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全国学力テスト「正解教える」への疑問

前屋毅フリージャーナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)が4月18日、全国の全小学校6年生と全中学校3年生を対象に行われた。その前日に、知識に関する国語Aの漢字問題と正解を教員が生徒に教えるという「事故」が茨城県の中学で起きていたことがわかった。

文科省が明らかにしている。それを、『読売新聞』(4月19日付 電子版)は次のように伝えている。

「発表などによると、同校の1学級で17日、国語の授業の際、生徒から漢字の出題の有無について質問があり、教諭が34人の生徒に対し今年度の問題6問を板書し、正解を示した。教諭は事前に見ていた問題を昨年度の問題と勘違いしたという」

昨年度の問題と勘違いして今年の問題と正解を教えてしまった、ということで「事故」である。ただし、記事(文科省発表)には不可解な点もある。

生徒が教員に尋ねたのは、「漢字の出題の有無」である。漢字の問題が出るかどうか、であるから、答は「出る」「出ない」で済むはずだ。

にもかかわらず教員は、わざわざ問題と正解を板書して示している。そこまでする必要があったのだろうか。

そこで教員は、昨年の問題を示すつもりだったのだが、「勘違い」で今年の問題を示してしまったという。そこから見えてくるものは、教員が事前に問題を知ることができたという事実だ。

それを、文科省は問題にしていないのだろうか。ただ、記事が問題にしなかっただけのことなのだろうか。

全国学力テストをめぐっては、自治体や学校のあいだで「競争」する雰囲気が高まっている。成績を上げるように、教員にもプレッシャーがかかっている。過去問をやらせるなどの対策をとらせている学校も少なくない。

そうしたなかで、事前に問題を知っていれば、露骨に正解を教えるようなことはないとしても、ヒント的なものを生徒に示してしまうことはあるかもしれない。そういうリスクを避けるためには、生徒はもちろん、教員も事前に問題を知らないほうがいい。そんな必要はない、と文科省や学校は考えているのだろうか。

今回の件は「事故」なのだろうが、いろいろな問題もふくまれている気がする。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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