セブンペイ(7pay)終了 外国人にも便利なクレジットカードじゃダメなの?北欧セブン「遅れてる会社」
2019年8月1日、株式会社セブン&アイ・ホールディングスが「7pay(セブンペイ)」サービス廃止のお知らせとこれまでの経緯、今後の対応に関する説明についてを公式サイトで発表した。
なぜクレジットカード支払いではだめなのだろう?
筆者は、2019年7月、オランダやデンマーク、スウェーデンの食品ロス削減事例を取材して廻っていた。
デンマークやスウェーデンは、空港をはじめ、街中にセブンイレブンの店舗が出店しており、買い物で何度も利用した。
その時に、現地にとっては「外国人客」にあたる筆者にとって、とても便利だったのが、「クレジットカード払いOK」のシステムだ。
セブンイレブンに限らず、国全体がそうだった。
日本でも使えるとは聞いているが、北欧ほど、クレジットカードがデフォルト(基本)の支払い方にはなっていない、と思う。
スウェーデンでは、国内3箇所を渡り歩いたが、その中で、唯一使えなかったのが、ストックホルムを走る市バスの乗車料金のみ。その時ですら、運転手に「セブンイレブンで専用の(公共交通機関用の)カードを買ってきて」と言われた。
3カ国をまたいで次々、移動しながら過ごす外国人にとって、セブンイレブンはじめ、どんな店でも「クレジットカード払いOK」は、たった一枚のカードでどこでもなんでも使えるので、「超」という文字を10個ぐらいつけたいほど、便利だった。
最近、日本では、「セブンペイ(7pay)」をはじめとした「なんとかペイ」が流行っている。だが、それは、来日した外国人観光客や出張者にも、すぐに理解できる、使いやすいものなのだろうか?
なぜ、企業ごとに、店ごとに、「なんとかペイ」を使い分けなければならないのだろう?
キャッシュレスは、Suicaか、あるいはクレジットカード払いのみ、ではだめなのか?
日本人ですら「なんとかペイ」を使い分けるのは面倒なのに、外国人の立場に立てば、なおさら面倒くさい。日本人は全員が英語を話してくれるわけではないし。親切なやり方ではないのでは?
スウェーデンではセブンイレブンといえば「ちょっと遅れている会社」
デンマークのセブンイレブンでも、スウェーデンのセブンイレブンでも、たった一枚のクレジットカードで事足りて、とっても便利。
でも、現地の方に伺ったところ、スウェーデンでは、セブンイレブンといえば「ちょっと遅れている会社」という印象なのだそうだ。
スウェーデンといえば、世界のSDGs達成度ランキングで、世界1位・2位を競うほど、環境配慮の対策が進んでいる国だ。
スウェーデンのセブンイレブンの中には、グリーンエネルギーを使っている店舗もある。「グリーンエネルギー」とは、太陽光や風力、バイオマス(生物資源)など、環境に負荷をかけない、二酸化炭素を出さない(あるいは排出量が少ない)エネルギーのことを指す。
また、スウェーデンのセブンイレブンでは、ベジタリアン向けの製品や、フェアトレード(公平貿易)のジュース、グリーンエネルギー(風力エネルギー)で作ったチーズのサンドウィッチなども販売している。
包装なしの「量り売り」も実施している。
デンマークのセブンイレブンは、余ったサンドウィッチや他の食品を、余剰食品を活用する団体へと定期的に寄付していた。
日本よりも、ずっと、ずっと、ずっと、進んでいるのではないだろうか。
ここまでやっても、スウェーデンでは「セブンイレブンは、ちょっと遅れている会社」と言われ、そういうイメージを持つ人が結構多いと言う。
なぜなのだろう?
個々の店舗が環境配慮のもと、個性や理念を活かした商売をしている
スウェーデンは、小学生など低年齢の時期から環境教育が徹底しており、経済性の追求とともに、持続可能性を考えることが土台となっている。
経済面さえ良ければいいのではない。持続可能性もしっかり考える。
個人商店であれば、個々の店舗が、環境配慮を考えた上で、その店独自の商品を扱い、独自の店構えを考え、お客様を歓迎している。
個人商店ではない、チェーンのスーパーマーケットでも、やはり、店ごとに個性があり、違いがある。
たとえばスウェーデンでは最大手のICA(イーカ)というスーパーマーケットも、国内の店舗でも、それぞれ置いてあるものや店構えは違っていた。
また、スウェーデンのあるホテルの朝食は、おそらく世界でもトップランクぐらい、愛情込めて準備された朝食だった。
そこへ行くと、どこへ行っても同じ顔をしているセブンイレブンは、買い物をする楽しみが、あまり得られないのだ。
スウェーデン国内3箇所を廻ったうち、1箇所目は、ホテルの隣にセブンイレブンがあった。折に触れて店内を見て廻ったし、チョコレートやビールなど、毎日、食料品の買い物もたくさんしたが、日中は、お客さんがほとんど居なかった。
だって、歓迎してくれる、個性的で、買うのも選ぶのも楽しいお店が他にたくさんあるのだ。何を好き好んで、わざわざ、そうでない店に行くだろう?
日本に長くいるとわからないかもしれないが、島国の日本より、2歩も3歩も進んでいる欧州に身を置くと、この感覚は、とてもよくわかる。
一つ一つのものに愛情込めて毎日を暮らしている『魔女の宅急便』のモデルとなった島
スウェーデンには、スタジオジブリの映画『魔女の宅急便』のモデルとなった島がある。
現地の人が説明してくれた。ここは、島内すべて、中心部だけでなく、どこでも、小さなことに、愛情を込めて、毎日暮らしていることが伝わってくる。
「商売」とは、本来、関わるすべての人に喜びを与えるもの
筆者がコンビニの取材をしたきっかけは、スーパーマーケットの取材企画を立てた2017年春、Yahoo!編集部から「スーパーを取材するならコンビニも取材しては?」とご提案いただいたことだ。
以来、「こんなに捨てています・・」コンビニオーナーたちの苦悩という記事や、販売期限切れの弁当はどうなる?コンビニオーナー座談会でわかった「寄付は絶対しない」の理由とはという記事など、本部と加盟店主(オーナー)に取材をして記事を書いてきた。
中でも印象に残っているのは、あるオーナーから伺った次の言葉だ。
「人間らしい暮らしをしたい」
「食品ロス」をテーマに取材をしているのに、彼ら・彼女らの悩みは、食品ロスの多さに留まらない。
健康を害する人、家族を喪う人、命を亡くす人、さまざまな事例を目の当たりにしてきた。
今、この状況は、「自分がやったことは自分に返ってくる(バチがあたっている)」と、言わざるを得ない。
商売とは、自分や、自分の周りで関わる人に、喜びを与えるものではないか。
支払いは日本人だけでなく外国人客にも便利なクレジットカード払いOKにし、食べられるものは、見切り(値引き)してでも売り切るようにしたらどうか。そして、そもそも作り過ぎない、売り過ぎない。それはSDGsの精神でもある。
SDGsの専門家が「日本は周回遅れ」とおっしゃっていたその訳が、欧州に行ってみて痛感された。見切りすらしないなんて、恥ずかしい。情けないほど遅れている。
日本の大手コンビニの多くは、売れもしないのに店の棚にパンパンに詰めさせて、真夏に売れないおでんも、廃棄することがわかっていて8月から販売するなんて、もうオーナーが気の毒過ぎる。おでんの原材料は、枯渇している海洋資源を使っているのではないのだろうか。大量に準備して大量に廃棄するなどという資源の無駄使いをしている場合なのだろうか?もう地球が1個では足りないくらい、逼迫(ひっぱく)した事態なのに。自分が魚になった気持ちで捨てられることを考えたことがあるのか?食べ物は「モノ」じゃない。
日本の大手コンビニは、名前がそこそこ知られていて、マスメディアも省庁も忖度しているそうだが、"So what?"(だからなんなの?)
幼い頃から「持続可能性」を土台に考えている欧州の人たちの興した企業に比べたら、売上だけを優先し、なんだかいいことやっている風なパフォーマンスをしている「裸の王様」としか言いようがない。いいかげん、自社や店舗で働いている人の叫びに耳を傾け、顧客の立場を慮ってはどうか。