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台風5号 予報円が同心円を描く訳

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
台風5号と台風9号の予想進路図(7月28日午後3時現在)

 台風5号の予想が冴えない。指向流が弱いため、予報円は小笠原諸島付近で同心円を描く。一方、台風のスパイラルバンドが北上し、激しい雨が頻発するおそれがある。

予報円の大きさは直径1600キロ

 こちらは28日(金)午後3時の雲の様子です。丸く見えるのは台風の雲で、右上が台風5号、左下が台風9号です。

7月28日午後3時の雲の様子(ひまわり8号)
7月28日午後3時の雲の様子(ひまわり8号)

 雲の大きさを比べると台風5号は9号の半分以下ですが、どちらも強い台風です。台風の強さは雲の多い少ないではなく、中心付近の風の強さで決まっています。

 台風9号は沖縄から中国大陸へ、予報円が進行方向に伸び、予想の信頼性が比較的高いことを示しています(表紙)。

 一方、台風5号はどうでしょう?予報円が重なりあい、同心円を描いています。

台風5号 5日進路予想図(7月28日午後3時現在)
台風5号 5日進路予想図(7月28日午後3時現在)

 5日先の予報円の大きさは直径1600キロあり、最大級の大きさです。予報円は台風の中心が70%の確率で入る範囲を示していますから、台風の行き先が不透明なときほど、予報円は大きくなります。巨大な台風となる意味ではありません。

なぜ、予報円が同心円に?

 台風を流す風を「指向流」といい、台風予想の要です。上空の強い西風、そして高気圧の位置や勢力に大きく左右されます。

 この時期は指向流が弱いため、台風が周囲の環境を変化させる影響が大きい。さらに、台風5号のようにスケールの小さい台風は予測そのものが難しく、予想の不確実性が増す原因になっています。

日本の南海上は指向流が弱く、予測の難しい状況がしばらく続くでしょう。見通しがはっきりするのは来週以降になりそうです。

激しい雨が頻発

 台風を取り巻く雲はスパイラルバンドといい、その名の通りらせん状の発達した雨雲です。関東地方から台風5号まで約900キロ離れていますが、台風の外側を取り巻くスパイラルバンドのひとつが千葉県・房総半島沖まで北上しています。

関東地方に近づくスパイラルバンド(7月28日正午,ひまわり8号)
関東地方に近づくスパイラルバンド(7月28日正午,ひまわり8号)

 さらに、台風は湿った空気を送り出すポンプのような役割をするため、台風から遠い場所でも、急に雨雲が発生して、激しい雨が降ります。ここ数日、台風の間接的な影響で、午後は西日本から東日本の広い範囲で激しい雷雨になっています。

 この変わりやすい空模様はしばらく続くでしょう。夏休みが本格化する今、これまで以上に天気予報に敏感になってほしいと思います。

【2017年7月28日午後3時現在の気象情報、台風情報を元にしています】

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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