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アップル、パテントトロールVirnetXとの10年越しの戦いに勝利か?

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

あまりにも長く続いたのであまり話題にもならなくなってしまった感もありますが、VirnetXというパテントトロールがVPN関連特許によってアップルを訴えていた訴訟の1つ、2020年に約5億ドルの損害賠償金支払をアップルに命じる評決が出ていたのですが、最終的にアップルの勝利で決着する可能性が増してきました(参照記事)。訴訟で使用された特許2件の無効が確定しそうだからです。

パテントトロール対アップルの訴訟は日常茶飯事ではありますが、この事件は、特許権の範囲が広く、かつ、そう簡単に無効にできそうにないこと、そして、損害賠償の金額が大きい点が特徴的でした。

VirnetX社の特許のポイントは「DNSによるアドレス解決の時に相手が安全なサーバであれば動的にVPNを構築する」というシンプルなものです(ゆえに強力です)。実効出願日は1998年10月という世界がドットコム時代に向かうまさに変革期だったので、一般的に言えば、無効理由も見付けにくいタイミングの出願です。

なお、特許権は2019年に満了していますので過去の権利侵害による損害賠償のみが争点になっています。この特許により、VirnetX社はマイクロソフトから約2億ドルの和解金を獲得しており、なかなか手強い特許であることがわかります。

ところで、この事件に関しては2016年に「アップルに740億円支払を命じさせた特許の驚くべき内容」という記事を書いていました(あまりに昔なので自分でも書いたことをすっかり忘れており、検索して気が付きました)。今回は、そこで紹介した特許のうちのUS6502135、US7490151という特許2件の無効審決が米国連邦巡回区控訴裁判所によって確認されたということになります(VirnetX社は上訴を検討中と述べています)。

また、同じく2016年に「バーネットX対アップルの特許訴訟の鍵を握るかもしれない日本人の論文」という記事も書いているのですが、そこで触れたように、東大の木内貴弘教授が1996年に書かれた論文が特許無効化(新規性・進歩性欠如立証)の決め手となっています。日本人が書いた論文がアップルを救ったというちょっと胸熱な展開となりました。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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