グアルディオラはシティをCL制覇とプレミア優勝に導けるか?ギュンドアンの得点力と長期政権の思惑。
マンチェスター・シティが、強い。
シティはプレミアリーグで首位を快走している。チャンピオンズリーグでも決勝トーナメント1回戦でボルシア・メンヒェングラッドバッハを撃破してベスト8に進出。ユヴェントス、バルセロナ、アトレティコ・マドリーといった強豪クラブが敗退に追い込まれる中、リーグ戦とCLで安定感を維持している唯一のチームだ。
今季のプレミアでは第27節でマンチェスター・ユナイテッドに敗れるまで21連勝を飾った。そのシティを「強過ぎる」と形容しても差し支えないだろう。
【4-3-3】を基本布陣とするジョゼップ・グアルディオラ監督だが、今季はジョアン・カンセロのポジションを弄り変化を加えた。左右のサイドバックとウィングをこなせるカンセロが、試合中に実質ボランチとしてプレーする。「カンセロロール」と称される新たな役割が彼に与えられ、チームには攻守のバランスがもたらされた。
中盤ではロドリ・エルナンデスがアンカーを務め、イルカイ・ギュンドアン、ベルナルド・シウバ、ケヴィン・デ・ブライネらがローテーションでインサイドハーフに入る。昨季終了時にダビド・シルバが契約満了でクラブを去ったものの、その影響は感じさせなかった。
むしろ、それを逆手にとって、選手の進化を促した。顕著な例はギュンドアンである。「ギュンドアンが9番としてプレーできると言ったら、最初は笑われた」と語っていたグアルディオラ監督だが、指揮官の読みは正しかった。
ギュンドアンはプレミアリーグ第29節終了時点で23試合に出場して12得点をマーク。ラヒーム・スターリング(9得点)、リャド・マフレズ(9得点)、ガブリエウ・ジェズス(7得点)、フィル・フォデン(7得点を)を退けて現在チーム内得点王になっている。
ギュンドアンは2016年夏にボルシア・ドルトムントからシティに移籍した。以降、シティでは198試合に出場して38得点を記録(2021年4月2日時点)している。
ドルトムントでは、157試合で15得点をマークした。なお、ドイツ代表では44試合9得点。それほど得点力のある選手ではなかった。
「ギュンドアンはどこでゴールが生まれるかを読み取れる。どのタイミングでペナルティーエリアに入りシュートを打つべきかを知っているんだ」とはグアルディオラ監督の弁である。
「ギュンドアンの得点数が増えているのは、ボランチではなく、よりゴールに近い位置でプレーしているからだ。彼はゴールスコアラーに必要な2つの能力を備えている。マークを外すオフ・ザ・ボールとフィニッシュの精度だ。彼の調子は非常に良い。それを利用しない手はない」
ギュンドアンはドルトムントでユルゲン・クロップ監督に指導され、現在シティではグアルディオラ監督の下でプレーしている。世界最高峰の2人の指揮官の薫陶を受けた数少ない選手だ。
そのギュンドアンはクロップ監督について「感情豊かで激しい人だ。いまのリヴァプールを体現しているような人だね。(ドルトムントで)僕にとっては父親のような存在だった。生まれながらのモチベーターで、戦うための準備を整えてくれる」と語っている。
一方、ギュンドアンは同じマンションに住んでいるというグアルディオラ監督に関して「いつかウチに招待したいね。でも、いまはエレベーターやレセプションで時々会うくらいだ。彼は僕を尊重してくれているし、僕も同じ。接しやすい人だよ」と話している。
「ペップは戦術のディテールを注視している。それはもう、信じられないくらいにね。常にプランを考えている人だ。だからポリバレントでフレキシブルな賢い選手を好むんだ」
グアルディオラ監督はこれまでバルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、シティで指揮を執ってきた。
だが、ひとつのクラブで4シーズン以上指揮を執った過去はない。バルセロナ(2008-2012/タイトル獲得数14個)、バイエルン(2013-16シーズン/タイトル獲得数7個)、大きな組織で心身ともに疲弊した末にクラブを去っている。
今季、シティで初めて監督として5シーズン目を迎える。昨年11月には、2023年夏までの契約延長で合意した。グアルディオラ監督がマンチェスターの地で充実の日々を過ごしているのは間違いない。
ただ、彼がCLのタイトルを獲得したのはバルセロナ時代の2010-11シーズンが最後だ。「最重要なのはリーグ戦のタイトルだ」とグアルディオラ監督は一貫して主張してきた。それでも、無意識のうちにペップ・シティにビッグイヤー獲得を期待してしまうのは筆者だけではないはずだ。