動画SNSシーン発、神山羊による最新曲「アイスクリーム」が誇る強度なポップセンスを考察
●「アイスクリーム」が誇るポップアンセムとしての強度さ
動画SNSシーンを中心に活躍するサウンドクリエイター&シンガーソングライターの神山羊(YOH KAMIYAMA)が、2019年9月25日夜に新曲「アイスクリーム」のミュージックビデオを公開した。映像は、話題のクリエイティブアソシエーションCEKAI所属クリエイター窪田慎によるものだ。
アニメーションに登場するキャッチーなイラストは、気鋭の若手クリエイター北田正太郎が手がけている。来月10月23日にリリースする最新2ndミニアルバム『ゆめみるこども』“数量限定「アイスクリーム盤(CD +DVD)」”のアートワークともポップかつしなやかにリンクするデザインだ。
何より注目は「アイスクリーム」が誇るポップアンセムとしてのメロディーと言葉、ロック的なサウンドの強度さだろう。
同時代性を誇る洋楽ナンバーからの影響はもとより、SMAPや宇多田ヒカルなど90年代ポップスをルーツとする神山羊の歌謡センスが爆発している。思わず口ずさみたくなる甘いメロディー。しかし、単純に懐古主義には走らず、今を感じるヴォーカルの節回しに耳を奪われる。何も持たないことに焦りを感じ、何かをつかもうとするのだが気が付いた時には若さは溶けていく。そんな青春期の葛藤を歌にしているのだ。
●先行きの見えないオルタナティブな感情を音楽で表現
作品のポジショニングとして思い出すのが、奥田民生「イージュー★ライダー」のようなシンガロングしたくなる青春アンセムだ。世界観としてはSMAPの「俺たちに明日はある」のような甘酸っぱい気持ちにもさせてくれる絶妙なビート感も痛快だ。
曲中における“ああ、あの頃僕らは 何一つ知らないまま 本当を確かに感じていた”の一節が狂おしくもせつない。過去を振り返ることで、忘れかけていた本質と向き合うこととなる。そんな一期一会な感傷を“溶けたアイスクリームみたいに”と、神山羊は先行きの見えないオルタナティブな感情を音楽で表現する。
動画コンテンツや定額制音楽ストリーミングサービスの普及によって、ヒットの定義が変わリつつある令和元年。情報&作品過多の時代、星野源や米津玄師、あいみょん の台頭で変わりつつある最旬ポップマーケット。果たして、記憶や記録に残るヒット曲を誰が次世代に継承していくのだろうか? しかしながらポップミュージックは、時代の葛藤をいち早く具現化するアートフォームとして今もなお有効だ。令和元年が誇るポップアンセムとして、耳に残るフレーズが心をざわつかせてくれる神山羊による最新ロックチューン「アイスクリーム」に着目したい。
●10月23日、最新ミニアルバム『ゆめみるこども』をリリース!
神山羊は、今年4月に自主レーベルe.w.eより1stミニアルバム『しあわせなおとな』をリリースした。YouTubeやTikTokでバズったダンサブルな東洋医学によるアニメーション映像が目を惹く「YELLOW」と、気鋭のクリエイティブレーベルPERIMETRONが映像をプロデュースした叙情的な「青い棘」という、アンビバレンツな二面性を作品で表現してきた。
10月23日にリリースが決定している最新2ndミニアルバム『ゆめみるこども』も同様にパッケージとして2種構造で作られている。手に取れるフィジカルアイテムにこだわりを持つ神山羊らしいギミックだ。本作では、クリエイティブユニットmagmaがアートデザインを担当したダンサブルな「CUT」と、先述したクリエイティブアソシエーションCEKAIによる叙情的なアニメーション映像による「アイスクリーム」を軸としている。
神山羊の作家センスとして注目したいのが、大ヒット映画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』挿入歌として制作されたDAOKO「はじめましての気持ちを」への楽曲提供もある。繊細かつ美しい世界観を、ほのかに和を感じさせるメロディーとともに現在進行形のヒップホップ / エレクトロなトラックセンスで表現している。
J-POP誕生から30数年。もしかしたら日本の音楽シーンは、J-POPに変わるジャンル用語を必要としているのかもしれない。それこそ“歌謡曲”は70〜80年代、“J-POP”は90年代をイメージする言葉でもある。テン年代以降、トラックメイクも自ら担当するサウンドクリエイター&シンガーソングライターの誕生は、シーンに大きな衝撃を与えつつある。その未来を切り開く新しい才能が神山羊だ。
キーワードは、洗練されたグルーヴセンスと歌えるポップセンスの融合。神山羊は、日本が誇るポップミュージックを次世代クリエイターとともにロックのアティチュードでアップデートを試みている。引き続き、進化する神山羊サウンドに注目したい。
神山羊 オフィシャルサイト