「アメリカ・ピンクの名画」と覚えよう=アメリカピンクノメイガ、外来種の猛威であっという間に全国区
北米地域原産の外来種であるこの蛾の存在が日本で最初に確認されたのは、2019年とされているが、最近は東京を含め、日本各地でたくさん目撃されているので、ずっと以前にブルーサルビアとともに日本に入り込み、密かに生息域を広げてきたに違いない。
今やほぼ全国区のアメリカピンクノメイガだが、小さい虫である上に、長い名前が覚えにくい。それなら、この名前を覚えやすく分解してみよう。
「ぴんくのめいが」と書いてワープロ変換すると、ほぼ確実に「ピンクの名画」となる。そこにアメリカを付けて、「アメリカ・ピンクの名画」とすれば、実に覚えやすい。
この蛾を見かけた際に、米国から輸入された、ちょっと色っぽい名作映画を思い描くのも、楽しいではないか。
アメリカピンクノメイガの幼虫は、サルビア系の植物を餌とするが、なぜか定番の赤いサルビアには少なく、青いサルビアを特に好むという。
幼虫を観察すると、サルビアの蕾や花を食べていることが多い。大量発生すると、花が多少減ってしまうかもしれないが、小さい虫なので被害もたかが知れているから、可愛さに免じて許してやってほしい。
成虫は青いサルビアの花にやってきて蜜を吸うという(このシーンを写真に収めることは昆虫記者の今後の課題の一つ)。ピンクとブルーの組み合わせは、昆虫記者の美的感覚を刺激する。
ちなみに米国では、色っぽい映画がブルーフィルムと呼ばれていたことがある。アメリカピンクノメイガとブルーサルビアから、ピンクの名画とブルーフィルムを連想するなんて「昆虫記者は品性に欠ける」と言う人がいるかもしれない。「そんなことはない」と全面否定したいところだが、断言できる自信はない。
アメリカピンクノメイガに近い日本の在来種「マエベニノメイガ」もきれいな蛾で「日本ピンクの名画」と呼びたい鮮やかなピンク色の翅を持っている。しかし、マエベニノメイガは翅の胴体に近い部分など全体に白っぽい部分が多く、アメリカ版の方がずっとピンク度が高い。
(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影