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帝京大学、大学選手権9連覇に必要な「制していく力」とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ぶつかり合いで先頭に立つ堀越キャプテン(写真は昨季の大学選手権決勝時)。(写真:アフロスポーツ)

 勝者に笑顔はなかった。

 関東大学対抗戦Aを7季連続で制していた帝京大学ラグビー部は12月23日から、9連覇を目指す大学選手権に登場。東京・秩父宮ラグビー場で組まれた準々決勝では関東大学リーグ戦1部・3位の流通経済大学に68-19と勝利も、王者が本来目指す水準のプレーができなかったと感じているようだ。特に28―14で終えた前半は、連続攻撃を受けた時の防御の連携をやや乱したか。

 1月2日の準決勝では、昨季の決勝を戦った東海大学と激突する。強敵とのカードに向け、内なるポテンシャルをどう引き出すか。試合後、岩出雅之監督と日本代表選出経験のある堀越康介キャプテンが会見で思いを明かした。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

岩出監督

「1か月くらい空いたんですかね(11月までに対抗戦全日程を終えていた)。久々のゲーム。特にディフェンスの部分で、試合勘がどれくらい戻るのかと思い観ていました。

 大味なところもありましたけど、後半は、一生懸命やっていたと思います。この時期ですから、いいところも悪いところも学生はわかっていると思います。気を引き締めて、このゲーム以上にしっかりしたものを次のゲームで出せたら、という思いです。

 細かなことを言えばきりがないのですが、リズムを壊されないよう。学生たちが様々なことを制していくという力も必要かと感じました。

 残り2試合。学生も、ここからはより本気になると思います。厳しいゲームを作っていけることを次に期待できるような反省をしたいです」

堀越

「メンバーはなれなかった人たちの分も痛いプレーをしよう、しんどいところへ行こう、と、話して試合に臨みました。いいところも反省するところもありました。これを次への糧とポジティブに捉えて、より一層の厳しさを東海大学さんにぶつけられるようにしたいです」

――「リズムを壊されないように学生たちが様々なことを制していくという力」。具体的には。

岩出監督

「状況にうまくアジャストしていく、ということです。例えばラック、モールの周りに(相手の)オフサイドプレーヤーがいても、すべてがすべて反則になるとは限りません。そんななかでもボールを継続する…。ここに、もう少し厳しさがあってもいいと思いました。ロールアウェーしていない選手(タックル後寝たままプレーする選手。ルール上は反則)にリズムを壊されないようその選手をきちんとコントロールする(当該の選手を密集から引きはがしたり、相手が反則をしていそうな状況をレフリーに可視化させたりする)こと、その前にボールを殺されないように(ランナーの)前進する力を高めること、モールについている相手をしっかりとはがしていくこと…そういうところです。同時に、それをする自分たちハートに甘さが出ないようにしていきたいです」

――ここで話に挙がった密集戦(ブレイクダウン)周辺での動きについては。

 

堀越

「自分たちとしては、ブレイクダウン周りの精度はまだまだです。ブレイクダウンは成長できる。それを次への準備に繋げていきたいです」

――前半の防御の連携について。

堀越

「流通経済大学さんの方が、気迫の部分で上回っていたと思います。そこで自分たちも前に出てディフェンスできればよかったのですが、受け身になってしまった。そこを後半修正できた部分は、よかったと思います」

――東海大学との戦いへ。

堀越

 

「フォワード勝負が鍵になると思います。スクラム、モールを帝京大学が制圧できるかどうかが、勝敗に直結する。あとは細かいスキルを丁寧に積み重ねていけば、いいアタックやディフェンスもできると思う。そこをしっかりやっていきたい」

岩出監督

「東海大さんは昨年度のチームと似ているところもありますが、昨年よりやや落ちているところもあって、シーズン(関東大学リーグ戦1部)の結果が2位になったのだと思います。しかし、その結果を踏まえて木村季由監督らチームが奮起され、次のゲームへ来られている(勝ち上がっている)のだと感じます。昨年は勝たせてもらいましたが、そういう基準ではなく、今年は今年の力をお互いに出し合って、しっかりしたゲームのなかで勝ち切れるように臨みたいです。どちらにせよ、勝たないと優勝までいかない。木村さんも、去年までと違った気概をお持ちだと感じます。それに負けないプレーを出し切りたいと思います」

 船頭は課題を「ポジティブ」な表現で総括し、指揮官は自分たちでコントロールできる領域を具体的に改善しようとする。2人の意志は、フィールドでどう反映されるのだろうか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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