公的年金(GPIF)が3四半期連続の運用赤字、教訓をiDeCoやつみたてNISAに生かすには?
日本の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は2022年になり運用成績が振るわない状況です。理由の1つにアメリカの金利引き上げがあるようです。金利が上がると何故株価が下がるのでしょうか。日本の国策である、iDeCoやつみたてNISAの利用にどのような影響があるのでしょう。
■GPIFの2022年の運用実績
まず、GPIFの2022年の運用実績を確認します。
2021年度第四四半期(2022年1月~3月)
収益率 -1.10%
収益額 -2兆2,031億円
運用資産額 197兆円
2022年第一四半期(2022年4月~6月)
収益率 -1.91%
収益額 -3兆7,501億円
運用資産額 193兆円
2022年第二四半期(2022年7月~9月)
収益率 -0.88%
収益額 -1兆7,220億円
運用資産額 192兆円
GPIFは200兆円近い金額を運用しており、世界最大級のファンドです。収益率は株式市場の下落に比べるとマイナス幅を上手に抑えており、銘柄分散だけでなくアセットアロケーションと呼ばれる資産分散が効果を発揮していると考えられます。
■GPIFはどんな投資をしているの?
世界最大級のファンドと表現すると、どれだけ凄い運用をしているかと気になる人もいるでしょう。GPIFの資産配分は適宜変更されているのですが、現在は国内債券25%、外国債券25%、国内株式25%、外国株式25%と、4つの資産に均等に配分しています。※1~2%程度ですが、オルタティブと呼ばれる株式、債券以外の資産にも投資されています。
私たちが購入できる商品に例えると、バランス型投資信託(株式50%、債券50%)に似ています。
2022年は年始から世界中の株式市場が軟調で、2022年にiDeCoやつみたてNISAで投資を始めた人の多くは運用成績がマイナスになっているのではないかと思われます。
外国株式に投資するインデックス投資信託としては、世界株式や米国株式がありますが、市場連動型ですから、下げ相場では利益を上げることはできません。
日本円で生活する人にとって唯一の救いは、円安になったことで、投資した資産のドル建て評価額はマイナスでも、日本円で評価しなおすとプラスになっている点です。
■金利が上がると、株価が下がる不思議
ところで、金利が上がると、なぜ株価が下がるのでしょう。いくつかの要因がありますが、1つの理由として金利が上昇すると、リスクをとらずに安全にリターンを得ることができるため、株式投資から預貯金や債券など金利を受け取る商品にお金が流れるからと考えられます。
アメリカの金利が上昇すると、連動してアメリカ国債の金利が上昇します。金利が上昇すると、アメリカ国債の価格は金利上昇前よりも下落します。そのため、今まで債券に投資していた人は、評価減になるのですが、これから債券に投資する場合は、より安い価格で債券を購入することができます。
保有する株式を売却して債券に投資する、あるいは売却し投資しなければ、結果として株式価格が下がります。このようなお金の流れがあり、株価が下落したと説明することができます。
■アメリカの金利が上がると、円安ドル高になる不思議
金利が上昇すると大きく変化するのが為替相場です。急激な円安ドル高になった背景を日本の経済状況が悪くなったからと考えている人もいるようですが、単純に金利の高い国の通貨を買う動きがでてきたからと言えます。
日本で預金していても、金利がゼロではお金を増やすことはできません。ところが、ドルを購入して米国債などで資金を運用すれば、高い金利を享受できるのです。そのため、アメリカドルを買う際に、日本円を売ることになり、円安ドル高が進みます。
このようなお金の動きもあり、2022年は30年ぶりに一ドル150円に迫る為替変動に見舞われました。
■iDeCoやつみたてNISAにはどのような影響がある?
世界中の株式市場が下落に見舞われたため、株式指数に連動するインデックスファンドは軒並み価格が下落しています。2~3年前の株価水準になっている株式指数もありますから、ここ数年で積み立て投資を始めた人は、ドルコスト平均法のメリットを生かすことができず、マイナス損益になっているでしょう。
1つの救いは、ドル建ての資産が評価を落としても、円安の影響で実質的にプラスの損益にできていることではないでしょうか。従来の、株価が上昇しても為替が円高になることで、実質的にマイナス損益になってきたことと真逆の動きです。
(1)iDeCoはどうすべき?
iDeCoを積み立て中の人の選択肢は2つあります。1つは、積み立ててきた株式投資信託等と、これからの積み立て先を安全性の高い定期預金や国内債券に変更すること。アメリカの金利情勢や金融政策が従来に戻るまで、安全運転をつづけることです。スイッチングと積み立て配分を変更するのです。GPIFのようなバランス型投資信託を選択するのも良さそうです。
もう1つは、アクセルを踏み続け、今まで通りに株式投資信託等を積み立て続けることです。資本主義社会の経済成長に期待することですが、世界が資産格差を是正する方向性に動いている現状では、やや逆張りに近い資産形成と言えそうです。
(2)つみたてNISAはどうすべき?
つみたてNISAはスイッチングができませんから、選択した金融商品と一蓮托生です。今の市況では、バランス型投資信託タイプの方が、大きくマイナスになる可能性を抑えられるので適していると考えます。
将来的に資産の最大化を目指す人で、途中のプロセスは問わない、あるいはほったらかしにしたい人は、アクセルを踏み続け、ハイリスク・ハイリターン型の株式指数連動型のインデックス投資信託を積み立てるといいでしょう。
■利上げでわかったバランス型投資信託の強み
2022年の株式市場の下落に対して、GPIFのように各資産にバランスよく投資する手法の安全性が確認されました。
ネットの世界では、世界株式や米国株式一本やりの投資方法が推奨されているように見えますが、バランス型投資信託の信託報酬もかなり下がってきていますから、リーズナブルなバランス型投資信託を選んでみるのも悪くはないでしょう。