INSTYLE（インスタイル）グループ（東京、西村豪庸《にしむら・ひでのぶ》代表）が、婦人服アパレル・小売りのヰノセント（INNOCENT、東京、橋本雅幸社長）を5月初頭に買収し100％子会社化したことが分かった。

　経営コンサルティング業を中心に、飲食、不動産、美容、芸能、広告代理店など幅広い事業を展開するインスタイルグループは、今年1月に氣志團の綾小路翔や俳優の大森南朋なども顧客に持つメンズ・デザイナーズブランド「ダイエットブッチャースリムスキン（DIET BUTCHER SLIM SKIN）」の運営会社（メタルバーガーからダイエットブッチャースリムスキンに名称を変更）をグループ傘下に収め、ファッション・アパレル事業に初参入したばかり。ヰノセントのM&A（企業の買収・合併）が2案件目となる。

「ニーム」「マリン フランセーズ」ブランドを企画・生産・販売

　ヰノセントは1988年に土田久雄氏が創業。ライフスタイル提案型ブランドの先駆けの一つで、独自性の高いナチュラルフレンチ・テイストの「ニーム（NIMES）」や「マリン フランセーズ（LA MARINE FRANCAISE）」を企画・生産し、卸売りをするとともに、買い付けてきたインポート雑貨などと合わせて直営店で販売してきた。2017年に前ナノ・ユニバース社長だった藤田浩行氏らが事業承継し、「ア ベイシング エイプ（A BATHING APE）」を手掛けていたノーウエアの経営者だった橋本雅幸氏が社長に就任。藤田氏がクリエイティブ・ディレクターとしてリブランディングに着手し、25店舗ほどあった店舗網を再編しアウトレットをクローズするなど施策を打ち始めていたが、半年足らずで経営から離れたこともあり、資本・経営両面で新体制の在り方を模索していた。子会社ドゥニームを合わせて直近のグループ年商は34億円だった。

1週間・計3時間の面談で契約を決定、「1年で投資回収、シナジー効果も見えた」

　西村代表は、ヰノセント側と初めて接触したのは4月下旬のことだと明かす。再面談したのは5月初めで、わずか1週間・計3時間で譲渡契約を結んだことになる。「とてもいい出会いだった。在庫の適正化やアウトレットの再開など当面の課題を解決するとともに、財務会計の力や、ECを含めたデジタル施策やデザインなど付加価値商売の部分で自分やグループのノウハウを提供すれば、1年間で投資が回収できると考えた。橋本社長は『ア ベイシング エイプ』や『アンダーカバー』『ナンバーナイン』など僕も好きだったすごいブランドを育てられ、メンズや裏原宿のストリートカルチャーなどにも詳しい方だ。『ダイエットブッチャー』の経営も見てもらえれば、民さん（深民尚社長兼デザイナー）もデザインに集中できる。初回のミーティングの際にシナジー効果があると見えたため、すぐに契約を交わした」と“爆速M&A”を決めた理由を語る。

ファッション・アパレル事業で5年で100億円超へ

　今後の構想として、現在のヰノセントはアパレル商社機能を強化し、小売り部分などは新設会社で運営しECやマーケティング・ブランディングなどに適正な投資を行っていく。子会社のドゥニームを合わせて､5年後には売上高を70億～80億円へと倍増させ、ダイエットブッチャーを合わせてファッション・アパレル事業で80億～90億円、新たなM&Aを加えて100億円以上へと成長させたい考え。

　近年のファッション・アパレル系企業のM&Aでは、ジーンズメイトやファッション通販の夢展望などを傘下に入れたRIZAPグループに注目が集まっているが、インスタイルグループも台風の目の一つになりそうだ。

　なお、ブランド設立20周年を迎える「マリン フランセーズ」ではウィメンズ・ディレクターに、梨花なども手掛けてきたスタイリストの風間ゆみえを、メンズ・ディレクターに風間の夫で国内外のサーフフブランドを手掛ける高濱明洋を新たに起用。今秋冬ものから新商品群を投入していく。