台湾なのに安倍元総理の写真展が何故か盛況...そのワケは?
安倍晋三元総理を記念する写真展が台湾の台北市内で開かれており、台湾の人たちも多く訪れている。日本国内では森友・加計問題などもあり、その功績については評価が分かれるが、中国の脅威を日々感じる台湾では「台湾有事は日本有事」と明言した安倍氏に親近感を抱く人も多いようだ。
写真展は3月27日から4月10日までの予定。開催初日には台湾の蔡英文総統も訪れた。展示されている写真はおよそ200点。主に産経新聞が提供したものだが、昭恵夫人が所蔵するプライベートショットなども含まれる。
筆者が訪れたのは8日土曜日の午後。予想に反して来場者の多くは台湾人とみられ、年齢や性別の偏りは特に感じなかった。週末ということもあってか客足は途絶えず、なかなかの盛況ぶり。安倍氏の写真の前で記念写真を撮る人などもいた。主催者側によれば、来客はおよそ5000人に達したという。
会場にはメッセージボードが設けられていた。安倍氏への追悼や日台友好への願いの他に「台湾と日本が協力して敵に立ち向かい、共存共栄しましょう」「台湾を支持してくれてありがとうございます」といった中国の存在を意識したと思われるものも多かった。
「安倍さん、ずっと友達です。感謝の気持ちが私達の心に永遠に存在している」と日本語でメッセージをボードに貼り付けた年配の男性がいた。感謝の理由を尋ねると、こう答えてくれた。
「台湾は中国に圧力を受けています。そういう時に安倍さんが立ち上がって、『台湾有事は日本有事』と言ってくれた。本当に感謝しています」
安倍氏は2021年12月に台湾で開かれたシンポジウムにオンラインで参加し、「台湾有事は日本有事。すなわち日米同盟の有事」と述べ、中国を強く牽制した。台湾の人々にとってこの発言の印象は、日本人が想像する以上に深かったようだ。
今回の写真展について産経新聞台北支局の矢板明夫支局長は「外国の首脳の写真展がこれだけ注目されるとは思わなかった。背景には台湾の人々の危機感があると思う」と感想を述べている。
筆者が写真展を訪れた日は、中国が台湾周辺でパトロールと軍事演習を行うとした初日。蔡英文総統が訪米し、マッカーシー下院議長らと会談したことなどへの怒りの表明とみられる。このように日常的に中国の脅威に晒される台湾の人々が、その脅威に対峙するために国際社会の援護は不可欠と感じるであろう現状を見れば、安全保障政策において"強権ぶり"を発揮した隣国の指導者を頼もしく思えたこともうなずける。