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ユニクロ24年春夏に大型販促を連発、LifeもWearも軽やかに!ボトムス、エアリズム、UT訴求

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
ユニクロの2024年春夏のシーズンコンセプトはLightness 筆者撮影

 ファーストリテイリング(FR)傘下の「ユニクロ」(UNIQLO)は2月9日から春物の本格展開を開始した。同日、150万部を無料配布する「LifeWearマガジン」を発行するとともに、2月7日にはマガジンと連動した2024年春夏シーズン展示会を都内のギャラリーで開催した。シーズンコンセプトや遠藤真廣FRグループ執行役員が解説するマーケティング戦略、そして、プレゼンテーションの模様をレポートする。

写真はすべて筆者撮影
写真はすべて筆者撮影

POINTその1:シーズンコンセプトは「Ease into Lightness」

 「ユニクロ」はブランドコンセプトとするLifeWearを、人の日々の暮らしを起点に生みだしている。「今、街行く人々を眺めていると、ジェンダーレスで、機能性の高いアイテムや、オンとオフのどちらでも着られる新しいフィットの『クリーンカジュアル』がごく当たり前になっている。シーンやテイスト、スタイルといった垣根を軽やかに行き来する人々を前に思い浮かんだキーワードが“Lightness”(ライトネス、軽さ)だ。時代のムードに寄り添い、色はエクリュやモーヴピンクなどのペールトーンを中心としたやわらかなカラーを中心に展開する。天然素材のリネンやスーピマコットンでより優しい着心地を提供する。ジャケットやTシャツはより薄く快適に。ジーンズやカーゴパンツも軽量化し、パラシュートパンツも投入する。色、素材、機能、あらゆる面で軽やかなワードローブで、2024年春夏を明るく彩る」。

POINTその2:マーケティング戦略。「過去に例を見ない大々的キャンペーンに投資する」

 キーアイテムは、「パラシュートパンツ」「カンドウパンツ」「ジーンズ」のボトムス3アイテムと、「ブラトップ」「エアリズム」、Tシャツブランド「UT」で、「かつてないほど大型キャンペーンを連打する」という。「ジーンズ」と「エアリズム」のコットンオーバーサイズTシャツは、世界共通のビジュアルを使用したグローバルキャンペーンとして展開していく。

【マーケティング担当役員の、遠藤真廣ファーストリテイリンググループ執行役員の話】

 多くの服を販売する中で、私たちが本当にお客さまに提供したいのは、「服を通した豊かで快適で便利な暮らし・生活」だ。展示会のコンセプト「Lightness」は、色や素材や着こなしといった服のコンセプトであると共に、日々の暮らしを「Lightness」(筆者注:明るく軽やか)にしていくという気持ちも込めている。

 今、世界中を見渡すと、あらゆるものがシームレスになってきている。たとえばオンとオフ。オンの中でも本業と副業。家の中と外。国と国。ものすごくグローバル化している。日本だけでないが、季節もシームレスになり、残念ながら四季もなくなってきている。こういうシームレスでボーダーがなくなってきている世の中において、それを前向きに軽々と飛び越えて豊かで快適で便利な暮らしをしていただきたいという思いを込めている。

 Life(生活)とWear(服)のLightnessというコンセプトを来週から大々的にお客さまに提案していきたい。われわれも服屋なので、ファッションの立ち上がりはやはりボトムからだと思っている。ボトムスの3つの商品について、日本ではテレビCMを含む非常に大きな投資をしていく。

 1つ目が、パラシュートパンツだ。非常に軽くてユーティリティ性に富んだ新しいタイプのパンツだ。すでにデジタルでは動画を流しているが、来週の12日からテレビでも流す。「その一歩を軽くする」というメッセージでパラシュートパンツの特徴と、軽やかに生きていこう、楽しいときは思いっきり大人も楽しもうというコンセプトで提案をしていく。

 2つ目は、ジーンズだ。従来のものは非常に重くて硬くてゴワゴワしてはきにくいということがあった。ようやく私たちもやわらかくて軽くてはき心地のよいジーンズができた。これを3月11日からテレビCMを含めて大々的にマーケティングをしていく。グローバルでも共通の動画を使う予定だ。グローバルの一大キャンペーンと理解いただきたい。具体的には、ウィメンズのワイドストレートジーンズ、ドレープデニムタックパンツ、そして、メンズのリラックスアンクルジーンズにフォーカスしたCMになる。本当にやわらかいジーンズが生み出す、自由で軽快な生き方といったものを世界中のお客さまに提案したい。

 3つ目は、カンドウ(感動)パンツだ。グローバルではAirSense(エアセンス)と呼ぶ商品で、軽量、伸縮、速乾という特徴がある。従来のようなオフィス向けのビジネスパンツ、ジャケットというものではなく、仕事の仕方も変わってきていて、本業と副業、あるいは、オンとオフ、そういった、仕事だけに関わらず、仕事を中心に生きている中で、とくに若い方が取り入れている生活スタイルにマッチした新しいタイプのパンツとして、これもテレビCMで大々的に展開していく。

 この3つのボトムスを来週から立て続けにCMを投資するというのは、多分、今までやったことがない。それぐらいの規模で、「LifeとWearのLightness」ということをお客さまに伝えていきたい。

 ブラトップも打ち出す。こちらもおかげさまで世界中のお客さまに支持をされ始めた。インナーだけでなく、アウターとして着用される、着こなすお客さまが増えてきていることが要因だ。私たち日本でも、1枚あれば「アウターとしてもインナーとしても使える」という新しい着こなしの価値を伝えていきたい。こちらが3月25日からテレビCMを含めた展開を考えている。

 次が、エアリズム・インナーだ。インナーといえばヒートテックが代表的な商品として認知をされているが、ご存知の通り、気候変動の影響で暖冬傾向(で、着る機会が増えていること)が一つ。もう一つは、こちらも気候変動かもしれないが、一日の中の寒暖差が非常に激しい日が最近多くなっている。こういうときにエアリズム・インナーが持っている商品特性はピッタリだ。(*筆者注:吸湿・吸汗・速乾機能により衣服内の環境を良くして快適性を保つ。夏はもちろん、冬でも室内や電車内、汗を多くかくと言われる睡眠時などにも好適)。24時間・365日活躍する新しい肌着としてエアリズム・インナーを再ポジショニングして展開する。これは3月18日から展開する予定だ。

 ジーンズと同じカジュアルウエアのど真ん中であるTシャツも打ち出す。とくに世界中でエアリズム・オーバーサイズコットンTシャツが支持を得ている。先ほどのジーンズと一緒で、グローバルで共通のムービーを作って世界中でオンエアしてお客さまに提案していきたい。これは日本では4月中旬からを予定している。

 もう一つグローバルでやろうと思っているのが「UT」だ。UTも非常に優良なコンテンツとコラボレーションできている。世界で同じアセットを使って、テレビ級ではないが、「UT」らしい、街の中に登場したり、デジタルの中に面白いことをして登場したり、面白いタイプのキャンペーンを世界中で行う。これは3月以降続くが、日本ではインバウンドで海外のお客さまが多くいらっしゃるゴールデンウィークや夏休みのタイミングで展開したい。

 シームレスという意味では、お店とお客さまの境目もデジタル技術によってシームレスになってきた。接客は必ずしも店頭だけでする必要はなくなってきた。デジタルを通してお一人おひとのお客さまと接客ができる。私たちもまだまだぜんぜん素人で内容は下手くそだが、TikTokやLIVE STATIONという自社メディアを使ってお客さまに販売員が直接提案する。そしてお客さまのご質問にお答えする。そういう新しいタイプの接客を始めている。LIVE STATIONは4年ぐらいかけて、昨年8月まででそう視聴者数が1000万人になった。これが直近で1500万人に。過去にないぐらいのスピードで視聴者が増えている。認知が上がってきたことと、販売員の努力で内容が少しずつ良くなってきているのではないかと思う。こういった新しいツールも使いながら、われわれのコンセプトであるLightnessを服とライフと両面から提案していきたいと考えている。

 引き続き、テレビや新聞といったトラディショナルメディアに、デジタル媒体と同様に私たちは使っていく。引き続きメディアの皆さんにもいろいろご協力をいただきたいと思っている。

【キャンペーンスケジュール】

2月12日~ パラシュートパンツ(3990円)

3月11日~ ジーンズ(ウィメンズ・ワイドストレートジーンズ、同ドレープデニムタックパンツ、メンズ・リラックスアンクルジーンズ。各3990円。グローバルキャンペーン)

3月15日~ カンドウパンツ(3990円)

3月18日~ エアリズム・インナー(1290円など)

3月25日~ ブラトップ(アメリカンスリーブブラタンクトップ2290円など)

4月中旬~ エアリズム・コットンオーバーサイズTシャツ(1500円、グローバルキャンペーン)

3月~/ゴールデンウィーク~ 「UT」

POINTその3:プレゼンテーション。日常生活のワンシーンを切り取る

展示会の全体演出として、電車や駅を再現。改札口やホーム、社内、電車を降りた先の広場やカフェスタンドなど、人々の日常生活の光景を通して、ユニクロのライフスタイル(ファッション性訴求)と、ファンクション(感動シリーズやUV、エアリズムなどの機能性訴求)、テクスチャー(リネンやコットンなどの素材訴求)や、スタイリングを表現した。モデルによるインスタレーション形式の新作スタイリング披露や、カンドウジャケット&パンツを着用したダンサーによるライブパフォーマンスも実施。

 ちなみに、電車内にはユニクロ有明オフィスの近くを通るゆりかもめ線から見えるビル群や海の景色をサイネージで流して臨場感や高揚感を高めた。天然素材を訴求するテクスチャーのゾーンには生花やグリーンを用いたガーデンが登場し、華を添えた。

POINTその4:展示会開催時期の変更

 従来、春夏物の展示会は12月上旬に行うことが多く、雑誌掲載などのリードタイムを考慮したと思われる時期に行っていた。けれども今回は春の立ち上がりや店頭投入のタイミングに引きつけて開催。「これまで情報が出ても、店やECですぐに商品を買うことができず、お客さまのストレスになっていた部分があった。お客さまが本当に必要とする情報を必要なときに発信するため、このタイミングで開催した」と遠藤執行役員。、メディア関係者(約300人)に加えて、アナリストやインフルエンサーも招待し、適時の情報発信に注力し、タイムリーな話題性の創出に努めた。

POINTその5:値上げはひと段落

原材料高や物流費高騰などによって世界的に価格高騰・インフレ傾向が続いてきたが、「ユニクロ」では24年春夏シーズンの商品価格は大部分で据え置き、価格引き上げはエアリズムの300円up(990円→1290円)のみにとどまる。秋冬に関しても、現在のところ、値上げは行わない方針だ。

POINTその6:ラウンドミニショルダーバッグは新色や夏クロシェ

世界的に大ヒットする一方で、SHEINによる模倣を訴訟したことでも話題になっている、ラウンドミニショルダーバッグ。今春夏には、コンセプトのLightnessに合わせたペールトーンのカラーリングの商材を拡充している。価格は1500円で据え置きだ。新たに、手編みのクロシェ素材の夏らしいバッグが3月上旬に発売されるのがポイントだ(2990円)。また、元「クロエ」「ジバンシィ」出身のデザイナー、クレア・ワイト・ケラーによる「ユニクロ:C」からは、通常よりも一回り大きくレザータッチのラウンドミニショルダー(2990円)が発売されており、秋冬に引き続き人気になりそうだ。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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