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決勝トーナメントに突入するU-20W杯。グループリーグのパフォーマンスから優勝争いを展望する。

河治良幸スポーツジャーナリスト
ここまで3得点の堂安律はさらなる活躍で日本の躍進を牽引できるか。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

韓国で行われているU-20W杯はついに決勝トーナメントに突入する。ベスト16の顔ぶれと対戦カードは下記の通り。前評判から考えればアルゼンチンの敗退が目に付くが、ほぼ順当に強豪国が勝ち上がっている。

<ベスト16>

イングランド(A組1位)

韓国(A組2位)

ベネズエラ(B組1位)

メキシコ(B組2位)

ドイツ(B組3位)※

ザンビア(C組1位)

ポルトガル(C組2位)

コスタリカ(C組3位)※

ウルグアイ(D組1位)

イタリア(D組2位)

日本(D組3位)※

フランス(E組1位)

ニュージーランド(E組2位)

アメリカ(F組1位)

セネガル(F組2位)

サウジアラビア(F組3位)※

※3位のうち勝ち点の上位4カ国が勝ち上がり

チームのポテンシャルとグループリーグのパフォーマンスから、筆者の見解により現時点の強さをランク分けしてみた。

S:フランス

A:ウルグアイ、ザンビア、イングランド、ベネズエラ

B:韓国、アメリカ、イタリア、ポルトガル

C:日本、メキシコ、セネガル、コスタリカ、ドイツ

D:サウジアラビア、ニュージーランド

決勝トーナメント表と試合日程(FIFA公式)

Sランクのフランスは優勝の大本命。Aランクの4カ国はそのフランスに対抗しうるパフォーマンスを見せているチームだ。Bランクはここから戦い次第で優勝争いに加わりうる。Cランクはグループリーグの戦いぶりから考えればベスト8が当面の目標になる。日本もここに当てはまるが、1試合ごとに確かな成長を見せており、ベネズエラという高い壁を超えてベスト8に進出すれば一気にファイナルへ加速していく可能性もある。

前評判通りの強さで勝ち上がったのがフランスだ。組分けに恵まれた事情はあるにせよ、3試合で9得点0失点は見事で、しかも危なげなく余力を残す戦い方ができている。チャンピオンズリーグで大ブレイクしたFWムバッペなど、何人かのスペシャルなタレントが不参加となったが、エースのオギュスタンが3得点をあげるなど、将来を嘱望される主力選手たちが期待通りの力を発揮している。

ムバッペの代わりにスタメンを掴んだFWテュラムが輝きを放ったことも明るい材料だ。アンカーを担うキャプテンのトゥザールも名門リヨンの主軸に見合った働きで中盤をオーガナイズしている。注目のCBオンギュエンとディオップのCBコンビは相手アタッカーにほとんど脅かされていない。

不安材料は明らかな”格下”から、いきなり欧州のライバル国であるイタリアとの対戦になること。欧州王者を良く知るイタリアは強豪国でありながら”弱者の戦い”ができる厄介なチーム。先制点が入るまでは難しい試合になるかもしれない。

南米王者ウルグアイは日本と同居したD組で安定した戦いぶり。3戦目は南アフリカとスコアレスドローだったが、警告をもらっていたCBロヘルやベナビデスを温存しており、初戦で衝撃的な直接FKを決めた後に負傷したFWアマラルやMFワレルも復帰すれば、F組3位のサウジアラビアはそう難しい相手ではないだろう。筆者はフランスに次ぐ優勝候補と見る。

アフリカ王者のザンビアは”超アフリカ級”の身体能力を大いに発揮して、躍動感に溢れるサッカーを披露している。特に2点のビハインドから後半だけで4ゴールを奪って逆転したイラン戦は圧巻だった。エースのF・サカラも2得点と好調。抜群の個人能力を持つ右サイドのチルフヤも敵陣を切り裂いている。3試合目のコスタリカ戦は少し疲れが見られたが、中3日でリフレッシュしてドイツ戦に臨めるかどうか。

イングランドはチェルシーに所属する長身MFのソランケなど、プレミアリーグのビッグクラブで飛躍が期待される”スター予備軍”。素早い攻守の切り替わりから繰り出すダイナミックなサイドアタックはアルゼンチンに3-0で快勝した初戦から発揮され、さらに”完全アウェー”の韓国戦ではメンタリティの高さを示した。シンプソンン監督によれば、マンチェスターで起きた大惨事の悲しみを乗り越え、チームは一体感を強めている様だ。決勝トーナメントの1回戦は[5−2−3]という特殊なシステムでテクニカルな速攻を繰り出すコスタリカが相手。一筋縄では行かないだろうが、フルタイムで高いインテンシティーを維持できれば、決め手ではイングランドが一枚も二枚も上だ。

ベネズエラはドイツ、メキシコと同居したタフなBグループで3連勝。10得点無失点と最高レベルの成績で決勝トーナメント進出を果たした。A代表を兼任するドゥダメル監督が率いるチームは堅実な守備と個性豊かな攻撃が噛み合い、大会前からの評価はうなぎ上り。ただ、90分ハードワークするスタイルがここから先の戦いでどこまで維持されるかは未知数だ。決勝トーナメント1回戦では日本と対戦するが、ここまでの相手よりコンパクトに高い位置からボールを奪いにくる相手は思わぬ鬼門になるかもしれない。

筆者の評価ではこの5カ国が優勝候補と見る。ただし、Bランクのチームもチームのポテンシャルは高く、攻守がうまく噛み合い一体感が生まれれば、先の戦いでAランクのチームを上回ることもあるだろう。開催国の韓国は明らかに初戦からトップギアで入っており、チームのインテンシティーが右肩下がりになるリスクもあるが、地元の熱気が後押しすればフランスとは逆の山からファイナルに駆け上がる可能性もある。逆にイタリアはいきなりフランスと対戦する。U-19欧州選手権の決勝で0-4の大敗を喫した相手だが、ここを乗り越えれば一気に先への視界が開けて来る。

日本はD3位で進出した結果と内容からCランクに入れたが、大会の中で最も成長が見られるチームの1つであり、エースFWの小川航基が離脱するアクシデントに見舞われたものの、チームの一体感は高まっている。特にイタリア戦で4人抜きのスーパーゴールを決めた堂安律のプレーは自信に満ちており、先の戦いでもチームを牽引するはず。すでに3得点をあげており、ここからの勝ち上がり次第でベスト11、さらにはゴールデンボールの候補にもなりうるが、まずはベネズエラの堅固なディフェンスをこじ開ける殊勲のゴールを期待したい。

Cランクで最も不気味な存在がドイツ。B組の3位で何とか決勝トーナメントに進出しており、3戦目はバヌアツに思わぬ苦戦を強いられて3-2と辛勝している。ただし、1つ1つのスキルをチェックすると個の能力はAランクのチームに匹敵するものがあり、きかっけ次第で飛躍的に上昇して来るポテンシャルは秘めている。チームの主軸として期待されながら、ここまで鳴かず飛ばずのFWオクスがザンビア戦でゴールを決めれば流れも変わってくるかもしれない。

ここまでの戦いぶりをベースにランク分けを行い、優勝戦線を展望してみたが、この年代は1つの勝利で大きく成長する一方で、1つのミスがパフォーマンスの低下につながる危険もある。その意味では決勝トーナメント1回戦を終え、ベスト8が出そろった時点でまた評価も変わっているかもしれない。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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