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ホームランだと思ってゆっくり走っていて、二塁でアウトになる

宇根夏樹ベースボール・ライター
B.ウィットJr.(左)とJ.ポランコ Apr 29, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月29日の1回裏、ホルヘ・ポランコ(ミネソタ・ツインズ)は、前日の通算100本目に続き、101本目のホームランを打った……と本人は思った。けれども、記録はシングル・ヒット。二塁でアウトになった。

 打球は、ライトのフェンスの上部付近に当たって跳ね、フィールドに戻ってきた。ライトを守っていたニック・プラット(カンザスシティ・ロイヤルズ)が、それを拾って二塁へ送球。捕球した遊撃手のボビー・ウィットJr.が、ポランコにタッチした。上の写真が、その場面だ。

 アウトになった直後、何が起きたのか、ポランコはわからなかったようだ。一塁を回ってからも、ライトのほうを見ながら走っていたが、スピードはまったく上げていない。

 同じ試合の7回裏には、左右の方向こそ違うものの、同じような打球があった。ポランコのチームメイト、バイロン・バクストンが打ったボールは、レフトのフェンスの上部に当たり、フィールドに戻ってきたように見えた。

 ポランコの件があったからかどうかは不明ながら、バクストンはスピードを落とすことなく、二塁に達した。

 審判たちが協議した結果、こちらは、通算104本目のホームランとなった。映像では判然としないが、落下地点は、フェンスと客席の間にある、植え込みだったようだ。

 仮に、ホームランではないと判定された場合でも、ポランコと違い、バクストンはアウトにはなっていなかった。

 また、同じ日に行われた別の試合では、こんなことも起きている。マウンドにいたカルビン・フォーシェイ(タンパベイ・レイズ)は、ルイス・ロバートJr.(シカゴ・ホワイトソックス)が打った、遊撃前の内野安打になりそうなりそうなボールを捕り、振り向きざまに一塁へ投げた。間一髪のタイミングと思いきや、ロバートJr.は全力で走っていなかった。

 ホワイトソックスの本拠地、ギャランティード・レイト・フィールドの観客は、ロバートJr.にブーイングを浴びせた。

 昨シーズン、ホワイトソックスの監督は、選手に全力疾走をしないよう、指示を出した。ただ、当時の監督は、トニー・ラルーサだった。現在は、ペドロ・グリフォールが采配を振っている。また、今回のロバートJr.の打球は、ラルーサが言っていた「ルーティン・アウト」には該当しないはずだ。

 ラルーサの指示とその意図については、こちらで書いた。

「監督が選手に「全力疾走するな」。この減速指示はチームを加速させるのか」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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