京都大学式辞とJASRACに関する続報:問題はボブディランだけではなかった
京都大学入学式式辞における歌詞引用問題については既に書いています(「京都大学式辞でのボブディランの歌詞使用にJASRACが物言い」)。私が書いた記事も関連する他の報道も、すべてボブ・ディランの「風に吹かれて」の歌詞の使用が著作権法上の「引用」にあたるのではないかという話でした。しかし、問題となり得るのは「風に吹かれて」だけではありませんでした。
これとは別に式辞の末尾には詩人の茨木のり子氏の「6月」という詩がフルで載っています。これの引用該当性も当然議論の対象になり得るのですが、JASRACの話とは直接関係ないと思っていたので私の記事では別論扱いとしておりました。しかし、はてブのコメントで知りましたが、実は茨木のり子氏の詩には曲が付いているものがあり作品はJASRACに信託されています。そして、この「6月」という詩も複数の作曲家により曲が付けられており、JASRACに信託されています(タイトル画像参照)。つまり、前記事でこの詩の著作権者は茨木のり子氏の遺族と書きましたが、そんなことはなく著作権者はJASRACだったわけです(ひょっとするとJASRAC自身も気がついていなかったかもしれません)。なお、仮に茨木のり子氏の遺族がこの詩を式辞に使ってもかまわないという意向であったとしても著作権的には関係ありません。
ということで、京大とJASRACが式辞中での歌詞の利用の著作権法32条(引用)への該当性について争うのであれば、「風に吹かれて」だけでなく「6月」についても議論する必要があるでしょう。「風に吹かれて」は一部の利用であるのに対して「6月」は丸ごと利用なので引用に関する判断も分かれる可能性があります。