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特別国会は臨時国会と違う?衆院総選挙後にしか開かれない「特別国会」とは

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
特別国会の初日は、正面玄関から登院する(写真:cap10hk/イメージマート)

 第206回国会(特別国会)が、第49回衆議院議員総選挙を受けて今日召集されます。報道などでお気づきの方も多いとは思いますが、この国会は、毎年1月に開かれる通常国会(常会)や、秋に開かれることの多い臨時国会(臨時会)と異なり、「特別国会(特別会)」という特殊なものです。常会や臨時会と異なる点を条文と一緒にみていきたいと思います。

常会・臨時会・特別会とは

 国会には、通常国会(常会)、臨時国会(臨時会)、特別国会(特別会)の3つの国会があります。このうち通常国会(常会)は年1回毎年1月に開かれるもの、臨時国会(臨時会)は内閣が召集するものとされていますが、特別国会(特別会)は、日本国憲法と国会法に次のように定められています。

日本国憲法第五十四条

1 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

国会法第一条

(中略)

2 常会の召集詔書は、少なくとも十日前にこれを公布しなければならない。

3 臨時会及び特別会(日本国憲法第五十四条により召集された国会をいう)の召集詔書の公布は、前項によることを要しない。

 すなわち、特別会は衆議院が解散して行われた総選挙のあとに憲法54条に基づいて開かれる国会のみを指します。そのため、毎年1回開かれる常会や、年に数回開かれることもある臨時会と異なり、開かれる回数はそう多くありません。

特別国会では、議員は国会正面玄関から登院する

 それでは、特別会は常会や臨時会と何が違うのでしょうか。

 まず、特別国会は衆議院議員総選挙のあとに開かれる国会のため、登院してきた人物が当選した議員であるかどうかを確認する必要があります。また、議員バッジ(議員記章)をつける必要があることから、議事堂の中央玄関から登院することになります。(通常は、議員会館との地下連絡通路や通用門を使うことがほとんどです)。

 このような細かいことについて憲法・法律に定めがあるわけではありません。しかし衆議院には衆議院内でのルールについて「衆議院規則」を定めているほか、これらに定めていないことも「先例集」としてまとめており、これらが踏襲されることとなっています。

衆議院先例集

七二 議員は、衆議院議員の総選挙後の国会の召集日には、議事堂中央玄関から登院する。

七三 議員は、総選挙後の国会の召集日において当選証書の対照を受ける。召集日に登院しなかった者は、初めて登院したとき当選証書の対照を受ける。

四五八 記章を帯用しなければ議院に出入することを許さない。

 また、先例集には、「記章を帯用しなければ議院に出入することを許さない。」ともあります。それゆえ、特別国会では議事堂の中央玄関から登院し、当選証書の対照の上、議員記章をつけることで、議院に出入することができるようになるのです。なお、衆議院の議員記章の裏には当選回次が刻印されており、(着用している間はわからずとも)裏をみればどの選挙で当選したときのものかはわかるようになっています。

特別国会では、冒頭で内閣が総辞職をする

 衆議院議員総選挙の後の特別国会が召集されたときには、内閣は総辞職をすることとなっています。

日本国憲法第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

 これは、辞職する理由の有無にかかわらず、法律の要求事項です。従って今回の岸田内閣のように、(議席をやや減らしたものの)議員数から岸田首相が内閣総理大臣として首班指名されることが濃厚であっても、再度首班指名をすることとなります。なお、内閣総理大臣の回数はカウントされるため、岸田文雄氏の「第100代内閣総理大臣」の任期は今日までとなり、改めて岸田文雄氏が特別国会の首班指名で指名されれば、「第101代内閣総理大臣」に就任することとなります。当然、組閣も再度行うことになります。

特別国会では、議長・副議長を選挙する

 また、この特別会では議長・副議長の選挙も行われます。これまでの衆院議長・副議長が今回はいずれも選挙に出馬しなかったことから、現在、空席となっています。

 先ほど説明した内閣総理大臣の指名は、ほかのどの議案よりも優先される議事です。一方、内閣総理大臣の指名をするにしても、議長や副議長が決まっていなければ議事進行はできず、またその前に議員がどの議席に座るかが決まっていなければその議事進行もできません。これらのことから、今日の本会議では議長の選挙、副議長の選挙、議席の指定、会期決定、議院運営委員の選任ならびに委員長の選挙の後に首班指名選挙となります。

 このように、国会運営は憲法や国会法のほか、衆(参)議院規則や先例集など様々なルールに従って運営されています。解散総選挙後にしか開かれない、文字通りの特別国会、今回の会期は12日までのわずか3日間ですが、その独自のルールもぜひ注目をしてみて下さい。

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。

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