毎熊晟矢、小池龍太、中村拓海、成瀬竣平。内田篤人が引退した日に輝いた右サイドバックの”後継者”たち。
鹿島アントラーズの内田篤人がガンバ大阪戦を最後に現役を引退した。
ベンチスタートだったが、前半16分に広瀬陸斗のアクシデントで早くもピッチに立つと、カウンターのピンチには宇佐美貴史に対してタックルで最後の警告を受けながら、攻守に渡り現役最後の選手とは思えないパフォーマンスを見せて、最後は内田のクロスから劇的な同点ゴールが生まれた。勝利こそできなかったが、途中テーピングを増やしながらの集大成のプレーは心を揺さぶるものがあった。
時を同じくして、Jリーグの日曜マッチでは右サイドバックの選手たちがその内田に触発されたようなプレーで輝きを見せた。その中でも内田の後継者になって行く可能性のある伸び盛りの選手たちを紹介したい。
毎熊晟矢(V・ファーレン長崎)
3ー2で勝利した水戸戦、先制ゴールは畑潤基が左から出したボールが中央を抜けると、毎熊がスライディングで追い付いて折り返し、ディフェンスの間を破ったボールを吉岡雅和が押し込んだ形だった。大卒ルーキーながら、J2の首位を走る長崎の右サイドバックで主力を担う毎熊は縦の推進力と攻撃センス、さらに機を見極める判断力を見せている。本職FWの選手だが、リオ五輪代表を率いた手倉森誠監督が右サイドバックに抜擢。まだ粗削りなところはあるが、ポテンシャルは非常に高く、一気にブレイクすれば東京五輪の有力候補にも浮上しそうだ。
小池龍太(横浜F・マリノス)
強敵の広島に3ー1で勝利したマリノスの”影のMOM”は間違いなく、この右サイドバックだった。非対称の広島の攻撃に高い機動力と柔軟なポジショニングで対応し、時にバイタルエリアの中央で体を張り、相手FWの進撃を止める姿はシャルケ時代の内田篤人を彷彿とさせた。直接のアシストこそ無かったが、攻撃参加でもリズムを生み出した。今月末に25歳となる小池はレノファ山口、柏レイソルで成長を遂げて欧州に渡ったが、ベルギーのロケレンが破産した事情で、中断期間にJリーグ復帰した。苦労人の境遇だが、このパフォーマンスを継続してマリノスを再び上昇気流に乗せれば、FC東京からドイツ2部のハノーファーに移籍した室屋成に迫る評価を得て行くはずだ。
中村拓海(FC東京)
高卒2年目で飛躍も期待されたシーズンだが、FC東京U-23の活動が無くなり、なかなか出番がないまま、来年のU-20W杯を目指すU-19日本代表候補の招集からも遠ざかっていた。しかし、室屋成の移籍もあり、湘南ベルマーレとの試合でJ1先発のチャンスを得ると、相手のボール保持率が高くなる中でも粘り強い右サイドの対応を見せながら、積極的なプレーも。1−0のリードを持ったまま、後半16分に大卒ルーキーの中村帆高と交代した。まだまだJ1で90分の強度に耐えられるようになるには試合経験を重ねて行く必要がありそうだが、中村帆高はもちろん、同世代である左のバングーナガンデ佳史扶とも切磋琢磨しながらFC東京、さらには日本代表サイドバックの系譜をつないでいく存在になることを期待したい。
成瀬竣平(名古屋グランパス)
イタリア人のフィッカデンティ監督らしい”ウノゼロ”の戦いぶりで10連勝中だった川崎フロンターレを止めた名古屋グランパス。その一員として川崎の鋭い攻撃を封じ、特に過去3試合4得点の三笘薫と互角以上のマッチアップでほぼ何もさせなかったプレーは圧巻だった。せめては先制ゴールの起点となるつなぎと効果的なフリーランで貢献。終盤には右サイドハーフに上がって相手サイドバックを牽制した。カウンターの構えを見せながら、高いポジションを取らせなかった。
粘り強い守備とインテリジェンスの高さは内田篤人に通じるものがある。宮原和也という従来の第一人者が出遅れた事情で開幕前のキャンプからアピールを続けて勝ち取ったポジションだったが、現在は名古屋のハイインテンシティーなプレースタイルに欠かせない存在になってきている。2001年の早生まれで現在20歳。同じアカデミーの出身で、同学年の菅原由勢がオランダのAZで活躍しており、現場にも全く満足することなく向上心を持ち続ける気鋭の右サイドバックに注目だ。