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アレルギーって何だろう? 最新の治療法や予防法を知ろう!

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【アレルギーってどんな病気? タイプ2炎症ってなに?】

アレルギーは、くしゃみが止まらなかったり、皮膚が赤くなってかゆくなったりする、とてもつらい病気です。実は最近、アレルギーの仕組みがだんだんわかってきました。

アレルギーの多くは、「タイプ2炎症」という炎症反応が関係しています。タイプ2炎症では、IgE(免疫グロブリンE)というタンパク質や、IL-4、IL-5、IL-13などのサイトカインと呼ばれる物質、好酸球や好塩基球などの白血球、マスト細胞やヘルパーT細胞2型といった免疫細胞が重要な役割を果たしています。

花粉症や喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど、私たちの身近なアレルギー疾患の多くに、このタイプ2炎症が関わっています。

このタイプ2炎症をターゲットにした新しい治療法の1つが、「バイオ製剤」と呼ばれるお薬です。バイオ製剤は、遺伝子組換え技術などを使って作られた生物由来のお薬で、IL-4やIL-5、IL-13などのサイトカインを狙い撃ちにします。これらのバイオ製剤は、アレルギー性鼻炎と喘息など、複数のアレルギー疾患に同時に効く可能性があります。アレルギー疾患を併せ持つ人にとっても、とても期待できる治療法だと言えるでしょう。

【アレルギーと皮膚の関係 - 蕁麻疹ってどんな病気?】

アレルギーは、皮膚にも様々な影響を与えます。蕁麻疹やアトピー性皮膚炎は、代表的なアレルギー性皮膚疾患です。

特に蕁麻疹は、皮膚に赤い発疹が出て、ものすごくかゆくなる病気です。蕁麻疹やアナフィラキシーなどは、マスト細胞というアレルギー反応に重要な細胞が関わっています。最近の研究で、マスト細胞の表面にあるMRGPRX2(マスト細胞関連Gタンパク質共役型受容体X2)やSiglec-8(シアル酸結合Igタイプレクチン-8)などの受容体や、細胞内の情報伝達経路の仕組みがわかってきました。

これらのマスト細胞の受容体や情報伝達経路を狙った新しいお薬の開発も進んでいます。MRGPRX2を狙ったお薬や、Brutonチロシンキナーゼを阻害するお薬などが、臨床試験という人での効果や安全性を確認する段階に入っています。慢性蕁麻疹の治療に使われているオマリズマブという抗IgE抗体に加えて、これらの新しいお薬が登場すれば、蕁麻疹などマスト細胞が関わる病気の治療の選択肢が広がるかもしれません。

【アレルギー予防と治療の今後】

アレルギーを防ぐためには、赤ちゃんの頃からの取り組みが大切です。生後4ヶ月以降は離乳食を始めることが推奨されています。また、アレルギーになりやすい家庭では犬や猫を飼わないこと、受動喫煙・能動喫煙を避けること、予防接種を決められたスケジュール通りに受けることも大切です。

アレルギーの治療で中心的な役割を果たすのが、免疫療法です。免疫療法の効果を評価するための指標(バイオマーカー)を見つける研究が進められています。また、免疫療法の効果を高めるために、オマリズマブという薬を一緒に使ったり、皮膚に直接薬を貼る経皮免疫療法などの新しい方法も試されています。

アレルギーは、私たち日本人にとってとても身近な病気です。しかし、アレルギーのメカニズムはどんどん解明されてきています。最新の知識に基づいた予防法や治療法が確立されれば、アレルギーに悩む多くの人の生活の質が改善されるはずです。みなさんも、アレルギーについて正しい知識を身につけ、上手に付き合っていきましょう。

参考文献:

1. Garcovich S, et al. Vaccines (Basel). 2021;23;9(3):303.

2. Worm M, et al. Allergol Select. 2021;5:195-243.

3. Pfaar O, et al. Allergol Select. 2022;6:167-232.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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