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光る君へ「香炉峰の雪」は、高校の古文で習っていた?

とらべるじゃーな!穴場ずらし旅、愛好家

関東圏の穴場ずらし旅の愛好家、とらべるじゃーな!です。以前に予備校で古文を教えていたことがあります。百人一首など古文の世界は、少しかじっておくと、旅行の世界が広がります。

大河ドラマ公式(外部サイト)

※香炉峰の雪に関わる一節が登場する枕草子は、教科書、受験教材等に幅広く採用されています。

京都駅から1駅の場所にある悲田院

大河ドラマ『光る君へ』では、疫病にかかった人たちが保護された、悲田院をまひろが訪ねるシーンがありました。

悲田院とは、どこか1つの寺院を指すわけではなく、身寄りのない老人や貧しい人、親のない子ごもを収容する福祉施設の総称です。平安京では東西2か所の悲田院が設けられました。

現在、京都に残る悲田院(江戸時代に移転、泉涌寺の一部)は、京都駅からJR奈良線でわずか1駅。東福寺駅で下車し徒歩15分の場所にあります。

悲田院と対照的に描かれた華やかな「登華殿」

引用 NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイト
引用 NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイト

庶民が疫病に苦しむ悲田院と対照的に描かれたのが、宮中の北寄りの奥にある、華やかな登華殿という場所でした。

この対照構造は小説(シナリオ)の構成では重要とされ、さらに宮中には道長のように悲田院に心を寄せる者もいたという、入れ子型の対照構造となっていました。

ある雪の日、天皇の正妻である中宮・藤原定子は「少納言、香炉峰の雪はいかがであろうか」と清少納言に問いかけます。

実際の香炉峰の形に似た香炉(東京都・西新井大師)
実際の香炉峰の形に似た香炉(東京都・西新井大師)

唐の漢詩の一節「香炉峰(香炉に似た山の名前)の雪は簾を撥(かか)げて看る」のことかとピンときた清少納言は、御簾(みす・すだれのようなもの)を巻き上げ外の景色を見せます。その機転は、定子や周囲の高い評価を得ました。

この名場面は、「香炉峰の雪に簾を巻くほどではないが、気は利く女性」のように慣用句的に使用された例もあります。

さて、この場面。多くの方が高校の古文で習っているはずです。

雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子参りて、炭櫃に火おこして、物語などして集まり候ふに、「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ。」と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせ給ふ。

(現代語訳)(宮中に)雪がとても高く降り積もったので、いつもとは異なり格子戸を下げ、炭櫃に火を起こし、おしゃべりなどをして集まり(藤原定子の)そばにお仕えしていると。「少納言(清少納言)よ、香炉峰の雪は今どのような様子だろうか」とおっしゃるので、(私=清少納言が)格子戸を下の者に上げさせ、すだれを高く巻き上げると、微笑みなさる。

《雪のいと高う降りたるを》はどう訳す?

《雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子参りて》の部分は、上に掲載した訳では、「雪がとても高く降り積もったので、いつもとは異なり格子戸を下げ」となっています。気温が下がれば雨戸を閉める現代人にも、分かりやすい解釈です。

しかし、多数の訳者は「雪がとても高く降り積もったのに、いつもとは異なり格子戸を下げ」と訳しています。前提として、日頃から格子戸は上げておくもので、雪景色が美しい日ならなおさら上げてあるはずという前提が感じられます。

何か事情があり格子戸が上げられておらず、それに気づいた中宮・藤原定子が風流に促したのでしょうか? 当時の気温、室内温度、服装の防寒性なども考えてみたくなります。

このように原典に当たってみると、さらに別の角度から楽しむことができます。

香炉峰の雪が出てくる原文や、清少納言の機転(ギャグのセンス)が分かる「中納言参り給ひて」は下のサイトに掲載されています。

古文テスト対策問題100題|大河ドラマ関連回も掲載(受験ネット)

穴場ずらし旅、愛好家

関東周辺の穴場★ずらし旅スポットを紹介。日本テレビに旅の専門家として出演(2023年4月)。Yahoo!ニュースエキスパート公式旅行ライター(2023年7月企画賞)。JTB運営・地理旅行検定取得済み。東京都在住、旅行歴500泊以上。

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