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WBCで右膝を痛めてシーズンを棒に振る、クローザーの「年俸」と「代役」はどうなる!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
エドウィン・ディアズ Mar 15, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 エドウィン・ディアズ(ニューヨーク・メッツ)は、プエルトリコが準々決勝進出を決めた試合を締めくくった。けれども、その直後、歓喜の輪の中で右膝蓋腱を断裂。翌日に手術を受けた。今年のレギュラーシーズンとポストシーズンには、出場できそうにない。

 昨年11月、ディアズとメッツは、5年1億200万ドル(2023~27年)の再契約を交わした。この契約は、総額だけでなく年平均額の2040万ドルも、リリーフ投手の史上最高だ。総額はアロルディス・チャップマン(現カンザスシティ・ロイヤルズ)の5年8600万ドル(2017~21年)を超え、年平均額はリーアム・ヘンドリクス(シカゴ・ホワイトソックス)の1800万ドル(3年5400万ドル/2021~23年)を上回った。

 今年、ディアズの年俸は1725万ドルだ。この年俸は、保険金によって賄われる。ワールド・ベースボール・クラシックに出場するメジャーリーガーには、MLB機構が保険に加入している。クレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)が参加を断念したのは、これまでの故障歴からだろう、保険会社の審査に通らなかったのが理由だ。

 ディアズの場合、プレー中の故障ではないものの、フィールドで起きたことなので、保険が適用されると思われる。

 ただ、年俸は保険でカバーできても、ディアズが抜けた穴は大きい。契約から窺えるとおり、ディアズは、現時点のメジャーリーグにおける、最高のクローザーだ。昨年は、61登板で62.0イニングを投げ、奪三振率17.13――対戦した打者の過半数から三振を奪った――と与四球率2.61、防御率1.31を記録した。32セーブを挙げ、失敗は3度。セーブ成功率は91.4%だ。

 メッツでは、デビッド・ロバートソンアダム・オッタビーノブルックス・レイリードルー・スミスの4人が、先発投手もしくはミドル・リリーバーとディアズの間のブリッジとなる、セットアッパーとして予定されていた。

筆者作成
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 おそらく、クローザーとして開幕を迎えるのは、ロバートソンだろう。あとの3人は、シーズンを通してクローザーを務めた経験がない。オッタビーノのシーズン最多は2021年の11セーブ、レイリーは昨年の6セーブ。スミスは、メジャーリーグ初セーブをまだ挙げていない。ロバートソンは、2014~16年に3シーズン続けて30セーブ以上を挙げている。

 FA市場には、いずれもクローザー経験のある、ザック・ブリットンコリー・クネイブルケン・ジャイルズが残っているが、メッツがこのなかから誰かを迎え入れたとしても、ロバートソンが筆頭候補であることは変わらないはずだ。

 ロバートソンがクローザーとして機能しなかった場合は、他のセットアッパーをクローザーに据え、少なくとも夏まではやり繰りするだろう。その時点でクローザーが必要な状況なら、ポストシーズン進出の望みがなくなった、あるいは薄れたチームから、トレードでクローザーを手に入れようとするのではないか。例えば、チャップマンは、復活すればその候補となり得る。今秋のポストシーズンに、ロイヤルズがたどり着く可能性は低い。

 なお、プエルトリコは、準々決勝でメキシコに敗れた。ディアズに代わり、プエルトリコのロースターに入ったアレックス・クラウディオ(ミルウォーキー・ブルワーズ)は、この試合に登板しなかった。

 クラウディオについては、こちらで書いた。

「WBCで負傷したクローザーの代役は、大谷翔平と対戦したこともある元チームメイト」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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