメラによるライブ配信や、アメリカの有名チャンネルによるVR動画など、アフリカを感じられるコンテンツは数多くあります。
もしお子さんと一緒に体験できるコンテンツを探しているなら、バーチャル・アフリカツアーに一度触れてみてはいかがでしょうか?
【ライブカメラ】
・Explore Africa(YouTubeチャンネル)
・africam(独自サイト)
【VRコンテンツ】
・ナショナルジオグラフィック(YouTubeチャンネル)
・Discovery(YouTubeチャンネル)
苦境に立つアフリカの旅行産業
2019年、観光産業は世界全体のGDPの10.3%、3億3千万人の雇用、世界総輸出の6.8%、948億米ドルの設備投資を生んでいました。
しかし今回の新型コロナ禍により、世界全体では約1億人、アフリカでは760万人が、2020年の間に失業すると予測されています。
(※1)
この予測は、観光産業が国の財源の主要素を占める東アフリカの国々や、島嶼国にとっては非常に深刻です。
なぜなら、航空産業や宿泊業、お土産物屋など直結する業種だけでなく、レンタカーやレストラン、ツアーガイド、国立公園のレンジャーなど、多種多様な業種の雇用にも深く関わるからです。
たとえば東アフリカの国、ウガンダを例にあげると――。
ウガンダは人口4286万人、GDP259億米ドル、生産年齢人口1940万人の国です。(※2)
2018年、ウガンダにおける観光産業は、GDP全体の7.7%となる16億米ドル(約1700億円)を稼ぎ出し、同国全雇用の6.7%・66万7600人の雇用を生み出していました。(※3)
日本の業態に置き換えると、GDPの7.7%は「運輸・郵便業」+「宿泊・飲食サービス業」の総生産に、雇用6.7%は「宿泊・飲食サービス業」に携わる全ての人々に該当します。(※4)
同国は3月22日に国境を閉鎖して以降、必要な物資の搬入などを除いて、現在(5月19日時点)も入国禁止ですので、すでに2ヶ月近く観光客が途絶えた状態なのです。
新型コロナが終息し国境を越えて人の往来が可能になったとしても、再び人々が「海外旅行を楽しもう」と思うようになるには、さらに時間が必要です。
東アフリカ・ビジネス・カウンシル(※5)によると、2020年、ウガンダも含めた東アフリカ全体で620万人の旅行客を逃し、54億米ドルの損失が発生すると想定しているようです。
ICTが進化し、アフリカからも今までにはなかったコンテンツが、次々と発信されています。
でも、やはり、どんなに素晴らしいライブ配信もVRも、リアルには敵いません。
サバンナの土と草が混じった濃厚な匂いや、動物たちと目が合った瞬間に痛感する野生の強さと怖さ。
バーチャルでは表現できない、リアルな空間でしか感じ取れないことがあるのです。
私は、初めてサファリツアーに参加したとき、深夜ロッジのそばに現れたバッファロー(草食動物)の荒い鼻息に怯えながら、「安全な家も戦う銃もないのに、私たちの祖先はよくこの大地で生き延びられたものだ……」と、太古の人類が成しとげた奇跡に初めて気づきました。
もしバーチャルな体験を通してアフリカに興味が沸いたなら、新型コロナ終息後、是非アフリカを旅行先候補に入れてください。
バーチャルの数倍、五感が刺激される体験になることを約束します。
(※1)
・WTTC(世界旅行ツーリズム協議会)「Economic Impact Report」
(※2)
・UGANDA National Population Council
(※3)
・UGANDA MINISTRY OF FINANCE BUDGET FRAMEWORK PAPER FOR FY 2020/21
(※4)
・内閣府「018年度国民経済計算(2011年基準・2008SNA)」
(※5)
アフリカの地域経済共同体の一つ、東アフリカ共同体内の民間セクター代表組織