姫路で初の広島戦、秋山が好投して西田は今季1号を放つも敗戦《8/30 阪神ファーム》
きのう30日は、兵庫県姫路市の市立姫路球場(ことし7月1日に命名権を取得した姫路ケーブルテレビの愛称により、現在は『ウインク球場』)でのウエスタン・阪神-広島戦でした。全面改修工事が終わってリニューアルオープンした昨年は、8月31日に中日と対戦。ルーキー・横田選手が1試合で3本のホームランを放り込んだ球場です。ことしも期待されていた方が多かったでしょうに、横田選手は28日の試合でフェンスにぶつかったため大事を取って不参加。本人も、絶好調だった昨年の夏を思い出して浮上のきっかけにしたかったかも。残念でした。
でも西田選手が今季1号を放ち、秋山投手は次の1軍先発に向けて結果を残す登板となりました。そうそう、昨年は先発した島本投手が4年目でプロ初勝利を手にした、縁起のいい球場でもあります。ことしは負けてしまったけれど、最後に登板して0点に抑えた島本投手。昨年に続いて、いい秋を迎えられるといいですね。では試合詳細と、秋山投手や西田選手、そして西田選手のホームランを喜ぶ方のコメントをご紹介します。
《ウエスタン公式戦》8月30日
阪神-広島 27回戦 (姫路)
広島 100 001 020 = 4
阪神 001 000 000 = 1
◆バッテリー
【阪神】●秋山(3勝4敗)-山本-島本 / 清水-岡崎(9回表)
【広島】野村(4回)-○佐藤(4勝)(1回)-辻(2回)-河内(1/3回)-永川(2/3回)-Sザガースキー(2敗7S)(1回) / 中村亘-倉(8回裏)
◆本塁打 西田1号ソロ(野村)、シアーホルツ4号ソロ(秋山)
◆二塁打 シアーホルツ、中東
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率
1]左:柴田 (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .359
〃打捕:岡崎 (0-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .298
2]右:緒方 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .237
〃打一:黒瀬 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .184
3]遊:北條 (4-0-0 / 3-0 / 0 / 0) .249
4]指:ペレス (3-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .325
〃走指:田上 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .267
5]中:中谷 (3-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .301
6]三:陽川 (4-0-0 / 0-0 / 0 / 1) .204
7]二右:荒木 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .163
8]一:西田 (2-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .225
〃打二:森越 (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .291
9]捕:清水 (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .292
〃打左:一二三 (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .205
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
秋山 7回 89球 (6-2-2 / 2-2 / 3.16) 141
山本 1回 34球 (3-2-2 / 2-2 / 1.86) 139
島本 1回 9球 (1-0-0 / 0-0 / 5.45) 143
試合経過
阪神先発の秋山は1回、先頭の中東に左前打され、犠打で1死二塁となって堂林の左前タイムリーで早々に1点を失います。しかし2回は2死から中村亘に中前打を許すも無失点、3回は三者凡退と丁寧なピッチング。すると広島・野村の前に1回、2回と完璧に抑えられていた打線が3回、西田のライトへの今季1号ソロで追いつきました!
4回の秋山は先頭のシアーホルツに右越え二塁打を浴びますが、遊ゴロ2つで2死を取り走者は進めず、天谷に四球を与えたものの無失点。5回は先頭の庄司にストレートの四球、犠打で1死二塁とするも、安部はこの日最速141キロの真っすぐで見逃し三振、堂林は投ゴロで0点に抑えました。しかし6回、先頭のシアーホルツにセンターバックスクリーンへホームラン…。ジャンプしてフェンスのへりを掴み、ぶら下がった中谷の上を越えていく勝ち越しの一発です。
1死後、岩本に左前打されたものの天谷は遊ゴロ併殺打に打ち取って、7回は三者凡退。秋山は1点のリードを許して交代しています。ところが8回、山本は安部に右前打、堂林に左前打、シアーホルツのショート内野安打で無死満塁として、下水流は三ゴロで本塁封殺だったのですが、岩本は初球が左手首への四球で押し出し。続く天谷にも四球でまた押し出し。あとは連続三振に切って取るも、痛い2点を失いました。
一方の打線は4回にペレスの四球と中谷の中前打、5回は2死から清水が三塁線を抜ける左前打と走者は出しながら得点なし。6回と7回は三者凡退。4対1とされた直後の8回裏は代打攻勢で、一二三の左前打と岡崎の四球で1死一、二塁になっただけ。
そして9回、島本が先頭の中東の左中間二塁打、犠打で1死三塁のピンチを迎えますが、堂林は遊ゴロ。まずホームで中東をアウトにし、そのあと陽川、森越と渡って併殺!結果的に3人で片づけています。その裏は苦手なザガースキーに対し、ペレスが左前打して中谷は四球で無死一、二塁。逆転に望みをつないだものの陽川は三飛、荒木は見逃し三振、森越は空振り三振で試合終了。ザガースキーから点を取れない阪神です。
次は1軍で、3年ぶりの勝利を!
秋山投手はまず「立ち上がりは、ちょっとマウンドが硬くて踏み込みが弱いままいっちゃったんで…」と、初回の失点を悔やみました。「あとは投げ急ぐことなくいけたけど、庄司へのフォアボールがなければよかったかな」と、これは5回、先頭の庄司選手に与えたストレートの四球のことですね。なお、追いついてもらいながら許したシアーホルツ選手のホームランについては「あれは勝負にいって打たれたので仕方ないです」とのこと。
リードした清水選手によれば、変化球は「ほぼカットボール」だったそうで、何球か緩いカーブがあったくらいです。状態は尻上がりで、特に5回はグッと伸びてくる秋山投手らしい真っすぐがありました。清水選手は「そうですね、よくなりました。でも6回のホームランですよ。ストライク先行で打たれた。1回の堂林もそうだったので、そこが課題かな」と言います。ルーキーイヤーから秋山投手の球を何度も受けてきた清水選手だけに、求めるものは多いでしょう。
試合後、秋山投手から「プロ初勝利ってここでしたか?」と聞かれ、それは淡路だったと答えたんですが、何だか引っかかる様子。確認したところ、やはり秋山投手がルーキーだった2010年5月30日、淡路でのウエスタン・オリックス戦で初勝利を挙げています。すると「じゃあプロ初ヒットか!」と秋山投手。これは帰宅後に調べました。その通り、2010年6月6日のウエスタン・中日戦(姫路)で放ったタイムリーが初安打、初打点。球場は新しくなったけど、どこか記憶に残っていたんですね。
試合後に1軍合流が決まった秋山投手。きょう31日、さっそく甲子園での投手指名練習に参加しました。6日の中日戦(ナゴヤドーム)で先発する予定です。ことしは1軍先発でいいピッチングを見せているので、今度こそ白星がつきますように。あ、その前に今週前半の1軍の広島戦がちゃんと消化されることを祈らなくてはいけませんね。雨、降らないで!
今季1号に「遅いっ!(笑)」
3回に一時は同点に追いつくソロホームランを打った西田選手。打ったのは132キロのカットボールですね?と聞いたら「なんで打ってないのにカットボールってわかるんですか」と突っ込まれました(笑)。確かに。打った人が「カットか真っすぐ」と言うんだから、そうですよね。「いい感じでとらえられたなと思います。でも、あんなに飛ぶとは思わなかった!」と驚いた様子。
今季1号については「遅いっ!」と言って笑っていました。でも長打が、しかもホームランが出たことは嬉しいでしょう。「ずっとインコースの真っすぐに詰まっていて、濱中コーチに『詰まりすぎやろ~』と言われていたので、打ててよかったです。続けます!」と話しています。
濱中打撃コーチは「にっしゃん、今季1号!」とニコニコ。「右ひざが早く開いてしまうことが多くて、それを修正していたんですよ。だいぶよくなって、きのう(29日)は逆方向へ2本打った。まあ本人は逆方向を意識していますが、僕はあえて“引っ張れ”と言ってます。きょうのホームラン、よかったでしょう?入ってきた時からバットコントロールがいいバッターでしたもんね。拾うのもうまいし。もともとインコースをうまく打てるけど、逃げていく球が苦手だった」
そして「よく練習してますからね。朝は走って、夕方は素振りしたりティー打ったり。本当によくやってる。やれば結果がついてくることを証明したと思います。シーズン中盤にちょっと結果が出なかったけど、今また出ているのは継続してやってきたから。つまり、いつかは結果に表れるということですよ。これを続けて欲しいですね」と、しみじみと語る濱中コーチでした。
とっても大きな縁の下の力持ち
もう1人、西田選手の今季1号を自分のことのように喜んでいたのは、ミズノ株式会社の中元翔さん(31)です。昨年10月から阪神タイガースのファーム担当となり、用具提供している選手たちのケアはもちろん、チームの練習や試合に必ず中元さんの姿があります。中元さんの前に阪神ファーム担当だったミズノの方も、普段の練習や試合に加えキャンプやフェニックス・リーグも、まるで球団スタッフのようにサポートしてくださっていました。
でもことし、1人で残ってバットを振る西田選手が、中元さんにトスを上げてもらってロングティーバッティングをするようになったのは6月。それまでは1人で黙々とバットを振りながらグラウンドを周回していたんですが、いつからか一塁側のブルペン前で2人の姿を見かけるようになりました。開幕当初の好調が嘘のように打てなくなり、悩んでいた頃です。野球経験者である中元さんとて、1時間以上もトスを上げるのは体力がいるでしょう。しかも、遠征に行っている時や雨の時、また整備のためにグラウンドが使えない時を除いて毎日、夕暮れまでです。
「ホームラン、感動しました!いやーよかったです」と試合後、顔を見るなり言われました。喜び方が何だか“お兄ちゃん”のようです。「プロやから結果が出ないと意味がない。自分が手伝いをして結果が出て、ほんまによかった。ヒットが出るようになってきても、長打がないと言っていたのでホームランは嬉しいでしょう。やってきたことが形になることのすごさを感じます。当たりも完璧でしたね」。やっぱりお兄ちゃんみたい(笑)
選手の活躍が何よりの“報酬”
実はこのコンビ、6月からではなく2月のキャンプでもう始まっていたとか。「西田選手が安芸キャンプへ移動してきた時です。宿舎の屋上にティーバッティングができるよう器具が置いてあって、そこで僕がトスを上げました。あれが最初」と中元さん。張り切って行った沖縄キャンプだったのに、第4クールから安芸へ移動してきたんですよね。思い出しました。
でも考えたら西田選手はSSKに用具提供してもらっているわけで、そのあたりが気になったんですけど、中元さんは「僕は“タイガースのファーム担当”として、やれることはやりたいと思っています。7年間、営業をやっていて“人と人”で仕事してきたから、今も変わらず人と人でやっていこうと決めている」と言います。その“人”のひとり、西田選手のホームランは最高の贈り物ですね。
「打てない試合は僕も悔しかった。打てたら僕も嬉しい」
シンプルだけど、ものすごく深い言葉に涙腺が反応しかけました。濱中コーチのコメントもです。そのあと中元さんは「きょうはよく寝られそうです!1人で祝杯をあげときます」とニコニコ顔で言い、最後は再び真顔になって「次は甲子園で打ってほしいですねえ」とエールを送りました。「1軍で打つためにやっていることなので」という西田選手。その時を信じてバットを振り続ける日々は終わらない、と誓っています。