マイクロソフト、「クラウド」は好調も「モバイル」は不調 ─ 旧ノキア部門買収後初の決算は増収減益
米マイクロソフトが7月22日に発表した2014年4〜6月期の決算は、売上高が233億8200万ドルで1年前に比べ18%増加した。純利益は46億1200万ドルで同7%減。買収した携帯電話事業が売上高を押し上げたが、同部門の営業赤字が利益を圧迫した。
今回はフィンランド・ノキアの旧携帯電話事業買収後初の決算。またこの4〜6月期は、サティア・ナデラCEO(最高経営責任者)就任後、同氏が全期間を通してCEOを務めた初めての四半期だった。
旧ノキアの事業、約7億ドルの赤字
ナデラCEOは就任以来、「モバイルファースト、クラウドファースト」とのスローガンを掲げており、低迷するパソコン市場に依存しない戦略を打ち出している。
そうした中、スティーブ・バルマー前CEOが買収を決めた携帯電話事業が業績にどう影響を及ぼすのか注目されていたが、同社はまだモバイルでは成果を出せていないようだ。
4〜6月期の業績を見ると、旧ノキアの携帯電話事業による収入は19億8500万ドル。この事業はマイクロソフトの売上高を押し上げ、2ケタ増収に寄与したが、営業損益は6億9200万ドルの赤字となり、減益の主要因になった。
4月25日に買収手続きを完了して以降、マイクロソフトが販売した「ルミア(Lumia)」シリーズのスマートフォンは580万台。一方で米アップルが同日公表した4〜6月期のアイフォーンの販売台数は3520万台だった。
世界のスマートフォン市場におけるマイクロソフトの販売台数シェアは5%未満で、同社は苦戦を強いられていると米ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。
クラウド関連の収入、147%増
ただし、スローガンのもう1つである「クラウド」をはじめとするほかの事業部門は好調だった。例えば企業向け事業「コマーシャル」の売上高は134億8000万ドルで1年前から11%増加した。
各種クラウドサービスと企業向けサービスを含むコマーシャル事業のその他の収入は同44%増で、クラウド関連の収入が147%増加した。クラウドで業務ソフトを提供する「オフィス365」とITインフラを提供する「アジュール(Azure)」はともに2倍以上に拡大した。
このほかパソコン市場に関連する事業も好調だった。ソフトウエアのライセンス販売収入は同6%増の112億2200万ドルで、ウィンドウズのボリュームライセンスが同11%増加した。
市場調査会社の米ガートナーによると、「ウィンドウズXP」のサポート打ち切りなどを背景に、法人市場でパソコンの買い替えが進んでいる。米インテルは先頃発表した4〜6月期の決算でパソコン向けの半導体販売が伸びたと報告していたが、マイクロソフトのエイミー・フッド最高財務責任者(CFO)は、同社のパソコン向け製品にもインテルと同様の成果があったと述べている。
最大1万8000人を削減するリストラ策
そうした中、投資家らは今、マイクロソフトが利益を不採算事業に注ぎ込み続けるのではないかと懸念している。同社は万年赤字の検索サービス事業に巨額の資金を投じてきた。今後は旧ノキアの事業に対しても同様に資金を注ぎ込むのではないかと危惧しているという。
ただ、ナデラCEOは先頃、今後1年間で最大1万8000人を削減するリストラ策を発表した。このうち1万2500人が旧ノキア部門に所属している人員。決算発表の電話会見でもナデラCEOはコスト削減の継続を約束しており、投資家をいくらか安心させたと米ニューヨーク・タイムズは伝えている。
なおナデラCEOは、2年後の6月末で終わる2016会計年度までに携帯電話事業の営業赤字が解消し、検索サービスの「ビング(Bing )」は黒字化すると見込んでいる。
(JBpress:2014年7月24日号に掲載)