王者フルトンが井上尚弥の過去最強の相手と評される理由は
ボクシング世界バンタム級4団体統一王者・井上尚弥(30=大橋)は、7月25日に東京・有明アリーナで行われるWBC&WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチで、王者スティーブン・フルトン(28=アメリカ)と対戦する。
フルトン
フルトンはアメリカ出身のプロボクサーで、現WBC・WBO世界スーパーバンタム級統一王者だ。
2014年にプロデビューし、その後連勝を続け、2021年には王者アンジェロ・レオに勝利してWBO王座を獲得。さらに、王者ブランドン・フィゲロアにも勝利し、WBC王座を獲得した。
その後、2022年6月には元王者ダニエル・ローマンに勝利し、王座防衛に成功して今回の井上戦に至った。
これまで21戦全勝(8KO)の戦績を誇り、身長169cmでありながら、リーチが179cmと長いのが特徴だ。
元5階級制覇王者フロイド・メイウェザーのように、左ガードをダラリと下げて戦うスタイルでも知られている。
減量苦で階級を上げる噂もあったが、ビッグファイトである井上戦を選択し、この階級に留まった。
井上の階級アップ
井上はこれまでに4つ階級を上げてきた。
2014年4月にWBC世界ライトフライ級王者のアドリアン・エルナンデスに6RTKOで勝利し、初となる世界王座を獲得。
その後、階級を一気に二つ上げ、2014年12月にWBO世界スーパーフライ級王者のオマール・ナルバエスに2RKOで勝利し、2階級制覇を達成。
さらに階級を上げ、2018年5月にWBA世界バンタム級タイトルマッチでジェイミー・マクドネルに1RTKOで勝利し、3階級制覇王者となった。
過去の結果を見ると、階級を上げた直後の試合で素晴らしいパフォーマンスを発揮している。
挑戦者としてモチベーションが高い状態で戦えることと、減量苦から解放されることが要因だろう。
今回のスーパーバンタム級は、井上にとって4階級目の挑戦だ。
フルトンが階級を上げようとしているのに対し、井上は下から階級を上げてきた。
ボクシングでは、階級が一つ変わるだけで体格、パワー、パンチ力などが大きく変わる。
相手の耐久力も高まるため、井上のパワーがどれだけ通じるかが焦点となるだろう。
勝利の鍵は
フルトンはこれまで試合、リスクを冒さず着実にポイントを重ねる戦術を取ってきた。
積極的なスタイルであれば、カウンターのチャンスも生まれるが、そうでない場合、こちらも根気強く、相手を崩していかなければならない。
また、リーチの長さも相まってパンチは当てにくくなるだろう。間合いやディフェンスにも優れている厄介な相手だ。
試合が長引けば、フルトンの老獪なボクシングで苦戦する可能性もある。
過去に井上をもっとも苦しめたのは、5階級王者のノニト・ドネアと言われているが、階級の違いも含めると、過去最強の相手と言っても過言ではない。
井上が勝利するために、鍵となるのは執拗な「ジャブ」だろう。
ボクシングにおいてジャブは、攻撃の起点となる重要なパンチであり、試合のペースを掴み優位に進められる。
近距離での打ち合いは井上に分があるため、ジャブをつきフルトンの懐に入り込めれば、早い段階でKO勝利も見込めるだろう。
両者の体格差も気になるところではあるが、関係者からの話では「井上は非常に良いコンディションで試合前の調整に入っている」と好調さが窺える。
この試合の結果次第では、WBAスーパー・IBFのベルトを保持するマーロン・タパレスとの4団体統一戦に繋がるだろう。
未知の階級に挑む、進化した井上に注目したい。