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太田裕美 名曲を3人のアレンジャーとセッション。色褪せない「音楽の情景」を鮮やかに描く

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BS-TBS

来年50周年を迎える太田裕美が、3人のアレンジャー、スーパーバンドと名曲をセッション

毎回一組のアーティストと、日本を代表する編曲家・ミュージシャン達が生演奏にこだわり、その日限りのアレンジでセッションする音楽番組『Sound Inn S』(BS-TBS)。上質なサウンドを追求し、そこから生まれる“熱”を届け続けている。2月18 日(土)放送回に、来年デビュー50周年を迎える太田裕美が登場。変わらない透明感とキュートさを感じさせてくれる歌声で、代表曲の「さらばシベリア鉄道」「木綿のハンカチーフ」と、45周年の時に自らが作詞・曲を手がけた「桜月夜」を披露した。

大瀧詠一との思い出が詰まった「さらばシベリア鉄道」を十川ともじのアレンジで披露

十川ともじ
十川ともじ

一曲目は「さらばシベリア鉄道」(1980年)を十川ともじのアレンジで披露。大瀧詠一から“譲り受けた”エピソードを語り、松本隆と大瀧が作り上げたダイナミックかつ繊細な名曲を、かみしめるように大切に歌った。ドラマティックなストリングスとホーンが推進力と光と影を生み、哀愁漂うティンホイッスルの音色と、ティンパニの響きが広大な雪原の風景を浮かび上がらせる。太田の変わらない透明感のある柔らかな声が、松本が描いた歌詞の世界観を丁寧に伝えていく。70年代の後半以降、よりアーティスティックな志向になっていく太田の音楽性に、松本×大瀧という“職人”が彩りを与えた曲だ。この色褪せない名曲を十川のアレンジがさらに深みを与え、“深化”させている。

「木綿のハンカチーフ」を名匠・船山基紀が新たにアレンジ

船山基紀
船山基紀

二曲目は、太田が「宝物のような一曲」と語る代表曲のひとつ、松本隆×筒美京平の名コンビが作り上げた「木綿のハンカチーフ」(1975年)を、70年代からあらゆるジャンルでアレンジを手掛け、筒美京平作品を最も多くアレンジした名匠・船山基紀が新たにアレンジ。入念なリハを終えると太田は「テンポを少し落として欲しい」と船山にリクエスト。アーティストとアレンジャーのこんなやり取りを見られるのも、この番組の特徴だ。「物語性の強い作品なので、(松本隆さんの)言葉の世界をきちんと伝えるには、今の私にはテンポを少し落とした方が、より気持ちを伝えることができる」と、テンポにこだわった。歌、音楽の情景をきちんと伝えたいという強い思いだ。ストリングスとギターのフレーズが切なさを生むイントロ、原曲の温度感を大切にした船山のアレンジと太田の歌が、この曲の情景を鮮やかに映し出す。

筒美京平からの言葉を胸に、45周年の時自身が書いた「桜月夜」を笹路正徳のアレンジで披露

笹路正徳
笹路正徳

三曲目は、太田自身が作詞・曲を手がけたロッカバラード「桜月夜」を笹路正徳のアレンジで披露。45周年を迎えるに当たって、太田が筒美京平に楽曲の依頼をしたところ、筒美から「あなたにはこれまでたくさん曲を作ってきたから、これからはあなたが作りなさい」と、太田の未来に寄り添うような言葉をもらい、この曲を作ったというエピソードを語っている。「初めてのロッカバラード、初めてのメッセージソング」でもある「桜月夜」は、「今、どんな歌を歌うべきか」と思いを巡らせ、自身と向き合い作った曲だ。どんなことがあっても希望を持って生きていくという強い思いが込められている。ストリングスが美しく響く、ハーモニカの優しい音色が差し色になったアレンジで、ピアノを弾きながら歌う太田の歌声から放たれる言葉のひとつひとつに、昭和、平成、令和と3つの時代を歌い続けてきたシンガーだからこそ伝わってくる強い“芯”を感じさせてくれる。

「アレンジャーの皆さんが原曲の新たな世界見せてくださって、ご褒美のように嬉しかった」

全てのセッションを終えた太田は「素晴らしいアレンジャーの皆さんからの原曲へリスペクトと愛を強く感じ、それぞれのアイディア、発想で原曲の世界をさらに広げ、輝かせ、新たな世界を見せてくださったこと、まるでご褒美のように嬉しかったです」と語っていた。

太田裕美のパフォーマンスが楽しめる『Sound Inn S』(BS-TBS)は、2月18日(土)18時30分~からオンエアされ、さらに番組放送終了と同時に「Paravi」で未公開映像と共に、今回は特別に無料で独占配信される。

『Sound Inn S』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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